テレビの天気予報で、「近畿地方では・・・」という解説を聞きながら思い出したことがある。
 小学4年生のとき、初めて地図帳が配布された。49年前のことである。
 4年生の社会科最初の授業で、先生が地図帳について「自由に見ながら、気づいたことをノートに書きだしなさい」と指示し、子供たちは一斉に、あーでもない、こーでもない、ピーチクパーチク、ワイワイガヤガヤ、しゃべりながら楽しく勉強した。
 よほど楽しかったのだろう、今頃になって、教室の情景が浮かんできた。

 さて、思い出したのは地図上の「近畿地方」という言葉である。ノートに書きだしたことを発表する場面になり、挙手した私を先生が指し、私は「“近(きん)なんとか地方”という知らない言葉がありました」と答えた。「同じです!」と答えた同級生がたくさんいた。
 先生は、「それは、“きんき地方”と読むのだよ」と言い、他の生徒が「“きんき”って、どういう意味ですか?」と声を上げると、先生は「京都や大阪の近くを、“きんき”と呼ぶのだよ」と答えた。
 私が「先生、どうして、京都や大阪の近くを“きんき”と呼ぶのですか?」と質問すると、先生から「きみは読書が好きなんだから、あとで辞書か何かで調べてみなさい」と言われた。
 そして、「はい」と答えたまま、50年近くの歳月が流れてしまった。

国語大辞典(小学館1988)
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きんき【近畿】
(「畿」は、みやこの意)
Ⅰ 都に近い国国。日本では京都付近の国々。
Ⅱ =きんきちほう(近畿地方)

きんきちほう(‥チハウ)【近畿地方】
本州中央部、京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・三重の二府五県から成る地方。大阪、京都、神戸などの大都市、阪神工業地帯などの臨海工業地帯が発達。近畿。
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例解学習国語辞典 十版ワイド版(小学館2014)
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きんきちほう <近畿地方> 京都の近くの地方。京都・大阪の二つの府と、滋賀・兵庫・奈良・和歌山・三重の五つの県がある。
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 小学生向けの一番新しい学習国語辞典には、上記のように「近畿地方」は載っていたが、「近畿」は載っていなかった。
 もし、学習国語辞典に「近畿」が載っていて、国語大辞典のように(「畿」は、みやこの意)という説明があれば、授業中のピーチクパーチク、ワイワイガヤガヤと交わされる言葉や、ささやき声の中に、きらりと光る発言が増えただろうに、と思った。

 そして、もう一つの疑問が発生した。
「まさに近畿地方に暮らしている関西方面のみなさんは、子供のころ、“近畿”の意味を学校で教わっているのだろうか?」
 おそらく、関東の学校よりも、関西の学校では、日常生活や歴史に直結する“近畿”について、詳しく教えているのだろう、と、予想している。

 以下、他の辞書で「近畿」を確認した結果である。

集英社国語辞典 3版(2012)
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きんき [キ]1 【近畿】 ①近畿地方。本州中西部の地方で、京都・大阪・滋賀・兵庫・奈良・和歌山・三重の二府五県。 ②都に近い国々。京都付近の国々。
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 今、たくさん集めた小型辞書を整理すべく取捨選択を始めているが、この「集英国3版」はとてもよい。間違いなく座右に置き、古書店行きにはしないだろう。

大辞林 三版(三省堂2006)
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きん き [1]【近畿】 [地名]
〔畿(都)に近い国々の意〕 「近畿地方」の略。
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 念のため、大型辞書も引いてみたが、出典の表示以外は小型辞書と変わらなかった。