BLOG MYSTERY NOVELS -185ページ目

スマート・スマート(15)


 題「新モルグ街の殺人事件」


 強い風が吹いている。フランス「モルグ街」の古屋敷前の一本の木に。
 濡れた睫毛のような三日月の下、馬の手綱を木へと繋ぎ、ブーツに隠したジャック・ナイフを握る。
 屋敷を這う黄金葛。
 木製の扉を開けて、獣の声へと耳を澄ます。
 1841年頃に起きた「モルグ街」事件。

 眠れる獅子が蘇ったとの通報を受けて、元フランス外人部隊所属者で、翡翠の策士との異名を誇るブロガー探偵・翡翠蒼子が、サン・ロック区へと訪れた。

 実は、この依頼は、(今、仏旅行中で)元フランス外人部隊に所属?していた百間川のエジソンという探偵に来た話だったのだが、今日は水族館でぼんやりとしていたいとキャンセル。
 知人の翡翠の瞳を持つ女へとバトンを渡した。
 しかし、扉の奥で待ち受けるのは、天国か地獄か?
 獰猛な怪獣の瞳が光るのが、彼女には見えた。
 KYKYYYーッ。
 突然、飛びかかってくる鉄の爪?
 その先端が右腕のナイフへと触れ、落下した銀の音が、暗いキッチン床へと不気味に響く。
 何故に、鉄の爪を持っているのか?片手に持つ懐中電灯を相手へと向けて、息を飲む。
 進化?
 そう、猿は進化していたのだ?
 あの亡き猿の遺伝を元に再生されたのか?
 さらにその皮膚へと鉄具を埋め込んで、この21世紀の世に、サイボーグ・チンパンジーとして蘇ってきたのかもしれない?
 武器を落とした今。戦う術もなく、退路の方角は何処か?
 匂いで探る。
 雲に隠れていた月明かりが、窓ガラスから再び差し込み、廊下へと身体をロール。
 体勢を整えて、コートに忍ばせていた(いつもブログを打っている)携帯を靴先に装着。
 ジャンプして、第二打を繰り出してきたサイボーグ・チンパンジーへと、ミサイル・キック!
 を、お見舞い。
 プラス改造携帯のアンテナから放出された放電電流が機械猿の電気系統をショートさせたのである。
 ノックダウンした機械猿の手足を(一度馬に戻り、積荷の)鎖にて縛り、依頼主へと電話。
 彼女の狩は終わった。
 事件解決後。
 彼女は今夜放ったこのキックを、携帯でブログを打っているだけに「ブログ・キック」と名付けることとした。
 ブロガー探偵・翡翠蒼子。
 今夜も彼女は、荒野のどこかをさすらっている。

詩?20 題「ニビンコ」


 毎晩行くセブン・イレブン。
 商品棚はまるで、ステロ・タイプかつ見飽きてしまった灰色の景色。

 終わりなき日常に閉じ込められて、井戸の底でもがいている。


 たまには「コンビニ」でなく「ニビンコ」に行きたい。
 航海したい。
 (ちょっとした、悪足掻き)



 チェック!!

 明日「新モルグ街の殺人事件」というスマート・スマートを掲載。

 明後日から、新連載スタートします!

スマート・スマート(14) 


 私は日本国籍を持つ「同時多発漫画家」
 名前は「911」

 何故、「同時多発漫画家」なんて言う、愛称を付けているかって?

 それは、(同時多発的に漫画を描こうという意図から)世界30ヶ国にアシスタントを持つ漫画家だからだ!

 作業は日々、ネットで分担して行っているのだが、

 この度、30ヶ国に散らばる外国人全員が実は純粋な日本人であったことが判明した。

 何故、わからなかったのか?

 それは彼等が、偽造パスポート&偽造免許証を持っていたうえ、
面接に来る前に、揃って顔を外人顔へと整形していたからなのだ!?

