家庭内暴力を経験した母とデジタルタトゥーの被害にあった娘を主人公に、2人の関係性や現実に向き合う姿を描いた人間ドラマ。
夫を亡くし、介護の仕事をしながら一人暮らしをしているギョンア。教師として働く娘のヨンスが唯一頼れる身内だが、彼女に会う機会は少ない。一方、ヨンスは元恋人のサンヒョンからしつこく付きまとわれ、苦しんでいた。ヨンスがギョンアのもとを訪れた穏やかな週末、ギョンアの携帯に見覚えのない番号から、ヨンスのプライベート動画が送りつけられる。混乱するギョンアは娘を厳しく責め立て、ヨンスはひとりでこの状況に対処しようとするが……。
ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「賢い医師生活」で知られるハ・ユンギョンがヨンス役を演じ、映画初主演を務めた。ギョンア役は「悪い男」「82年生まれ、キム・ジヨン」のキム・ジョンヨン。監督は、これまで発表した短編映画で社会的弱者への繊細かつ誠実なまなざしが高く評価され、本作が長編映画監督デビューとなるキム・ジョンウン。
2022年製作/119分/G/韓国
原題または英題:Gyeong-ah's Daughter
配給:JIGGYFILMS
劇場公開日:2026年3月7日(以上、映画ドットコムより)
☆デジタルタトゥーという言葉を初めて知りました。一度ネットに上げられるとタトゥー同様消せないという意味を知って納得でした。冒頭で心配性の母ギョンアが娘のヨンスに電話しながら部屋の中を隅々まで映すように促す場面はのちのリベンジポルノの被害への伏線のようにも感じられます。この元カレのクソぶりには本当に見ていて腹がたつくらいでしたし、またそれ以前に安易に自身の裸を映像に撮ることを許してしまうことの軽率さはよくあることなのでしょうけれども呆れますが、物語はそうしたことをめぐる闘いよりも母と娘の確執での愛憎劇が中心になっていたことで深みを増していたように感じられました。
スコットランドの巨大な物流センターで働く移民の女性の日常を通して現代社会が抱える孤独と分断を描き、その先にかすかな希望の光を見いだしたヒューマンドラマ。
スコットランドの郊外に建つ巨大な物流センターでピッカーとして働くポルトガル移民の女性オーロラ。スキャナーの指示に従って無数の通路を歩き回り、棚から商品を取り出すという単調な反復が、彼女の1日の大半を占めている。同僚たちとの会話は休憩中のわずかな時間のみで、勤務を終えると彼女は疲れた体を引きずり、移民労働者たちのシェアハウスへと帰っていく。住人同士の交流は表層的で関係が深まることはなく、寄る辺のない日々が淡々と続いていた。そんなある日、オーロラは不注意からスマートフォンを壊してしまう。職場の連絡手段であり、時間を埋めるための“相棒”でもある文明の利器を失ったことで、彼女の日常はゆるやかに、しかし確実に形を変えていく。
ポルトガル出身でスコットランドを拠点に活動するローラ・カレイラが自身の移民としての経験をもとに長編初監督・脚本を手がけ、2024年・第72回サン・セバスチャン国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。
2024年製作/104分/G/イギリス・ポルトガル合作
原題または英題:On Falling
配給:マーチ
劇場公開日:2026年3月6日(以上、映画ドットコムより)
☆ポルトガルから移民してきた主人公の勤務先はスコットランドの巨大物流センターということで、その労働シーンはあの「ノマドランド」をちょっと思い出してしまいましたが、そこで働く人たちがそれぞれ別の国からやってきた人たちで、更に職場の上司は勿論現地の人たちであり、必然的に会話の大半が共通語である英語でのやりとり。色々な国の人が集まっての食事やアフター5の過ごし方など、実際にそれを経験したら疲れそうだな...なんて思いながら観ていました。
上映終了後のトークショーでポルトガル大使館(だったかな?)の方がストーリーに関してよりもこの映画の背景にある移民の境遇について語っておられ、映画に秘められたものを理解する手がかりを学んだ思いです。島国の日本とは違い、ヨーロッパはEUで結ばれていることから、比較的安易に海外へ出稼ぎに行くことができ、特にポルトガルではそうした人が多いとのことでした。
日本手話とクルド語を題材に、ろう者の日本人家族とクルド人一家が繰り広げる誇り高き小競り合いの行方を描いたコメディ。
