どの席に座るべきか?
これでまず迷った。
人の後ろにいては画面に後頭部ばかりが写る。
かと言って、端の通路の方に行くと舞台から遠くなりアングルも悪くなる。
迷っている間にも人はどんどんやって来て、良い席は取られていく。
焦る気持ちを抑え、僕はもう一度会場を見回した。
舞台は右手奥。
この位置から左側を見ると・・・
後ろの方に階段になっている観客席がある。
「よし、あそこに行こう」とベッツィーを促した。
今日は双子の小学校で年度末の大きなコンサートがある。
朝からジーニィに、
「全部ちゃんとビデオに撮ってね」と言われたが、勿論こっちもそのつもりだ。
観客席の下から三段目に陣取った。
全体が正面から見えるのでこれで良しとした。
校長のあいさつで始まり、続いて学年全体によるたて笛(リコーダー)の合奏。
6クラス、総勢約120人。
僕のDSLRカメラには18mm-200mmのズームが付いている。目一杯にズームインするとリオと彼の左右5人位までがフレームに収まる。撮ってからモニターで拡大してみると、画像がかなりブレている。
フラッシュは勿論届かないので、ISO(感度)を最も高い3200に設定した。それでもシャッタースピードは30分の1秒が限界。望遠でこの遅いシャッタースピードにすると絶対にブレる。
早くしないと曲が終わってしまう。
僕はカメラをシャッタースピード優先モードに切り替え、スピードを80分の1秒にした。画像がかなり暗くなるが、ブレて使いものにならない写真よりはマシだ。更に、ズームを最長にせず、かなり余裕をもって大きめの範囲を撮影した。後は家に帰ってからトリミングをするしかない。
コンサート前にビデオカメラとデジカメのどちらを僕が担当し、どちらをベッツィーに任せるかで少し悩んだが、僕がデジカメで正解だった。ベッツィーにはこういう作業はできないからだ。
苦心して撮ったのが、この画像。
リオは中段真ん中の坊主頭。
さあ、今度はジーニィだ。
みんな同じ服と帽子なので彼女を見つけるのに手間取った。
彼女は中段真ん中。
毎度のことながら、子供のイベントの撮影は撮り直しがきかないのでハラハラする。
2曲目は歌だった。
それが終わると、今度はクラス別に演技があった。
最初はリオのクラス。
同じ位置からしばらく撮っていたが、動きが早く画像はブレブレ。
「もっと近づかなアカン」
僕には躊躇している時間はないのだ。
演技の途中だったが、
「失礼、すんまへん、ごめんやっしゃ」と、回りの人に謝りながら通路に出て、舞台までの距離が半分位、しかし、アングルの悪いスポットに移った。ここなら立って撮影しても僕の後ろには誰もいない。
パシャ、パシャ、パシャと僕は続けざまにシャッターを切る。
記念すべき瞬間を撮影しているのだ、という高揚感がわいてくる。
「う~ん、今宵はお父さん日和じゃ」と、わけのわからぬ自己満足に浸る。
リオは皆の真ん中で手を左右に動かしている。リオに手が4本あるかのように見せる為にすぐ後ろに子供が一人へばりついている。この動きは「水」を、そしてこの舞台は水の一生を踊りで表現しているらしい。勿論、ナレーターがそう言っていたからわかったのであり、解説がなければ「二人羽織」の物真似くらいにしか思わなかっただろう。
「ああ、こらっ!どこのガキじゃ。邪魔や、どけーっ!」と心の中で叫ぶ。
アングルを変えようと思ったが、いつの間にやら左側に同じ目的の誰かが立っていてそっちには行けず、右にズレたら前のガキがますます邪魔になる。
そうこうしている内にリオはどこかに行ってしまった。
う~、悔しい。
と、思いきや・・・
お~、リオがマイクの前に立っているではないか。
「海は地球の表面の4分の3近くを覆っています」とリオが話しだした。
そう言えば、昨日、彼はこれを大声で何度も練習していた。僕は彼に、
「うるさい。便所でやれ!」と怒ったっけ。
偉いぞ、リオ。
家族の無理解にもめげずに頑張った息子が立派に見える。
演技が無事終わり、お客さんに挨拶をする20人の児童。
リオは左から3人目。
最初のクラス別演技ということもあり、会場からは大歓声が上がった。
口笛、指笛、ウ~ウ~という雄たけびのような声等、客のノリ具合が日本とは全く比較にならない。まるでスポーツ観戦のよう。
舞台から降りてきたリオをパチリ。
遠い舞台の上の彼をしばらく凝視していたので、近くに来ると急に大きくなったように見える。軽快な足取りに彼の演技への満足度が伺えた。
さあ、次はジーニィの番だ。彼女のクラスはどんな演技をするのだろう?
つづく
Takaya
今日もお越しいただき、ありがとうございます。
明日はジーニィの登場です。乞うご期待!
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