
『10日間戦争』からクロアチアへの連邦軍の介入、ボスニア・ヘルツェゴビナへの戦火の飛び火、首都サラエヴォの悲劇という歴史的事実の1年前に日本へやってきたひとりの少女との偶然の出会い
著者の出世作となった作品
大刀洗万智シリーズの第1作目となるが、わたしは、古典部シリーズをずっと読んでいて、その頃単行版で出版された『王とサーカス』『真実の10メートル手前』を先に読んでしまい、順番が入れ替わっていた。
ただ、そのおかげで、卒業アルバムを覗くかのように懐かしい大刀洗万智が高校生の頃をこの作品で知ることができ、彼女がどういった経緯で後の作品に描かれたような職業につくのかがわかった気がした。
4月の雨に降られ、雨宿りをする少女との偶然の出会い。「哲学的な意味がありますか?」という彼女の質問。
高校生最後の年の『おれたち』に、この異国の少女はあまりにも新鮮で、そして、手が届かないくらい大人だった。
大刀洗万智シリーズのほかの作品でも共通するが、日本人の世界情勢に対する認識の絶望的な甘さ それが容赦なく描かれている。
この作品を読んで、今更ながら自分の無知を確認し、日本人の甘さも実感した。隣国というものが陸続きでないここに生まれ育った私たちはあまりにも無知に過ぎると。