9月の声を聞き、
空っぽだったフィレンツェの街にも車が戻って来て
ヴァカンスの終わりを感じるようになって来ました。
日本の皆さま
おはようございます。
とは言え、学校はまだ夏休み。
次女は間近に迫った新学期の脅威を感じつつ、
宿題や課題に追われる日々だが、
その中でも、家族での楽しみを見つけようと心がける。
私と次女は、日本滞在や海の家で
トータルすると二ヶ月近く一緒に過ごしているが、
イタリアに残っていた主人とは、家族時間が少なかったから。
是枝監督の
が、イタリアでも公開されると聞いて、
元々ファンだった私と主人だけでなく
「怪物」を見て、魅了された次女は、
家族皆で映画館へ行くことを決めた。
できれば、吹き替えでなくて、原語の日本語にイタリア語字幕で見られることを願った。
そして先日、夜の9時半からの上演に向けて皆で繰り出す。
ギリギリにつき、路駐しようとしたが、
映画館と思われる場所は、シャッターが閉まっている。
「え!まさかね。」
サイトで時間を確認して、ここ以外の映画館でも上演されているが、近さで選んだ。
車から降りて、本当に閉まっているのか確認する。
主人は車の中から映画館に電話をかけ始めていた。
シャッターは完全に閉まり、中は真っ暗。
ショーウィンドウに貼ってあるポスターも、
「箱の中の羊」ではない。
そして電話には誰も出ない。
あり得ない!
夏季のレストランやお店の開店情報は、決して信じてはいけないのがこの国だけれど、
映画だよ!
最初に電話してから来るべきだった…
まあ、夜のドライブになったねと一笑にふして、
帰りに美味しいジェラート屋に寄り
帰途に着く。
翌日のリベンジには、別の映画館を選ぶ。
フィレンツェはどこも吹き替えばかりで、ピサまで行かないと原語では見られないので、
今回は諦めて吹き替えで我慢することに。
今回は間違いなく上映されていた。
ほっと安堵の一息。
この映画は
「息子を事故で亡くした夫婦が、
息子そっくりのヒューマノイド(人間そっくりに作られたAIロボット)を家に迎える。」
という予備知識だけ持って見に行った。
是枝作品にはいつも社会問題がしっかり入っている。
そんな大真面目な作品でありながら、彼の映像はいつ見ても美しい。
音楽も静謐で素敵だ。
イタリアの映画館の中は、少々お茶の間っぽい。
同じ列に座っていたご年配の女性グループのお喋りの声が、耳に届く。
インスタント焼きそばを食べるシーン。
思いっきりズルズルとすする。
「あらぁ、スパゲッティを音立ててる!いやぁね。」
と。
「違う違う、あれは焼きそば!」
と心の中で独りごちる。
ラーメンも焼きそばも、それが日本では正しい食べ方なのだが、
こちらではみんな音を立てない。
音を立てると気持ち悪がられる。
その昔、友人がホームステイしていたお宅では、音を立ててラーメンを食べるのは禁止だったらしい。
そんなどうでも良い会話で、少し集中が削がれるのが、イタリアの映画館の特徴とも言える。
が、良い映画はやはり目が離せない。
題名の「箱の中の羊」は
サン=テグジュペリの「星の王子さま」に出てくる。
映画の中でも、この一節を息子そっくりのヒューマノイドに読み聞かせるシーンがあった。
中が見えなければ、羊が入っているかは分からないけれど、自分の理想とする羊を想像でいくらでも心の中に描ける。
星の王子さまのお話を思い返しながら、見えないもの
について、考えさせられた。
そしてどんなふうに終わるのだろうか?
と思っていたが、
私の期待を裏切り
意外にも希望を残しての終わりだった。
映画館からの帰り道、おのおの感想を語る。
「良かったぁ。でも怪物の方が良かった気がする。」
と次女。
「息子の翔の死と不審者の関係が暴かれると思ったのに、なんかそうでない方向に行ったな。」
私が言うと
「いつもよりハッピーエンドな感じだったね。」
と主人。
近い未来には起きていることかもしれないから、
ここでAI対人間になっては、
あまりにも分かりやすい展開。
ハリウッド的なSF映画になってしまう。
カンヌ映画祭にエントリーしている作品は、そうでないのは明らかだろう。
映画も本も主観の世界。
それぞれの人の評価が違うのは当たり前のことだ。
家族で映画を見て、それぞれの感想を言いながら帰る。
そんな時間もまた、味わい深い。
娘たちには、良い映画をたくさん観て感受性豊かに育っていってもらいたいものである。
日々のフィレンツェの光や時間の中で、ひとつひとつ手作業で制作しています。
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