3年前に家を離れ都会へ行った彼女
モノレールの中での出会いからスカウト
瞬く間に話が決まり都会へ引っ越した
まだ夏の名残のある新しい街で
二人で荷解きをした
窓から職場の高層ビルが見えた
それから一年後
彼女の夢が叶った
彼女は都会と田舎を往復する毎日になった
毎日が充実した
日が昇る前から仕事が始まり
真夜中まで仕事は続いた
たくさんの出会いがあった
普通の生活をしていては絶対に有り得ない貴重な体験
真夏は真っ黒に灼け
真冬は雪の積もった中
自転車をこいで職場を走り回った
懸命だった
しかし
当初から
壮絶なパワーハラスメントが始まっていた
本人に訴えてもエスカレートするばかりだった
男性の前で女性はあまりにも非力だった
それでも現場の魅力で補っていた
我慢していた
毎日泣いていた
泣きながら仕事をしていた
家にも泣きながら電話した
同僚も家に報告した
それでも現場の魅力で我慢していた
夢だったから
堪えた
冷や汗が出るようになった
パワハラの上司の声を聞くだけで
吐き気を感じるようになった
動悸がするようになった
お腹が痛くなった
本社の上司に訴えた
口頭の注意があったらしいが変化はなかった
周りは気にするなと言った
再び上司に報告する頃には
現場の魅力を感じることができなくなっていた
もう、どうでも良くなった
命の危険を感じるので、現場を離れたいと上司に言った
夢が壊れた
パワハラの上司に死んでほしいと思った
パワハラの上司にきっと天が罰を与えてくれる
絶対に許すことはない
夢を、心を殺された 人生のいちばん大切な時期に
職場はパワハラの方ではなく彼女を異動させた
男は家庭があるもんな
職場は男社会
時代遅れ
都会に戻った彼女
前と同じ職場で、探していた1度輝きを失った星は もう見えなくなっていた
朝早くから夜遅くまで走り回ることはもうない
夢の現場で笑ったり感動で泣いたりすることは
もうない
お昼休みに
近くの書店で本を立ち読みするようになった
学生の頃から本の世界は彼女のもうひとつの居場所
また戻ってきた
ここで心を休ませればいいと思う
ゆっくりゆっくり
私の宝 私の誇り
負けたのではないよ 自分を守ったのだよ
生きていてくれてありがとう
そしていつかまた何か別の光を見つけられればいいね
今は
ゆっくりゆっくり