ジーニィをバス停で拾うと、僕はすぐ彼女を車に乗せて、月に一度の検診に連れて行った。いつもはベッツィーがするのだが、彼女は今から明日提出のリオの英作文の指導をしなければなられない。
車の中でジーニィが、
「ねえ、お父さん。ベーカリーに行っても良い?」
「ええ?ベーカリー?検診やろ、今から」
「でも、お母さんはいつも連れてってくれる」
「しゃ~ないな~。ほんなら、ええわ」
「お父さん、だ~い好き」
この台詞はいついかなる状況で聞いても嬉しい。
さあ、着いた。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な?あっ、お父さん見て!」
「何や、何や」
「ねずみさ~ん。おいしそ~」
「ほんなら、それ買いいな」と僕は値段も見ずに言った。さっきの”大好き”がまだ効いている。
「いい。ジーニィはエクレアにする」
ベーカリーから目的地まで徒歩2分。
ジーニィは歩きながら食べ出した。
「ちょっと、着いてから食べえな」と言ったが、彼女は聞こえぬふり。
しかし、アメリカ人は歩きながらでもよく物を食べる。電車の中やオフィスの中も。
ちなみに彼女は日米両国人。
医者の待合室でエクレアを食べるジーニィ。
これをベッツィーと毎週やっているそうな。
さて、検診の前にエクレアを食べても良いような医者と言えば・・・
歯医者~!
ちょっと、それホンマ?
勿論、待合室に入る前に、これが話題になった。
「ちょっと、ジーニィ。ほんまに食べてもええの?」と聞いたら、
「うん。待合室のトイレに歯ブラシがあって、いつもそれで磨くの。何も食べなくても磨いてからお医者さんに会うんだよ」
「さよけ。ほな、好きにして」
という風に決着が付いた。
ジーニィは歯の矯正をしていて、月に一回ここへ来る。
ワイヤーを絞めて徐々に歯を内側に向くようにする2年計画。
検診の日、エクレア以外に唯一の楽しみは、これ。
矯正器具にはめ込むビニールのガードの色を2色選べる。
10月はハロウィーンのオレンジと黒、12月はクリスマスの緑と赤を選んでいた。
今回は緑と黒。
この作業が終わると、
ヘッドギアの調整。彼女は家にいる時は、食事の時以外ずっとこれをしていなければならない。勿論寝る時も。歯を磨く時は極小のブラシでワイヤーの間を磨く必要がある。なかなか大変なのだ。
「Smile!」と常日頃言われるアメリカでは歯並びは非常に重視される。
時としてそこまでしなくても今のままでも良いのにと思うが、ベッツィーは絶対に矯正派。議論の余地などない。リオも2年後には同じ事をする予定になっている。
どこまでが本当に必要で、どこからが単に歯科美容なのか、区切りがハッキリしない。医者は商売なので、できるだけ早くから矯正を始めようとする。
費用もかかり、悩むところだ。
せめてもの慰みは、ジーニィの明るいスマイル。
「あ~、やっと終わった~」
いいよいいよ、疲れた時はスマイルなしでも。
お疲れさん、ジーニィ。
Takaya
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