城壁の銃眼(狭間)などに備えおいて長距離狙撃を行う長銃身の鉄砲のことを狭間筒と呼んでいます。人により狭間銃の概念が異なることもありますが,全長145センチを越えるものは,ほぼ狭間銃と断定して間違いはないと思います。
堺で作られた薩摩の狭間筒
鹿児島県登録 全長149センチ 銃身長114.3センチ 口径1.3センチ
この銃は,堺の鉄砲鍛冶,田中善五郎の作ですが,珍しいこと火皿がネジ式になっていて銃身から火皿を分離できます。火皿がネジ式になっているのは薩摩筒の特徴ですし,かつ鹿児島県登録であることから薩摩人が,堺の鉄砲鍛冶に特別注文して作らせた火縄銃であると考えられます。先目当(照星)も上部がフック型で,超長距離射撃のための照尺を取り付けられるように作られたもの思われます。元目当て(照門)及び先目当(照星)双方の照尺を計算調整するためには,かなりの修練が必要だったはずです。


面白いことに,この狭間筒は軍配の家紋が銀象嵌されています。狭間筒は城塞等に備え付けられるため,一般には藩所有の銃であることが通常と考えられます。しかし,軍配家紋が入れられていること,特別仕様の銃であることから,この銃は,こだわりを持つ薩摩藩砲術家が,堺へ特別注文した銃ではないかと,私は推定してい ます 。また,注文を受けた堺鍛冶の田中善五郎は,堺筒の形式に依頼主の注文事項を盛り込んで,この銃を作ったのではないかでしょうか。当時,薩摩藩内では,堺で鉄砲をつくることが一種のステイタスだったのかもしれません。この鉄砲の来歴が伝わっていないので,間接事実を積み上げると,こんな結論になりました。
