(この内容は、東京JC次世代の東京創造会議にて作成した提言書からの抜粋です。詳細はこちら )
Wed, 17 May 202Y 20:47:03 -0700 (PDT)
To:Kate@tongania.com
From:G-O-N@tongania.com
Subject:アラキ荘は「国際都市・東京」の縮図
ケイト、そう言えば言ってなかったね。
僕がなぜアラキ荘に住むことになったかっていうことを。
実は、僕が日本に来て一週間経とうとしていた頃、滞在していたウィークリーマンションから、自分のアイデアを胸に、ある企業に向かっている途中、なにやらモクモクと凄い煙がたっているのを目撃したんだ。
それで、どうしようとは思ったけど、生垣の外から庭を覗き込んだら、小さな子供が泣いていて、かたや今にも母屋のアパートに迫りそうなすごい勢いの炎が、犬小屋を包んでいた。
誰かに伝えなきゃと母屋の玄関ドアを開け、叫ぼうと思ったんだけど、火事ってなんて言ったらいいかわからない…。
そんな時に玄関まで出てきたのが、アラキだった。
彼は、僕と同じくらいの年齢の男性で、後で分かったけど、このアパート、つまりアラキ荘の大家さんの息子だったんだ。
「メイ アイ ヘルプ ユー?」
と言われ、火事をなんていっていいのかわからず…
「Fire!Fire!」
と身振り手振りで表したら、その瞬間にアラキの顔色が変わったよ。
アラキが「カジだぁ~」と叫ぶと、あっという間にアパートの住民がバケツや消火器を持って勢揃いしたんだ。あの時は慌てていて気付かなかったけど、住民が皆すぐにバケツや消火器を用意できるなんてすごくないかい。これも後で聞いたんだけど、いつもアパートの住民全員で訓練をしていたんだって。
皆の協力で、犬小屋のボヤはあっという間に消し止められ、大事には至らなかったんだけど、アラキは、火事を教えた僕を恩人と言って、このアパートの中にある自室に招待してくれ、晩御飯をご馳走してくれたんだ。
楽しかったなぁ~。結局その夜は、僕が大好きな黒澤映画のことや忍者の話で盛り上がり一夜を語り明かしてしまったよ。
さっき言ったように、アラキはそのアパートの大家さんの息子で、正確な名前は「荒木孝一郎」だ。この建物の名前“アラキ荘”が、彼の一族の苗字に由来することは、言わなくてもわかるよね。
アラキから、アラキ荘は外国人の学生さんや外国からのインターンシップの人も受入れていると聞いたときは、もしかしてこれは運命か、と思ったよ。
元々、大のスポーツ好きのアラキが、数年前の東京オリンピックの時、間近でオリンピック選手と交流したいと思って、アラキ荘を選手村として使って貰える様に東京都にお願いしたんだ。実際、ある国の柔道の選手が滞在したらしいんだよ。それ以降も東京都から外国人学生などを入居者として紹介して貰える様になったんだって。
僕が住むところを探していると伝えたら、恩人ということで格安で住ませて貰えることになったんだ。
これでお兄ちゃんもオリンピック選手の仲間入りだ!
東京に来たら、アラキ、いや「コイチロ」(孝一郎)のことを紹介するよ。
夏休みにでもお金を貯めて遊びにおいで。
では、おやすみ。
【解説】
202X年の東京は、このように、世界中の人々が訪れたくなり、生活する外国人が自由に暮らすことのできる真の国際都市【40頁】になっている。