峠の山犬 | ウルフオルフェノクが行く!

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春になりましたね。

高知県


昔ある所に五兵衛(ごへえ)という大工がいました。

ある日仕事で帰りが遅くなった五兵衛は途中友達の家を訪ね、
偶然そこで友達の嫁の出産に立ち会いました。

峠越えのため提灯を借りた五兵衛は産婆さまに

「今、夜道を歩くとお産の血の臭いを嗅ぎつけて
山犬が出るので夜山を越えるのはやめたほうがええ」

と言われましたが、

これを無視して暗い峠道を上ったのでした。

ところが峠の中ほどまで来た時、

嫌な予感がした五兵衛が提灯を近づけると、

なんと恐ろしい形相をした大きな
山犬が道の前にとおせんぼをするかのように、
五兵衛をらんらんとした恐ろしい眼光で睨みつけているのでした。

なんと、もう一匹、挟むように五兵衛の後ろにも大きな山犬がいました


恐ろしくなった五兵衛はふと、昔死んだ爺さまに

「もし山犬と遭遇したら友達のように振る舞え」

と教えられたことを思い出しました。

山犬たちに自分の帰りを待ってくれたのかと気さくに話しかける。

「山犬よ、おらが帰るのをまっていてくれたのか。なんなら一緒に帰ろうか」

と話しかけるのだが、あまりの形相に圧倒されるばかりでした。

それでも五兵衛は勇気をだし話しかけ続けた。

「あとで家にこいや。後で食べるものでもご馳走するで。
赤めしでもご馳走もするべ」

と約束した五兵衛がおるそおそる歩き出すと、
不思議なことに山犬たちも言葉を理解したかのように、五兵衛の後をついていった。

二匹の山犬はどこまでも五兵衛の後について歩いていった。


「そのうちうしろからバクリといくんじゃなかろうか」
と怯えながら歩き続ける五兵衛。


そして、「おらちょっと疲れたで。ひとやすみするで、お前たちもやすめや。」

と山犬に言うと、なんと山犬たちも、いっしょに休むのでした。


「やすんだあとにらバクリと行くんじゃねえだろうな」

ますます怖くなった五兵衛はいきた心地がしなかったが、

五兵衛はいつの間にか自分の家の近くまで着いた。



「あれがおらのうちだ。おまえらはもうええ。お前らのおかげで家までたどりついた。ありがとうな。お礼に家の前に赤飯おいておくで。あとでたべにくるとええ。ありがとう」

五兵衛は山犬たちにお礼を言った。

翌朝外を見てみると、

やはり山犬たちが食べていったらしく桶の中の赤飯は綺麗に無くなっていた。

それをみて五兵衛は思わずうれしくなった。

落ち着いて行動しもてなしたので五兵衛は無事に家に帰ることができたのです。


恐ろしい山犬にも人間の言葉や気持ちが伝わったという不思議なお話です。