古賀夏海は電器店を営むろう者の父と弟と暮らしているが、ある日、一家は同じ町に暮らすクルド人家族と些細なすれ違いから対立してしまう。両者の通訳として駆り出されたのは聴者である夏海と、クルド人一家の中で唯一日本語を話せるヒワだった。お互いの家族の通訳をするなかで、夏海とヒワの間には次第に信頼関係が生まれるが、両家の対立は深まるばかり。そんなある日、夏海の弟・駿が描いた謎の文字が、町を巻き込む事態へと発展してしまう。
「愛のゆくえ」の長澤樹が主人公・夏海を演じ、東京・西日暮里でラーメン店を営むろう者の毛塚和義が夏海の父役で演技に初挑戦。テレビドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」の那須英彰と「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の今井彰人が父の友人役、「笑いのカイブツ」の板橋駿谷が町おこしを計画する団体職員役、「ハケンアニメ!」の小野花梨がろう学校の先生役で共演。「なんのちゃんの第二次世界大戦」などの監督作で知られ、自身もCODA(ろう者の親を持つ聴者の子ども)である河合健がメガホンをとった。
2025年製作/143分/G/日本
配給:GUM
劇場公開日:2025年11月29日(以上、映画ドットコムより)
☆父親が聾者で娘が健常人という設定には何年か前のアカデミー賞受賞作品「コーダ あいのうた」を思い出さずにはいられませんでしたが、ろう者の境遇と、日本に来たクルド人の境遇を、共に一般人と言葉(日本語)でのコミュニケーションが出来ないことで重ね、色々とトラブルを起こしながらも、最初の対立から共存へ導いた展開が素晴らしかったです。もっとも全く日本語が出来ないクルド人スタッフが町でお店を持つという話はさすがに無茶苦茶だろうとは思いましたが(^^;)
それはともかく、上映終了後のトークショーで自らがコーダであったことを告白した監督の思いが実った作品だと思います。
名優ベン・キングズレーが主演を務め、孤独な老人が隣人たちとともに奇想天外な騒動に巻き込まれるなかで人生の喜びを取り戻していく姿をユーモラスにつづったヒューマンドラマ。
ペンシルベニア州西部の小さな町に住む79歳の男性ミルトンは、娘デニスに認知症の初期症状を心配されながらも、ひとり暮らしを続けていた。ある夜、空から現れた正体不明の飛行物体がミルトンの家の庭に墜落し、平穏だった彼の日常は大きく揺らぎはじめる。周囲に訴えても相手にされず、ミルトンはともに飛行物体を目撃した同年代の隣人サンディーとジョイスと秘密を共有することになる。それぞれ孤独を抱えていた3人は忘れかけていた人生の喜びを取り戻し、これからの人生と向き合っていく。
「ボディビルダー」のハリエット・サンソム・ハリスがサンディー、「コーンヘッズ」のジェーン・カーティンがジョイス、ドラマ「メディア王 華麗なる一族」シリーズのゾーイ・ウィンターズがミルトンの娘デニスを演じた。監督は「リトル・ミス・サンシャイン」「ラビング 愛という名前のふたり」などのプロデューサーとして知られるマーク・タートルトーブ。
2023年製作/87分/G/アメリカ
原題または英題:Jules
配給:ナカチカピクチャーズ
劇場公開日:2026年3月20日(以上、映画ドットコムより)
☆ちょっと荒唐無稽なところはありましたが、実年版「ET」といった感じで楽しめましたし、ストーリー的には藤子F不二雄の短編を想わせるようなペーソスを感じさせます。終盤はちょっとウルウルしてしまいました。もっとも個人的に一番のツボだったのは主人公の女友達の一人がカラオケでレーナード・スキナードの「フリー・バード」を情感たっぷりに歌うシーンで、歌詞もよく見るとこのストーリーを暗喩したようなイメージでしたが。
この映画、若い人はともかくシニア世代にはかなり突き刺さると思いますし、ミニシアターの数館だけでの公開というのは実に勿体ない秀作ではないでしょうか? 宣伝次第ではシネコンでも充分に客入りの期待できる作品だと思うんだけれどなぁ。
コミック版も人気を博した和風恋愛ファンタジー小説「鬼の花嫁」を、永瀬廉と吉川愛が主演を務め実写映画化。
あやかしと人間が共存する世界。優れた容姿と能力で人々を魅了するあやかしたちは、時に人間の中から花嫁を選ぶ。あやかしの中で最も強く美しい「鬼」の花嫁に選ばれることは、最高の名誉とされていた。東雲柚子は妖狐の花嫁である妹・花梨と比較され、家族から虐げられてきた。鬼の一族の次期当主・鬼龍院玲夜に花嫁として見いだされた彼女は、突然の事態に戸惑いながらも、不器用だが優しく誠実な彼にひかれていく。玲夜もまた、一族の行く末をひとり背負う重責と孤独を柚子により癒やされるようになる。しかし、次第に柚子は自分が玲夜の花嫁にふさわしいのか、そして玲夜は柚子をあやかしの世界に巻き込むことが彼女にとって本当に幸せなのか、それぞれ不安を覚えはじめる。
