僕は厳しい表情でリオに電話、ジーニィにカメラを手渡した。
「ええか、よう聞けよ。お父さんにもしもの事があったら、リオは911(日本の110番)に電話するんやぞ。ジーニィは、お父さんの姿をそのカメラで撮って。わかったな?」
「アイアイサー!」
敬礼する双子を後にして、僕は未だかつて足を踏み入れたことのない未知の世界へと向かった。生きて帰って来れるだろうか?
一段、一段、登るごとに、高度が上がって行く。
酸素が薄く感じるのは気のせいか?
只今、標高2メートル。
どうしてこんな事になったのか?
理由はこれだ。
雨漏り。
二日前の豪雨で、一階の天井から水滴が落ちてきた。
3分間に1滴位の量だったが、二日間止まらなかった。
今まで雨漏りをした事がなかった場所。
外に出て確認すると、どうも暖炉の煙突の向こうあたりから浸水しているようだ。
梯子の天辺から屋根に登ろうとしたが、45度の傾斜はきつく、足が滑って登れない。何かロープにでも捕まる事ができれば・・・
おお、良い考えがひらめいた。
ロープの先に穴あきプラスティックボールを結びつけた。これをカウボーイの輪投げの要領で煙突にぐるりと巻きつけ、戻って来た赤いボールを結んでループを作ろう。
何を隠そう、僕は昔ボーイスカウトに入っていて、輪投げの技術は日本人離れしていた。それは、「浪速のカウボーイ」と異名を取ったほどであった(嘘じゃ!)。
早速、梯子の上から身を乗り出してロープをブンブンと回してみた。
エイッ。
放たれた赤玉は煙突を巻いてこちらに戻って来る、はずだったが、丁度煙突の向こうでロープが何かに引っ掛かり、帰って来ない。
ロープをぐいぐい引っ張ったが、ビクともしない。どうも、屋根と煙突の間に食い込んでいるみたいだ。
仕方がないので、意を決して屋根の上に登った。
ずるっ。
途端に足がすべった。
げっ、こわ~。
遥か下界を見下ろすと、双子が心配そうに僕を見上げている。
「お父さん、大丈夫~?」とジーニィが聞き、
「お父さん、もう止めて~」とリオが懇願する。
進むべきか、退くべきか?
僕が死んだらあの子達の世話は誰がする?
洗濯物は誰が畳む?
ああ、しかし、「浪速のカウボーイ」と呼ばれた男は、ここで尻尾を巻いて引き返す事はできなかった。
許せ、双子。
「ええかぁ。何かあったら911やぞ~!」
僕は双子にそう声を掛け、改めて目の前にそびえる屋根を仰いだ。
(ここで「ミッション・インポッシブル」のイントロを想像して下さい)
つづく
Takaya
さあ、果たして父はミッションを完了する事ができるのか?
それとも屋根から落ちて、病院行きか?
是非、明日もお越しください。
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おおきに。




