ひな祭りは女の子の日、
だからおだいりさまとおひなさまを飾って
自分のお祝いをするんだ
そう幼い娘は朝から楽しみにしていました。
一昨日から狙っていた
ひな人形飾りのアイスクリームセットを買うことが
彼女の今日の一番の楽しみでした。
お店に予約の電話だけ入れて
5種類のアイスクリームは
娘がお店に着いてから選ぶと伝え
保育園からピックアップし
ひな祭りの歌を歌う娘を自転車の後ろに乗せ
お店に向かう途中、アイスクリーム屋の店長から電話が入りました。
「大変申し訳ありません。ミニーのおひなさまのチョコレートが割れ、しかも最後のひとつでした」
あと、1分で着くところ、ウキウキとスキップをする娘には
伝えられないままお店に到着し、
店長と2人で事情を伝えることにしました。
すると娘はこう言いました。
「いちばんすきなのは、ミッキーだからだいじょうぶです」
嘘でした、娘はミニーが大好きでお姫様が大好きで
それでも5歳なりに、店長の申し訳なさそうな声と表情に気付き
いつも強がる彼女らしい「べつに大丈夫」をしっかりと言葉にしたのでした。
店長は、最善の配慮をし、おひなさまの代わりにハートのチョコを乗せ
安くまでしてくれて、幼ない娘に対して
ひとりのお客様として最後まで接して、深々と頭を下げて
彼女が選んだ5種類のアイスクリームを自ら飾りつけ
梱包すると彼女の元にやって来て手渡ししたのでした。
帰り道に娘が私に伝えたのはこうでした。
「だいじょうぶ、だってほいくえんでおだいりさまとおひなさまをじぶんでつくったから、かざればいいんだもん」
この子は、帰って来た父親にその出来事を言わず
嬉しそうにアイスクリームを見せ、ミッキーのおだいりさまが飾られた
アイスクリームを自分用に選んで食べていました。
誰も悪くないし
二人とも優しかった。
彼女の人生の冒頭で、彼女自身が他者に見せた優しさに
母は感謝がやまないのでした。
