毎年 この時季になると(勝手に)お届けしていますが

私が大好きなこのお話を 私なりに書いてみたものです。

 

初めて見て読んで下さる方は 初めまして ですね。





傘地蔵
 

 

 


むかし むかし山間のある村に

おじいさんとおばぁさんが住んでいました。


朝から雪が降りしきるある日

「ばぁさんや」

「なんですか おじいさん」

「もうすぐ年が明けるなぁ」

「そうじゃねぇ おじいさん」


年の瀬だというのに 貧しいこの家には

米櫃の底に一握りの米しか残っていません。

そこで、

おじいさんは 町に笠を売りに行くことにしました。





けれども 雪の降り積もる町には人の姿もまばらで

笠は少ししか売れませんでした。


「これじゃ 米も買えん。ばぁさん がっかりするだろうなぁ」

おじいさんは大きなため息をついて 帰ることにしました。
 

 

 



来た道をとぼとぼ戻り

峠まで来たとき




「おや?」

峠にはお地蔵様が並んで立っておられます。

そしてその頭には雪が降り積もって

真っ白になっていました。

「かわいそうになぁ」

おじいさんは お地蔵さまの頭の雪をはらっていきました。


「こんなに雪をかぶっちゃ寒かろうに」

 

 

そして 背に担いだ笠をおろし

   

「お地蔵さま こんな売れ残りで悪いけんど」

   

と言いながら お地蔵様の頭に笠を乗せていきました。

 

「あれま」

 

笠が一つたりません。

 

「悪いなぁ お地蔵さま」

 

そして 自分の頭に被っていた手ぬぐいを外すと

 

それを最後のお地蔵様の頭にそっと巻きました。

 

「わしが巻いてた手ぬぐいで申しわけないけんどなぁ」

 

 

 

 

 


 

家に帰りつき ほぉとため息をつきました。

 

「ばぁさんや」

 

と、 傘が売れなかったこと

 

峠でお地蔵様が寒そうにしていたことを話しました。

 

 

「そうですか、それはよいことをしましたね おじいさん」

 

「わるかったな 米も買ってきてやれんで」

 

「いいんですよ おじいさん」

 

おばぁさんは炉に枯れ枝をくべながら

 

「うちには薪も布団もあるこんだし いいんですよ」

 

二人は 米は少ないけれど温かい粥をすすり 

 

静かに眠りにつきました。

 

 

 

 

 

 

 


 

しばらくして おばぁさんが声をかけました。

 

「おじいさん 人の声が聞こえませんか」

 

「うん そうだな、人の声が聞こえるね」


 

それは 歌うような 話すような何人かの声でした。
 

 


 おじいさんの家はここだね

 

 うん そうじゃそうじゃ 

 

 もうすぐ夜が明けて新しい年がやってくるね

 

 うん そうじゃそうじゃ

 

 これを置いていったらば 喜んでくれるじゃろか

 

 

 

 

二人は起き上がりました。

 

「だれぞが道に迷ったのかもしれませんよ」

「この雪のなかじゃ難儀じゃろ」

   

おじいさんは囲炉裏に火をおこし おばぁさんは灯りをともし

 

ガタガタと戸を開けました。

「おや 誰もおらんようだが」

 

 


 

遠くに歌声だけが聞こえます。

 雪も降る降る ほーやれほ

 

 わらの笠もて ほーやれほ

 

 爺さんうれしや ほーやれほ

 

 ばぁさんうれしや ほーやれほ

 



 

そして 家の前には

 

いくつもの米俵

 

川の魚が盛られた桶

 

絹や木綿の美しい反物

 

砂金や銀の粒がぎっしり詰まった袋が

 

積み上げられていました。

 

 

 

 

二人は夢を見ているのかと驚きました。

 

「おじいさん これは」

 

「おばぁさん これは」
 

 

 

 

 


 

降りしきる雪のむこうに

白い手ぬぐいを巻いた頭が 見えたような気がしましたが

それもすぐに

真っ白な雪にかき消されてしまいました。
 
 
 

うれしたのしや ほーやれほ


 
 

 


                    










おり~ぶ