⇒前回の話
翔子さんと下條さん、なんだかいい感じだわ。
莉多子はにやっと微笑んだ。
「事件の関係者は全員揃っているのかな。一人ずつ、事情聴取をさせていただきたいのだが」
川上の言葉に莉多子はハッとした。
「そういえば、加山さんが見当たらないわ」
M田は玄関のドアを指さした。
「さっき、加山さんが出ていくのを見かけましたよ。なんだかひどく慌てた様子で・・・」
「加山も疑惑の多いグレーな人物だから、警察が来ると知って逃げ出したんでしょうね・・・」
翔子がため息交じりにつぶやいた。
事情聴取を終えた莉多子とM田が疲れた様子でいると
翔子が声をかけた。
「二人ともお疲れ様です。ここからは警察の仕事ですので、今日は帰っていただいて大丈夫です。今後、捜査にご協力いただくことがあるかもしれません」
「ええ。今日は失礼させて頂くわ。翔子さん、これから大変だと思うけど頑張ってね!」
「ありがとうございます。またご連絡します」
莉多子、M田、いいともの3人で山を下りた。
「私の車はあそこに停めています。カモさんも一緒に乗っていきますか?」
いいともの提案に、M田は首を振った。
「いえ、私は大丈夫です。この周辺でちか子さんを捜索してから帰りたいと思っています」
「そう・・・。カモさんもムリしないでね」
「私は大丈夫です。二人ともお気を付けてお帰りください」
「カモさんを合宿にお誘いしたこと、とても反省しているわ。ごめんなさい」
「いえ、ちか子さんの正体がわかったのですから、莉多子さんには感謝しています」
M田と別れて、車に乗り込んだ莉多子は深いため息をついた。
「カモさん、まだちか子さんに未練があるようね・・・」
「信じていた女性に裏切られたんだ。今はそっとしておいてあげよう」
「そうね。ともちゃんは今回の事件のことどう思う?」
「黒幕がいるのは間違いないだろうけど、直接手を下したわけではないから、捜査は難航するだろうな」
「黒幕って一体誰かしら?」
「リタちゃんは誰かに恨みを買った覚えはない?」
「えっ、私?」
「だって、リタちゃんも狙われたんだろ。リタちゃんはすごい強運の持ち主だから助かったけど、真犯人の本当の狙いはリタちゃんだった可能性もあるよ」
「うーーん。心当たりねぇ。結婚相談所をやっているから、婚活が上手くいかない会員さんから恨まれているかもしれないけど・・・」
「リタちゃんは言動が天真爛漫すぎて、ナチュラルに人をイラつかせることがあるから、気をつけないといけないよ」
「えっ、そうなの・・・・!? もしかして、ともちゃんもイラっとすることある?」
「いや、僕はもう慣れているから平気だよ」
車を運転するいいともの横顔を見つけながら、莉多子はこの人と結婚して本当に良かったと思った。
―数日後。
莉多子の携帯に、翔子から電話がかかってきた。
「あら翔子さん。事件の捜査は進んでいる?」
「ええ。いろいろわかってきたことがあって。ところで莉多子さん、バリカタ子ってご存知ですか?」
「バリカタコ・・・。あぁ、私のブログを荒らしていた人よ。本名は安智利恵子さんというの。
先日、私のカウンセリングを受けてくれて、確か今はファイバーエージェントに勤務しているはずよ。
詳しくは私のブログに書いてあるから読んでみて」
「えっ、バリカタ子が安智利恵子なんですか?」
驚きの声を上げる翔子。
「ええ。でも、利恵子さんがどうかしたの?」
「貴子のスマホを調べていたところ、SNSでバリカタ子というユーザーとやり取りしている形跡があったんです。メッセージ内容はすべて削除されていたため、現在復元作業をしています。あと、山小屋の所有者が安智利恵子であることが判明しました。もともと親の不動産で、親が亡くなった時に相続したようです」
「えっ、そうなの・・・?じゃあ、もしかして私に山小屋のDMを送ってきたのは・・・?」
「これから調べてみますが、安智利恵子の可能性が高いですね!」
まさかの利恵子が黒幕!?
莉多子はへなへなと膝から崩れ落ちた。
