馬上筒と長騎銃
長騎銃という鉄砲は,あったのか?
馬上筒とは,騎馬に装備し全長は50~60cm,重量は1~2キロ程度と短く軽量な火縄銃のことをいう。片手でも射撃可能であるため、騎馬突撃時にも用いることができるという。ただし,現代の拳銃と比べたら,重いと言わざるを得ない。私のつたない経験では,馬上筒を片手で構えると,銃先がわずかに震え狙いをつけるのが難しかった。

① 短筒 二匁五分玉(来歴不明)
全長13.3㎝,口径1.2㎝ 富山県登録
② 関流馬上筒 相馬中村藩所用の四匁三分玉
全長 49.6cm,銃身長30.4cm,口径14.5 cm 福島県登録
③ 田付流馬上筒 会津藩士所用の六匁玉 用途分類では鉄散弾銃
全長59.5㎝,36.0cm,口径1.6㎝ 福島県登録
④ 田付流馬上筒 (来歴不明) 四匁三分玉
全長59.3cm,銃身長36.5cm,口径1.4cm 和歌山県登録
全長59.3cm,銃身長36.5cm,口径1.4cm 和歌山県登録
⑤ 馬上筒 薩摩藩士所用の二匁五分玉
全長68.5㎝,銃身長46.8cm,口径1.2㎝ 鹿児島県登録
⑥ 長騎銃? 水戸藩士所用の二匁五分玉 全長78.7㎝,銃身長45.6cm,口径1.2㎝ 茨城県登録
⑦ 薩摩筒 対比参考
⑧ 仙台筒 対比参考 (以前ブログで紹介した,食堂の火縄銃)
⑨ 紀州筒 対比参考
何とか鑑定団でもおなじみの澤田平先生によれば,江戸時代に出版された「武道藝術秘傳圖會」を検討すると馬上筒には長短二種類あるという。一つは,全長30~50cmの単筒タイプ,もう一つは,7,80cmから1メートルの長騎銃があるとしている。
しかし,この検討分析には,私は素直にうなずけない。長騎銃という概念は西洋におけるカービン銃に似た概念だとすれば,馬上で専用に用いることを目的とし,取り回しやすいよう銃身を短くした銃ということになろう。しかし,歴史的に見て日本にカービン銃とおなじような概念があったということは証明できるのであろうか。また先生が苦労されて復刻された武道藝術秘傳圖會にもそのような絵図は見当たらない。長騎銃という概念を用いることに,私は大きな疑問を抱いている。私は,7,80cmから1メートルの小口径の火縄銃は,子供用や女性専用,もしくは射的用として作られた火縄銃と考えている。
いまやネットオークションでは,1メートル以下の火縄銃を馬上筒として出品されているの事例を多く見かける。このため,長騎銃という概念について,きちんとした結論を出しておく必要があると,私は考えるのである。なお,私は澤田平先生の研究成果により学問的成長をさせていただいた者であり,先生の研究に多大な感銘を受けた一人であること,また深い感謝をしている者であることを申し添える。