(この内容は、東京JC次世代の東京創造会議にて作成した提言書からの抜粋です。詳細はこちら )



ゴンザレスの祖国トンガニアでは、時間がゆっくりと流れているかのように人々はのんびりと暮らしている。そんな環境の中、ゴンザレスは、幼少の頃から絵を描いたり、読書をしたり、民族音楽に囲まれて育った。


そんな男が東京の芸術的な側面に興味を示さないわけがない。大家の息子であるアラキ(荒木孝一郎)に週末の予定がないことが判るや否や、上野の森美術館に連れて行けと言い出した。



次の日曜日。アラキ荘を朝早く出る二人。アラキは、ゴンザレスが以前参加した交流会で貰った広告入りハットを拝借して、深々とかぶり、顔が見えないようにしている。まだちょっと恥ずかしいようだ。


駅まで歩く途中、ゴンザレスは、民家の壁に落書きをしている少年に気がついた。



「おい、こら、そこはだめ…! ちょっちょ何する?コイチロ!」



少年に声をかけようとするゴンザレスの腕をアラキが引っ張った。



「ノープロブレム。ゴンちゃん! あれは、フリードローイングウォールだよ。」


「Free Drawing Wall ?」



ゴンザレスは狐につままれたような顔をしている。



「誰でも自由に落書きして良いんだよ。一週間経ったら自動的に真っ白になるようになってるのさ。東京オリンピックのときに発表された㈱ISHIYAMADAが開発した新素材でできているんだよ!」



ゴンザレスの代わりにアラキが少年に声をかける。


「これは何の絵を描いているのかな?」


「これは、自家用飛行機だよ。今はまだレンタプレインしかないけれど、あと20年くらいしたら、一家に一台自家用飛行機を持つ時代がくるんじゃないかなぁって。」


少年が遠い目をしながら答える。


「へー、凄いね。キミはどうやってそんなことを思いついたの?」


「この前、友達と一緒に行った東京近代美術館でダビンチの絵を見て思いついたんだよ。いろんなものを発明できたら凄いと思うけど、僕は数学が苦手で絵を描くことが得意だから…この絵を見た人がやる気になって夢を実現してくれるかも知れないでしょ?」



「ブラボー!すばらっしい。コイチロ!僕らも近代美術館に行くよ!」



ここ数か月でゴンザレスの行動パターンをしっかりと把握しているアラキは、突然、行き先が変わっても気にしない。二つ返事でゴンザレスの意向に従った。



東京近代美術館に着くとゴンザレスがそわそわしている。



「どうしたの?ゴンちゃん!」


「チケット売り場があるね。さっきの子は、無料だって言ってたのに…」



「ああ、高校生以下は無料なんだよ。感性が豊かなうちにたくさんの芸術作品に触れた方が良いからっていう東京都の方針でね。僕ら大人は800円だよ。はい、お釣りの200円!」



先にお釣りを渡すことで、“ここはおごらないよ”というアラキの意思表示だ。



ゴンザレスは、渋々と財布を開いて千円札を一枚取り出すと、それが確かに一枚であることを入念に確認してからアラキに渡した。



【解説】

202X年の東京は、このように、芸術が人々の生活の一部となっている都市が実現している。



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