モーリスラヴェルはオーケストラの魔術師とかいう異名をもつ人ですが
戦争背景につねに不安をもっていた人でした。
このト長調協奏曲も長調でありながらどことなく
不安な気持ちがチラチラしているのはそのせいでしょうか。
それが「左手のピアノ協奏曲」にも見え隠れしていて、この協奏曲は
右手を失った兵士のピアニストために書かれているといわれています。
一楽章 Allegramente 快活に速く
最初にパン!
というムチなような音で開始されるのがとても面白いです。グリッサンドを多用するのはいかにもラヴェルといった感じ。
アレグラメンテという表示がユニークです。
かなり自由な発想ですが、
よくよく聞くと古典的ソナタ形式っぽい雰囲気を残した曲です。
中間部はテンポが落ち、やや穏やかな感じですが、
その響きのなかには戦争の不安を抱いるかのように不安げに響きます。
2楽章 Adagio assai ごくゆっくりと)
ラヴェルには珍しい完全な暖楽章。アルゲリッチはあまりに穏やかなので、
自分はあまり弾きたくないとまでいった曲でした^^;
ショパンの協奏曲の2楽章の香りを残した、
ラヴェルのロマンス楽章で、静かなワルツのようにも聞こえます。
単調でシンプルな歌が切なく、淡々と歌われて
平和でのどかな風景が広がります。
のどかな美しい風景を、
ラヴェルが散歩しているかのように聞こえます。
戦争の不安と恐怖が耐えなかったラヴェルの時代、
この楽章こそがラヴェルの望んだ風景だったのかもしれません。
3楽章 Presto 急速に
ファンファーレの強烈な開始からはじまり、まくしたてるようなトッカータ風なピアノが突っ走ります。
どこか現代曲のロックのようなモチーフが流れるのが印象的です。
余談ではありますが、どこか「ゴジラのテーマ」に似た音楽が流れるのが
大変印象的です。
喜びと歓声に満ちた明るい曲。
一楽章の暗さはありませんが
やはり後の強烈な一撃は、不安を帯びた主和音ではなく、
かなり強烈なドスの効いた不協和音の
「ドン」といった感じの一撃で曲を断ち切るかのように終結しています。