シューベルトの魔王は前回のブログでもアップしていたので再アップです。
この曲は説明する必要がないほど、有名な曲ですね。
劇的要素があり、情景的で、
曲にまたたくまに引き込んでしまうこの曲
そのものが「魔王」そのもののようであり、
聞き手は瞬く間に物語の中にいるかのように
物語に引き込まれてしまいます。
嵐の夜、父親は子供を抱えてウマを全力疾走で走らせています。
激しい叩きつけるかのような三連符は
そのウマのひづめの音を表現しているというのは有名です。
この三連符が曲者で、シューベルト自らも、
難しさのあまりに優しくしてひいたというエピソードがあるらしいです。
子供が病気なのかどうかは知りませんが、
父親は子供をとても大事そうに抱えて、
その愛情が伝わるような情景が描かれています。
シューベルトで難しいのはスタッカートとタッチ。
その微妙なわずかな差が曲の生み出す表現力や
完成度の高さを左右します。
子供には魔王が見えますが、
父親には魔王が見えません。
柳の木がおばけに見えるんだよ、
と父親は子供に言いますが、
子供は次第に恐怖のあまりに声が高くなり
絶叫声、または悲鳴のような叫び声になります。
この息子のただならぬ様子に思わずぞっとする父親。
この情景は非常にリアルに見えるようです。
子供は必死に魔王がいることを伝えようとするのですが、
親にはどうしても魔王が見えないのでした。
やっとの思いで屋敷に帰り着くと、
子供は脇の中でぐったりして死んでいた。
というラストに衝撃と戦慄が走ります。
大抵は男性歌手(テノールまたはバリトン)
によってト短調で歌われますが、
女性で歌われることもしばしばあるようで、
へ短調で歌われることもあるようです。
ト短調、ヘ短調、ハ短調とかいう短調の調には、
こういう聞き手をぐっと引けつけるような
「調の持つ強さ」というものがあります。
| Erkönig D328 | 魔王 |
| Johann Wolfgang von Goethe | ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ |
| Wer reitet so spat durch Nacht und Wind? | こんな夜更けに闇と風の中、馬を走らせるのは誰か? |
| Es ist der Vater mit seinem Kind; | それは子供を抱えた父親。 |
| Er hat den Knaben wohl in dem Arm, | 彼はその子を腕に抱き、 |
| Er fast ihn sicher, er hält ihn warm. | しっかりと抱えて、温かく包んでいる。 |
| ≫Mein Sohn, was bringst du so bang dein Gesicht?≪ | 「息子よ、何故そんなに怖がって顔を隠すんだ?」 |
| ≫Siehst Vater, du den den Erkönig nicht? | 「父さん、見えないの、魔王のいるのが? |
| Den Erlenkönig mit Kron und Schweif? ≪ | 冠をかぶり、裾をなびかせている魔王の姿が?」 |
| ≫Mein Sohn, es ist Nebelstreif.≪ | 「息子よ、あれは霧がたなびいているんだよ。」 |
| >Du liebes Kind, komm, geh' mit mir! | 「可愛らしい子よ、おいで、一緒に行こう! |
| Gar schöne Spiele spiel ich mit dir; | とても面白い遊びを一緒にしようじゃないか。 |
| Manch' bunte Blumen sind an dem Strand, | たくさんのきれいな花が岸には咲いているし、 |
| Meine Mutter hat manch' gülden Gewand.< | わたしの母さんがたくさんの金色の服を持ってるよ。」 |
| ≫Mein Vater, mein Vater, und hörest du nicht, | 「父さん、父さん、聞こえないの、 |
| Was Erlenkönig mir leise verspricht?≪ | 魔王が僕にそっと話かけてきてるのが?」 |
| ≫Sei ruhig, bleibe ruhig, mein Kind; | 「落ち着いて、心配するんじゃないよ、息子よ、 |
| In dürren Blättern säuselt der Wind.≪ | 枯れ葉が風にざわめいているだけだから。」 |
| >Willst feiner Knabe, du mit gehn? | 「ねぇ、可愛い子、一緒に行かないかい? |
| Meine Töchter sollen dich warten schön; | わたしの娘たちもおまえを待っていてくれている。 |
| Meine Töchter führen den nächtlichen Reih'n. | 娘たちはおまえを夜のダンスへよ連れて行き、 |
| Und wiegen und tanzen und singen dich ein.< | 揺らしたり踊ったり歌ったりしてくれる。」 |
| ≫Mein Vater, mein Vater, und siehst du nicht dort | 「父さん、父さん、あそこに見えないの、 |
| Erlkönigs Töchter am düstern Ort?≪ | 暗い所に魔王の娘たちがいるのが?」 |
| ≫Mein Sohn, mein Sohn, ich seh' es genau: | 「息子よ、息子よ、良く見えているよ、 |
| Es scheinen die alten Weiden so grau.≪ | 古い柳の木が暗くてそう見えるんだ。」 |
| >Ich liebe dich, mich reizt deine schöne Gestalt; | 「おまえが大好きだ、その美しい姿にそそられる、 |
| Und bist du nicht willig, so brauch' ich Gewalt.< | そのつもりが無いのなら、力ずくで連れて行くぞ。」 |
| ≫Mein Vater, mein Vater, jetzt faßt er mich an! | 「父さん、父さん、魔王が僕をつかんだよ! |
| Erlkönig hat mir ein Leids getan!≪ | 魔王が僕にひどいことをしたんだよ!」 |
| Dem Vater grauset's, er reitet geschwind, | 父親はぞっとして、馬を急ぎ走らせる。 |
| Er hält in Armen das ächzende Kind, | うめく子供を腕に抱え、 |
| Erreicht den Hof mit Müh' und Not; | 屋敷へやっとの思いでたどり着く。 |
| In seinen Armen das Kind war tot. | その腕の中で子供は息絶えていた。 |