佐藤一斎 著  久須本文雄 全訳注 『言志四録』 解題より
「二 内容」のつづきから

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 以上、一斎の『言志四録』を概説したのであるが、その内容は学問・道徳・修養・教育・読書・風流韻事、さらに政治・法律・軍事・保健衛生・養生・養老その他、人事百般にわたって多面的に構成されている。『言志四録』は、合して一千百三十三条あるが、一斎の円熟した後半生のおよそ四十年にわたる随筆録である。これほど長い年月を費やして書かれた極めて大部な語録は、他に見られない。
 彼の語録は、随筆風の記述であるが、文章は簡明直截で、人の肺腑
はいふを衝つく概があって実に感銘深い。この『言志四録』は漢文体の随筆として不朽の名著にして、我が国における語録中の白眉はくびと称すべきである。この『四緑』は、修養や処世に資すべき金言名句が随所に表れていて、『菜根譚』と同じく、心の時代に最も適切な心の書であり座右の銘といえる。
『四緑』において出典の多いのは、四書では『論語』・『孟子』・『中庸』・『大学』の順であり、五経では『易経』・『書経』・『詩経』・『礼起』の順にして、その他、兵家や道家の書などが挙げられ、なお諸子の説も印載されている。全体を通じて最も多いのは『論語』であって、これに次ぐものは『孟子』・『易経』・『書経』・『中庸』などえある。特に易に精通しているので、いたる所に易理を解明している。列挙した古典のほか、宋・元・明・清の儒学や中国史、さらに日本の宋学にも及んでいる。『四緑』は断片的であるが、これを中国の思想史 ─ 儒学史 ─ とみなすこともできよう。一斎は陽朱陰王の立場を取っている関係上、『四緑』では王陽明の学問・思想に関するものが少ない。一斎の学は儒学を主として、その他諸家の学や史学などにも及んでいて、その学識は実に博深であるといえる。
(次回ブログにつづく)
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 久須本文雄博士の文章は本当に読みやすくてありがたい。しかし、上記の文章には漢字の熟語が多用されていて、私には、「なんとなく意味は分かる気がするが、正確にはわからない」熟語がとても多い。また、それが嫌かというとそうではなく、知らなかった言葉をひとつひとつ辞書で確認するという愉しみもまた、うれしい。

 現在、「解題」の「二 内容」を転載しながら読後感を書いているのだが、「解題」を読み終えた時点で、辞書で調べた言葉の一覧を載せることもまた、「私家版ブログ辞書」の公開になり、高校生の読者がいるとすれば、勉強に役立つのではないかと考えている。


つづく