⇒前回の話
翌朝、事件の一報を受けて警察官がやってきた。
「私の上司の川上さんと、部下の下條さんです」
翔子が莉多子に二人を紹介する。
川上はいかつい顔をした中年男性で、
下條は30代前半くらいの爽やかな好青年だった。
「翔子クンは結婚詐欺師の潜入捜査をしていたはずだが、一体どうなっているんだ!?なぜ連続殺人事件が起こったのか、説明したまえ!」
川上はかなりご立腹の様子だ。
「申し訳ございません!」
翔子が深々と頭を下げた。
「川上さん、翔子先輩はとても優秀な警察官です。先輩を責めないでください!」
すかさず、下條が翔子をかばった。
一瞬、翔子の頬がポッと赤くなったのを莉多子は見逃さなかった。
「今回の事件は翔子さんの潜入捜査とは全く無関係です。私が事情をお話します」
莉多子が事件の状況を語り始めた。
「なるほど。双子の妹の貴子が恨みを抱いていたハブと姉の和歌子を殺害。死んだのは貴子だと見せかけて、和歌子のフリをしていた。その後、貴子の正体に気づいたクス男を殺害し、莉多子さんも殺害しようと企てた。そして、最終的に追い詰められて自殺したということですね」
「ええ。ただ、私、ちょっと腑に落ちない点があるんです」
「腑に落ちない点とは?」
「婚活かるたです。なぜ、事件の被害者は全員かるたの札を持っていたのでしょう?」
「事件を攪乱させるための貴子の作戦ではないですか?」
翔子が口を挟む。
「いえ、翔子さん。貴子さんはね、そういうことを思いつくタイプではないのよ。もっと直感的で、思い込みが激しい性格なの。私が貴子さんに婚活アドバイスをした時、フェミニンなワンピースを着るように勧めたら、その後はずっと同じワンピースしか着なくなってしまったの。一度こうだと思った道を、まっすぐ突き進んでいく、とても単純な性格で、複雑な計画が立てられる人ではないのよ」
「なるほど!そういうタイプは洗脳されやすいのです。もしかすると、事件を影で操っていた黒幕がいるのかもしれないですね!」
突如現れた中年男性が、したり顔で言い放った。
「誰だキミは!?事件の関係者か?」
川上が男を睨みつけた。
「いえ、合宿にこの人は参加していなかったわ。あなたは一体誰です?」
翔子も怪訝な顔つきになった。
「失礼しました。申し遅れましたが、私、こういう者です」
男は警察官3人に名刺を配り始めた。
名刺には、こう書かれてあった。
ジャーナリスト
伊井 友
「ジャーナリスト、いいとも!?」
川上が名刺を読み上げる。
「いいともさん!僕、知ってますよ!たまにTVに出てますよね。ジャーナリストでありながら名探偵でもある、あのいいともさんですよね?」
下條が興奮して叫んだ。
「ジャーナリストで名探偵といえば、浅見光彦だろう!いいともなんて知らん!」
納得のいかない表情の川上。
「私は浅見光彦さんみたいに、親族に警視庁のお偉いさんがいるわけではないです。ただのしがないフリージャーナリストです」
「いいともさん、私も名前を聞いたことがあるわ。でも、なぜあなたがここにいるんです。事件を感知する特殊な能力があるんですか?」
翔子が困惑気味に尋ねた。
「あ、ごめんなさい。私が彼を呼んだんです。この人、私の夫なんです」
莉多子が慌ててフォローした。
「エーッ!莉多子さんの旦那さん!?」
普段はクールな翔子も、驚きを隠せない様子だ。
「ええ。夫に迎えに来てもらおうと思って。私は普段、夫に送り迎えをしてもらっているの」
その時、M田が慌ててやって来た。
「みなさん、大変です!ちか子さんがどこにもいません!」