 そう、それぐらい高額なアシスタント料を用意したことが、裏目に出てしまったということだ……。

 しかし、となると、これは大変な叙述トリックを(こちら側へと)仕掛けられたこととなる。

 そして、騙された私は、史上最大のピエロ漫画家となってしまった。

 いや、さほど気にすまい。

 何故って、それは私の方こそ、整形手術を行なって、この日本へとやってきた、なんちゃって日本人(つまり、外国人《アメリカ人》)なのだから。

 神を、お許したまえ!アーメン!




 題「たった一人のアメリカ人」

題「読書使徒」スマート・スマート(13)

題「読書使徒」

 本は「伏線美術館」目次と言う名の司書の案内で、頁と言う名の回廊を進む。
 人生の凝縮された活字の庭で、まどろみながら「ごっこ」をなぞる。


 そんな「活字追尾運動」

 別名「読書」を通して人は成長し、本に育てられる。

 だから人は本の子供たち。

 人とは違い、本(親)離れすることの無い本と共に生きる子供たち。

 でも、子供だから、時にはわがままで、可愛いけれど、ブレーキも利かないこともあったり。

 買わなくても与えられるから、手にするのは全部図書館の本。
 その影で首を絞められている本屋と言う名の祖父の嘆きまでは、まず聞かれることはない。
 衰退化し、死期が近付いていることを察知する、感度のよいアンテナを持つ者は、少ない。


 本の苦しい時代。圧迫される現状が、止め処なく加速していく。

 だから私は、この丘の上で手を合わせる。

 本(小説)の救世主の登場を願うために。

 本と共に死んでいった(裁断を含む)人々の嘆きの声に耳を傾けながら。


 パタン(本を閉じる音)
「ここが本を弔うために建てられた『本塚』ですか」
 ある男が「読書使徒」と題されたぼろぼろの本を閉じ、呟く。
「ええ。過去。本がまだ出版されていた時代への追悼の念から建てられたそうですが。言葉を製本することが、そんなによいものだったんでしょうかね?」
「ええ。今私が読んでるこの本の作者によると、何でも誰もが疑わなかった本屋という商店がこの世から消える際、大きな社会運動が起こったそうですよ。今では考えられませんが。でも、この本を読むと、気持ちはわからないでもない。本というのも面白そうですな」
「そんな厚くて、小さな字の綴られたものがですか?いや、活字は空気波モニターで見るので充分です。さぁ、行きましょう」
「いや、もう一祈り。本を最後まで守ることに生涯をかけた男の墓に手を合わせてから私はいきます。この本によると、当時、彼の呼びかけに耳を傾けなかった人々は、本屋が消滅した時、多大なる後悔をしたそうなので」
「私にはわからん。時代は変わるものですよ。本が死んだのも時代のせい。違いますか」
「運命は変えられないもの。それは同感ですが。でも、この本にある通り、その問題に対して危機感を持ち、本を守った男への共鳴がもっと高かったら、ひょっとしたら変えられたかもしれないじゃないですか?歴史から学べるものって、あるんじゃないかって、私は思ったりするんですが」


薫葉さんへ

こんばんは。司凍季 です。


m-freak 様より「第3回ブログ・ミステリー賞」について感想をいただきました。


http://m-freak.hama-sush-jp.pro/entry-5cdf542cc4f3d60bff6cee4d7add2032.html#tbox


ありがとうございます。


皆さまもお気軽にコメントください。

そのうちに、「読書会」風になればいいな、と思っています。


詩(19)

題「光りを」

 統合失調症を、白い雲にしてしまって、空へと散らす。

 この手の平からは、鳩も飛び出すのさ。


 自由で、なんて身勝手な俺の手。


 空気を握って、奇跡を弾く。

 嘘つきと呼ばれたって、構いはしない。

 誰しもの頭の上に暗黒は広がっているのだから。

 それを追い払うのは自分自身でしかないんだぜ。

 知力から絞り落とす新しい汗の輝きが、
 きっとそれを証明してくれる。


 だけど、追い払えない雲や霧ってやつって、
 ホントやっかいなものさ。

 そんな時は、自身の知力(推理)で、霧を晴らしてみせよう。


スマート・スマート(12)


