
読了
群れ咲く向日葵を見て、違う、と思った。
母と訪ねる遺影を生前に撮っておく写真館『鏡影館』への道の場面からこの物語は始まる。
冒頭で『向日葵』が出てくるので思わず、『向日葵の咲かない夏』を思い出す。
道尾さんの独特の世界
水 川 光の反射 雨の匂い 映画の中のように鮮やかに表される
川の手前側に、飛沫の目立つ場所があった。積み重なった石の頭が、川面からちょっと突き出て、そこで水が跳ねているらしい。流れは緩やかなので、透明な水滴の一つ一つが、ちゃんと丸くなって、たくさんの小さなビー玉が流れ飛んでいるように見えた。ビー玉の一つ一つは、二人の背後から差す夕陽を吸って、薄い金色に輝いていた。
道尾さんは川遊び、特に川原で石を拾ったり、虫を見つけたりするのが好きで、今でも川を散歩するとどこかで話していたと思う。ただ物語のプロットを追うだけでなく、情景描写が素晴らしいところが私がこの作家さんが今1番好きな理由。ミステリの筋や仕掛けだけに終わらず、1ページ目からその独特な風景に引き込んでくれる。
人の人生の数十年に渡る繋がり、縁、偶然の重なり。『火振り漁』『遺影』を巡り起きる様々な人々の様々な物語。数十年というスパンの物語は道尾さんの作品では初めてではないだろうか。
『因果律』めぐりあわせの織り成す少し悲しいけれど再生を感じさせる、そんな物語。https://profile.ameba.jp/me?device_id=301017f8e6a64fe5bcc96f5323d19254
