この火縄銃の前の持ち主は,尊敬する研究者の一人で,空砲演武できるまでにきちんと整備されておられた。一昨年,その鉄砲を譲っていただいた。その研究者は,古色や時代感を失いたくないという思いの強い方で,機関部の完全清掃までは,わざとしていなかった。
井上流仕様の仙台鉄砲10匁玉火縄銃
購入時
古色と時代感があり風格も感じられる。引き金は後補。自作したらしい。
購入後 整備済
あまり磨きすぎかもしれない。まるでモデルガンのようだ。
私も前はそうだったが,ここ三年で,火縄銃整備についてだいぶ考えが変わってきた。火縄銃は歴史的資料でもあるが兵器でもある。兵器ならきれいにしておくべきだし,きれいにしておけば多くの人から愛され,歴史的資料として寿命も延びる。とは言うものの,ベストな保存方法は,どうあるべきなのか,毎日悩んでいる。
火縄銃に限らず,骨董品は,高い預かり料を支払い,一時的にその時の所有者がお預かりしているだけなのである。歴史的資料としての骨董品は,日本人全体の財産だと私は考えている。人の命はせいぜい100年ほどであろう。しかし,骨董品は戦火や震災に会わない限り,その寿命は永遠である。
骨董品道楽は,リレー競争のようなものだと思う。だから,手元にある骨とう品をベストな形で整備して,次の所有者へ引き継ぐのが,今の私の使命だ。次のランナーにバトンを上手く引き継ぐため,悩みを抱えながら毎日鉄砲整備を続けている。格好のいいことは言ってみたが,本音を言えば,鉄砲整備が楽しいから,やっているだけのことである。高邁な理念などは,もとよりあるはずもない。