題「インディアンの住む家」


 冷たい積み木を、凍える手で触れるのならば、その冷気は相殺される。


 崩した積み木相手に、自分の議論を吹きかけてみたところで、この部屋は、沈黙を破る気配さえも無い。

 戻しては壊し、又戻しては新たな形を摸索する、


 この吾の手には、再構築するビジョンが未だ欠けたままなのだろうか。


 幾千もの靴音。


 この部屋から見えるアスファルトを行き交う人達。

 人は、街という名の回廊を彷徨う迷路の住人。


 目の前の積み木と、どこか似ている。


 寂しい風。

 窓を締めると、寂しい街にも似た積み木の瓦礫が、無性に愛おしくなってきた。

 鳥の目で眼下を見下ろし、吾はいつしか鳥と化して天井の住人となっていた。

 屋根裏の哲学者の美学。
 そんなものは吾にはわからぬもの。

 何故か、この瞳が天井に住む精霊と合致。
 その一部に貼り付いていた。

 蜃気楼が瓦礫の街の上へと降り注ぐ。

 ふと、その街の一角に、吾に似た人物の姿が。
 この意識を、その人物へと投影。
 魂と玩具とを重ね合わせてみる。

 が、その男は死者だった。 

 笑い話にもならない。

 早くここから飛び立とう。

 不条理な玩具話はもうこりごりだ。


 しかし、男の手には、ある人形が握られていた。

 んっ、その人形こそ、この吾に似ているではないか。


 そして、さらにその人形の握る人形は、吾の十年前の姿に似ている。

 さらにその人形の握る人形は吾の二十年前の。ではその先の人形は……。

 吾は意識をそこへと飛ばす。

 気が付くと吾は、産婦人科にいた。
 そう、これから吾は誕生するようだ。

 生命の神秘。

 生まれた吾の右手には、自身の十年後の姿似の人形が握られていた。

 んっ。
 どうやらここは島らしい。


 吾の握る人形が、さらにその人形の握る人形が。

 さらに……。


 人形達はこの手を離れ、いつしか一件の古屋敷の中へと歩いていった。

 インディアンの衣装を羽織って。

 個々が、十名の紳士淑女の眠る隙、テーブルに着いて、かくれんぼ。


 そのなかの一人が口にする。

「吾が名はオーエン。吾がインディアン族の仇である十名に、今夜、粛清を下す」

 意志持つ人形達。


 積み木の街からやってきた。

 そして、インディアン達は、一つずつ消えていく……。



 ‐A・クリスティへ‐

「ブログ・ミステリー賞」って、どんな賞?        (薫葉豊輝の呟き)

「ブログ・ミステリー賞」

 賞にはそれぞれ趣旨、傾向などがありますが、この度、司先生に「ブログ・ミステリー賞」はどんな作品を求めているかお話を聞かせて欲しいとメールを打ちまして。

 こちら でお返事を頂きました。

 もちろん私に関しますと、ある程度理解していますが、投稿を考えられている皆さんへと向けて、ここで賞の求める作品傾向らを表明しておく方が、後々、審査等に関してまして、どういう基準から選ばれているのか等々、ご理解していただけるのではないかと思われますし!
 ですから、そういう案を私が出しました!


