1分前にリオが、

「おしっこ~!」と元気よくトイレへと走った。

バタバタという足音が一瞬止まったと思ったら、リオが泣き出した。

「What happened?」とジーニィが宿題の席を立ち、

「何や、何や?」と、僕も皿洗いで濡れた手を拭いてから様子を見に行った。

「そこで頭を打ったの。エ~ン」と、泣きながら、リオはドア枠を指さす。

「アホやの~、お前。まっすぐ歩いとったら、頭なんかどこにもぶつけへんのに」

僕が冷やかに言うと、リオの泣き声のボリュームが一段上がった。


ジーニィがリオの為にアイスパックを持ってきてくれた。

僕のテニスエルボーの為に買ったもの。伸縮自在のストラップが付いていて使い勝手が良い。子供達もよく使う。


「ほら、いつまでも泣いてんと、宿題せ~よ」と僕はリオを促した。




「お父さん、これ、結構重~い」と頭を左右に振ってふざけるリオ。

もう機嫌が直っている。

幸せな奴。

「ほら、宿題しいや。晩飯食うたら外で遊ぶんやろ。さっさとせな遊ぶ時間、無くなるで~」と僕は急かす。




やっと宿題に集中し始めたリオ。




ジーニィは社会の宿題の為、インターネットで中国の「三峡ダム」を調べている。中国長江流域で現在建設中のこのダムは完成すれば世界最大のダムとなるそうな。


カリカリと鉛筆の音だけが響く心地よい一時が数分続いたと思ったら、電話が鳴った。リオが取る。ベッツィーからだった。彼女は今週、毎夜、広告業界の広告賞イベントがあり、帰宅が連日12時を回る。


リオはさして頓着しないが、お母さんっ子のジーニィはとても寂しがっている。




ジーニィは電話口でわざと寂しそうな声を出して、精一杯母親に自分の気持ちを訴える。今日の出来事を長々と話していたリオとは対照的に、彼女はほとんど何も言わない。

「Bye, bye. I love you.」と蚊の鳴くような声で言うと、ジーニィは電話を切った。

台所で晩飯の用意をしていた僕のところに来たジーニィは、両手を広げて僕にハグ(抱擁)を求めた。ギュッと抱きしめると、濡れぞうきんを絞ったみたいに彼女の眼から涙があふれ出た。

「お母ちゃん欲しい~」

彼女は「I want Mommy」を直訳してべそをかいた。


僕は彼女を抱きあげて、勉強机となっている食卓へと戻した。

「今日はYummy Burgerやで(日本風ハンバーグステーキを我が家ではこう呼ぶ。Yummyは幼児語でおいしいの意)」と言うと、彼女は寂しげな笑顔を作った。



食後、三人で庭で遊んだ。




ジーニィにはすっかり元気な笑顔が戻っていた。


終わり良ければ全て良し


元気に一日を終える力が子供達にも備わって来たな、と思うと有り難かった。



Takaya


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