柚子の妹を見初める妖狐・狐月瑶太を伊藤健太郎、柚子の妹・花梨を片岡凛が演じ、兵頭功海、白本彩奈、田辺桃子、谷原七音、嶋田久作、尾野真千子が共演。「九龍ジェネリックロマンス」の池田千尋監督がメガホンをとった。
2026年製作/122分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2026年3月27日(以上、映画ドットコムより)
☆実は主演の永瀬廉はどうもあの独特の目つきが苦手なのですが、個人的に以前から存じ上げている女性が音楽を担当されており、更にちょっとだけ歌うシーンで出演もしているとのことでしたので、観ることにしました。その歌うシーンはかなり最初の方に出てきたので意表を突かれた感じでしたが、なかなか良い雰囲気でした。映画で彼女が提供した数々の楽曲もそれぞれのシーンで映像美を更に引き立てていたように思います。
さて、ストーリーは男の私が観るにはちょっとファンタジック過ぎて辛い部分もあったものの、まぁそれなりに面白く観ることができました。そして永瀬クンですが、その個性的な目つきが、今回は「あやかし」「鬼」というパーソナリティーにはよく合っていた感じです。そして吉川愛がとにかく可愛くて、彼女の顔がアップになるとつい見とれてしまったりして(笑)。
アカデミー賞7部門にノミネートされた「オデッセイ」の原作「火星の人」などで知られる作家アンディ・ウィアーのベストセラーSF小説を映画化。滅亡の危機に瀕した地球の運命を託された中学の科学教師が、宇宙の果てで同じ目的を持つ未知の生命体と出会い、ともに命を懸けて故郷を救うミッションに挑む姿を描く。
太陽のエネルギーが奪われるという原因不明の異常現象が発生。このままでは地球は冷却し、人類は滅亡してしまう。同じ現象が太陽だけでなく宇宙に散らばる無数の恒星で起こっていることが判明し、11.9光年先に唯一無事な星が発見される。人類に残された策は、宇宙船でその星に向かい、太陽と人類を救うための謎を解くことだった。この“ヘイル・メアリー(イチかバチか)”プロジェクトのため宇宙に送り込まれたのは、優秀な科学者でありながら学会を去り、いまはしがない中学教師をしていたグレースだった。彼は地球から遠く離れた宇宙でたったひとり、自らの科学知識を頼りにミッションに臨み、そこで同じく母星を救おうと奮闘していた異星人ロッキーと出会う。姿かたちも言葉も違う2人は、科学を共通の言語にして難題に立ち向かい、その過程で友情を育んでいくが……。
主人公の中学教師グレースを「ラ・ラ・ランド」「バービー」のライアン・ゴズリングが演じ、「落下の解剖学」「関心領域」のザンドラ・ヒュラーが共演。「オデッセイ」も手がけたドリュー・ゴダードが脚本を担当し、「スパイダーマン スパイダーバース」シリーズの製作・脚本などで知られるフィル・ロード&クリストファー・ミラーが監督を務めた。
2026年製作/156分/G/アメリカ
原題または英題:Project Hail Mary
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
劇場公開日:2026年3月20日(以上、映画ドットコムより)
☆地球の存亡を賭けたミッションという意味では「宇宙戦艦ヤマト」を思い出し、異星人ロッキーとの最初のコンタクトの場面には「未知との遭遇」を思い出しもしましたが、他にも色々な作品のオマージュが含まれていそうですね。全体的にはこれも藤子・F・不二雄の作品を思い出してしまいます。ただ、地球を救うためとはいえ、片道燃料でそれも飛行士の訓練を受けた訳でもない数学者を重大ミッションの任務を強制するというのはさすがに理不尽さを感じますし、異星人が極めて友好的で早々に会話が成立したり、相手が燃料を分けてくれたり、いくつかご都合主義的な部分も感じなくはありませんが、一難去ってまた一難的な見せどころがいくつもあり長時間飽きさせず、ラストもほっこりさせてくれました。近年のキナ臭いスペース・ウォー的な映画よりは好みです。
「ある子供」「少年と自転車」などで知られるベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、母子支援施設で暮らす5人の若き母親たちを描いた群像劇。
