田部井淳子さんをご存じだろうか?淳子さんは,世界最高峰エベレストに登頂した初めての女性である。また世界七大陸最高峰登頂を女性で初めて達成しことでも知られている。淳子さんは,多くの女性たちに自信と勇気を与えてくれた素晴らしい方だ。
少し前のことだが,淳子さんの回顧展を見たことがあった。遺品のなかで,一番心に残ったのは,田部井さんのザックだ。
田部井さんのザック

このザックは,昭和45年に女性だけでアンナプルナIII峰 (7565メートル)を攻撃したときに使ったザックだ。よく見ると右側についてのはずの革ベルトがない。アンナプルナでホエーブス(登山用ストーブ)の内部のエアー漏れ防止のパッキンが壊れた時に,このベルトを切断して,パッキンの代用品を作り出して応急修理したのだ。
田部井さんが修理した登山用ストーブ

本体真ん中の丸いつまみが燃料を圧縮するためのポンプ。
この内部にエアー漏れ防止のパッキンが付いている。
ヒマラヤの高所でホエーブスが壊れるということは,「あなたたちは,死ぬのよ。」とワルキューレの女神に囁かれたのも同然の大ピンチだ。雪と氷だけの極限地帯で水を得るためには,何としてもホエーブスが必要だ。淳子さんのザックは,あきらめない心と工夫の大切さを,今でも私たちに教えてくれている。
私もすっかり歳を取った。日暮れて道遠しである。でも,まだまだ頑張れる。淳子さんのザックが,そう教えてくれているからだ。「大丈夫よ。きっとやれるわ。」そう言う淳子さんの声が聞こえる。ネバーギブアップ!