小学生のころ 国内外で転校の多かった私が

 

東京の小学校6年生の夏に経験した思い出です。

 

 

 

 

 


 

 

 

赤い服のひと

 

 

真っ黒に日焼けして 臨海学校から帰ってきた私を学校まで車で迎えに来た母は

私を家に下ろして そのまま買い物に行ってしまいました。

 

転校したばかりで参加した臨海学校は クラスメイトとの距離をあっという間に

縮めてくれて楽しくて楽しくて

 

そんな余韻を残しつつ狭い庭をウロウロしていた私は ふと

門の前を横切っていった女性に気がつきました。

 

道に出てみると

その人は右隣の大きなお屋敷の前を通り過ぎようとしています。

 

真っ赤なドレスに大きな帽子を被り

バッグも持たず

 

真っ白な手を ゆらゆらさせて歩いてゆきました。

 

 

 

 

 

 

そしてその先の細い道、

アメリカ人家族の住む大きなお屋敷の先を曲がって消えました。

 

あれ?

あの先は行き止まりじゃないかしら

 

だって、行き止まりには打ち付けられ閉じてしまった裏門があり

薄暗い道の両側はお屋敷の高い塀と普通の家のブロック塀

 

という事は、すぐに戻ってくるわね

そうしたらあの赤い服を着た女の人のお顔が見える!

 

好奇心でその人が出てくるのを待っていましたが

何分待っても誰も現れません。

 

待ちきれずに道の角まで走っていった私が覗き込んだその先には

 

 

ただ真夏の暑い空気がこもっているだけで 人っ子一人いません。

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか帰って来ていた母に声をかけられ

私はハッと我に返りました。

 

 

「何してんの? 暑いから早く家に入りなさい」

の言葉に従い 家に入り 買って来てくれたアイスを食べ

母に何を言うでもなく

臨海学校の思い出を話し始めた私でしたが

 

 

 

 

その日の夜

あれって何だったんだろう

と、赤い服と ゆらゆら揺れていた白い腕を思い出していました。

そして、

あのひとはハイヒールをはいていたのにコツコツという足音は聞えなかった・・・

いえ、それも定かではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その年の冬近く

その大きなお屋敷は取り壊され 小さな家が何件か建ち

赤い服の女の人が消えた細い道も無くなってしまいました。

 

いまでも、

お屋敷の裏 大きな木々のなかに古い水のタンクが見えていた

その様子を 鮮明に思い出します。

 

 

 

 

おわり