若くして妊娠した女性たちを支援する施設で共同生活を送る、ジェシカ、ペルラ、アリアンヌ、ジュリー、ナイマの5人の少女。頼る人を持たず、貧困や暴力などさまざまな問題を抱える彼女たちは、戸惑い、悩み、目指すべき家族像を見いだせないまま母親になる。押し寄せる孤独感に飲み込まれそうになりながらも「愛する」ことを望む少女たちは、時に誰かに寄り添われ、それぞれが歩むべき道を選びとっていく。
「CLOSE クロース」のルーカス・ドン監督が共同プロデューサーに名を連ねた。2025年・第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、脚本賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。
2025年製作/104分/G/ベルギー・フランス合作
原題または英題:Jeunes mères
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2026年3月27日(以上、映画ドットコムより)
☆ほとんど無計画に身籠って出産したそれぞれ異なる境遇を持つ若い女性5人とそれを手助けする支援スタッフの群像劇といった趣きです。一人を除きどの娘の相手も揃いも揃ってクズばかりで男としては肩身の狭くなる話ではありましたが、そこに差別や偏見、更にはクスリ、また親との確執なども絡み、徐々に追いつめられていく彼女たちの痛々しい姿に観ていて段々辛くなってきて「オレ、何でこんな映画を選んでしまったのだろう?」なんて思う瞬間もあったりしましたが、100分超の長さにぎっしり詰まったエピソードに色々と考えさせられる映画ではありました。
「アイデン&ティティ」の監督・田口トモロヲと脚本家・宮藤官九郎が再タッグを組んだ青春音楽映画。日本で初めてパンクロックを自分たちの手で生み出した若者たちによるムーブメント「東京ロッカーズ」の姿を、彼らのカメラマン兼マネージャーだった写真家・地引雄一の自伝的エッセイ「ストリート・キングダム」を原作に描く。
1978年、ラジオで耳にしたセックス・ピストルズに突き動かされて上京したカメラマンの青年ユーイチは、小さなロックミニコミ誌「ロッキンドール」をきっかけに、ライブハウスを訪れる。そこは音楽もバンドも観客たちも何にも縛られない生のエネルギーにあふれた場所で、ボーカルのモモが率いるバンド「TOKAGE」のライブに衝撃を受けたユーイチは夢中でシャッターを押す。正式にカメラマンとして撮影を依頼されたユーイチは、彼らと交流を重ねていく。やがて彼らの音楽は若者たちを熱狂させ、そのムーブメントは「東京ロッカーズ」と呼ばれ日本のロックを塗り替えることとなる。
峯田和伸がユーイチ役、若葉竜也がモモ役で主演を務め、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗、大森南朋、中村獅童、中島セナが共演。「アイデン&ティティ」の大友良英が音楽を手がけた。
2026年製作/130分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2026年3月27日(以上、映画ドットコムより)
☆いやぁ、とても面白い映画でした。勿論かなりフィクションを加えていることでしょうけれども、1970年代後半から80年代初めにかけての日本のアンダーグラウンド・ロック・シーンとその空気をかなり忠実に描いていたのではないでしょうか? 個人的にはアメリカン・ロックやポップスにどっぷり浸かっていた時期でもあり当時の東京ロッカーズには関心を持っていませんでしたが、1979年にレコード・チェーン店のスタッフになった頃、丁度同社が日本のインディーズ・ロックに力を入れ始めたこともあり、映画の中で描かれた流れはおおよそ(仕事として)頭に入っていましたが、1990年代以降はそうしたアンダーグラウンド・シーンにも興味を覚えていったこともあり、今にして思えば当時そうした動きに全く興味を持たずにいたことは勿体なかったと思います。 映画ではすべて名前を変えられていましたが、リザード、フリクション、ゼルダ、スターリン、S-KEN、じゃがたらなどモデルになったバンドやレコードなど(アルバム・ジャケットのデザインも一緒でしたし)おおよそはわかったのもそのレコード店に居たおかげですね。招き猫カゲキ団(ちゃんとアルバムの付録まで描かれている)まで登場したのは想定外でしたが(笑)