 司先生のブログにもありますが、(実は未読の)『奇想の復活』(鮎川哲也&島田荘司編集)は、非常に参考となると思われます。

 さらに言うと、(推理小説界の第一人者であられます)島田荘司という作家をもし未読な方がいましたら、まずはそこから勉強してみて下さい。


 必読なのが、綾辻行人先生との対談集「本格ミステリ宣言」です。この本の中で島田先生は。
 「本格ミステリーとは、幻想的で、強烈な魅力を有する謎を冒頭(付近)に置き、その謎を、論理的に解いていく形式の小説」とおっしゃっていますが、この文面にある通り。
 ただ殺人が起きて、それを刑事が解決するタイプのミステリに止まらず。

 できるだけ、謎が斬新であればあるほど、よいとご指摘されています。
 が、ここが難しいところ。
 何故ならば。
 まるで透明人間か、幽霊がやったとしか思えぬような謎(密室、足跡、アリバイ等)を、幽霊がやったという推理で終わらせず、あるいは抜け穴があったとか、単純な推理で解決できる甘い推理ではなく、人の見落としやすい点を、針の目で探す周到さ。
 主に、推理する探偵が、論理的に解いていくという、論理と科学の駆使された頭脳プレイ的文学。
 そこに重きが置かれていますので、謎が壮大であると同時に、解決方法も、ある程度完璧でなければなりません。

 つまり、確率論で、七、八割以上の確率で、犯人の決め手を指摘できる完璧さ。などが求められると思います。
 つまり、非常に難しい分野なのですね。さらに、できるだけ前例のないトリックを開発するために、大量の読書も必要となりますし。
 実は私自身も、日々。本格ミステリの厳しさを痛感して暮らしております!

(あぁ、ミステリって、大変だ!)
                                                     薫葉豊輝

本のご紹介!

本のご紹介。

「新本格推理05」 二階堂黎人編集(光文社文庫)


 昨年。広島で行なわれた「島田荘司」先生の講演会「本格ミステリーとは何か。その意味」へと私は参加した際。

 私は、質問タイムにて(と終了後の数分間)、自身の考える新しいミステリを先生に聞いていただいたのですが、その際、島田先生は「面白い。あなたの提唱は、大変魅力的で面白いと思います。何か書いていますか、投稿していますか。あなたの作品を読んでみたいですね。そちらに南雲堂さんや、講談社の編集の方もいますし、読んでもらう人、見てもらう機会もあると思います。私も機会があれば読むことをお約束しましょう。期待しています」と言っていただきましたが、一体。私がそこで何を語ったかと言うと。
 重力から推理の視点を解放し、重力に支配されないミステリを目指す。『本格無重力推理』という独自の分野の提唱を私は述べさせていただきました。

 そこで書いた「本格無重力推理」第一弾が「新・Yの悲劇『月光の白騎士』‐スペースダイイングメッセージ‐」です。
 惜しくもこの作品は、「新本格推理05」の最終選考まで残りましたが、掲載には到らず、島田先生の目にも触れられぬまま今回は幕を閉じましたが。


 本作の選評にご興味のある方は、是非とも「新本格推理05」 をお買い求め下さいませ。(3月刊行の新刊ですので、まだまだ書店で見つかるかと思われますし。あるいはこのリンクから!)

 ちなみに、本書には、私の作品に対する選評が約2Pに渡って掲載されていますので(最終に残ると個別に選評が掲載されるため)、実は自身の宣伝のためにも、ここで公表させていただきました!

「賛成です。無重力推理ですか、大変興味と魅力を感じます」とも言って下さった島田先生の期待に、いつか私も応えられるよう頑張ります。

 いや、最近は、無重力ものは書いていませんが。
 またまた始まります「百間川のエジソン」の物語にもご期待ください!

詩(18)

 連載小説は終了いたしました。ご愛読、ありがとうございます!
 早速ですが、再び、新連載スタートいたします!

 お楽しみに!                         薫葉豊輝


 では、本日は詩を一編。


題「闇の知」


 硯へと今、闇が落ちようとしている。
 それを拾わんとする、一本の筆。
 一筋の光りさえもない水面に、
 例え、自分の顔は写らなくとも、
 その闇の底から吸い上げた
 一滴の水片が、
 半紙の上へと落ちる時。


 闇は今、己の心を写すもの。