の続きです
毎日報道しています。
もっと病床数はあると言ってる割になぜ簡単に増やせないのか?
このような疑問を持たれるかと思います。
②【環境整備】③【第3波まで何をしていたか】でお話したことも原因となりますが、それら以外での原因についても挙げてみます。
◆海外とのちがい
・欧米と日本では、病院数自体は人口にも関わらず日本の方が病院数は多いです。しかし、欧米は公的病院の数が大半。そのため、行政が要請すれば指示を受け入れる率は高い。それに比べ、日本は数は多くとも公的病院は少なく(2割弱)、大半が民間病院です。
・欧米では日本に比べて病院数自体が少ないものの、公的病院が多く、その分、1件あたりの病院に機能が集約されており設備も整っています。ICUの保有率も日本より高いです。日本にICUは限られた病院にしかありません。
欧米は、「救急から普通の病床へ入院、急変すれば同じ病院のICUで診れる」と1つの院内ですべて責任を持てることが多いですが、日本だと「軽症だけしか診れない病院」「中等症までしか診れない病院」「重症を診れる病院」と細分化されています(通常診療からこういう体制)。
そのため、軽症だからと入院を引き受けても、悪化された場合は重症者を診れる病院に搬送する必要があるのです。
しかし、受け入れ要請をしても、重症を診れる病院も余裕がなく引き受けてもらえない、という事態も実際に発生しています。(重症病床が100%埋まることもありますし、自院の中等症患者の悪化に備えて重症病床を確保しておきたいため、あえて100%稼働していなくとも外からの要請を拒否することもあります)
そのため「重症化した時まで責任が持てないのはわかっている。軽症しか診られないうちの病院では、万が一が起きた場合は患者の命を守れない」という責任を背負いきれず、軽症者であってもコロナ患者は受け入れない、と判断する病院もいらっしゃいます。
・患者の治療はベッドがあるだけではできず、人員も必要です。欧米では集中治療専門医の人数が多いですが、日本は少ない。即ち、重症患者を診れる医者も少ないのです。(個人的な感想ですが、日本においてのコロナは小児は殆んどかからず、かかっても軽症で済むというのは不幸中の幸いだったのではと思います。なぜなら小児の重症例になると、さらに診れる医者も病院も少ないですから…)
・欧米は完全個室化が進んでいます。元から個室であれば、少なくともゾーニングなどは殆んど考えなくて済みます。そのため、特別な感染対策整備せずとも、コロナ用として確保することが可能です。
日本は個室化後進国であり、大部屋が大半を占めています。
・海外と違い病院数が多いため、日本では気軽に病院にいつでもかかれますし、すぐに検査治療ができる非常に恵まれた環境です。海外ではこうはいきません。総合病院にかかるだけで何ヵ月も待ったりするものです。それぞれの国の医療のあり方にはメリットデメリットがあり、今回の非常事態下ではこの日本の医療環境が裏目に出てしまったのかもしれません。
◆病床の考え方について
・例えばですが、80床存在しているとしても、まるまる80床を綺麗に使えるわけではありません。
前提として「コロナ陽性確定患者」「コロナ疑い患者」「一般患者」を同じ部屋にすることができないのです。
病室というのは、寝食をともにする所ですし、痰の吸引にてエアロゾルの発生、排泄や嘔吐もする場所のため、一般的なオフィスや教室よりも感染しやすい環境です。
ここで問題となるのが、上記に記載した「日本は大部屋が主流」です。
80床が4人/部屋×20部屋で構成されていた場合、一般患者を1人でも入院させた時点で、少なくとも1部屋(=4人分)はコロナ用にすることができなくなります。
・例での数字になりますが、「10床ほどコロナ用にしよう」と考えても、10床そのままコロナ用にできるわけではありません。実際としては、10床をコロナ用にしようとしたら、ゾーニングや人員の都合で5床は休止とならざるを得ません。結果として、10床に対して、15床ほど一般病床を潰さなければいけないのです。
・テレビ等では「○○床、日本にはまだ存在している!それをコロナ用に回せばいい!」と報道しますが、一般的にはコロナ患者よりもコロナ以外の患者の方が多く入院するので、その数も確保せねばなりません。これを抜きに考えられがちです。通常の病床も一部をコロナ病床に変えられた皺寄せを受け、こちらも足りていません。
元々、病院というのは冬に病気が増えて満床になる傾向があるので、季節的な苦しさも現在はあります。
・病床自体があることは確かでも、コロナを診ることが可能な科のベッドとは限りません。眼科や皮膚科、整形外科といった科もあの数に含まれており、実際に呼吸器内科や集中治療科といった「肺炎の治療が適切にできる、慣れている」科のベッド数はごく一部です。
・軽症患者や重症患者がよくとりあげられ、病床の話をされがちですが、実際には間の中等症患者も多くいます。中等症もICUに入るまでではなくとも、入院治療は必要です。
「コロナが重症化したり亡くなるのはお年寄りだけでしょう?」というイメージも世間にはあるかもしれませんが、働く世代の5-60代の方も悪化されてますので、この年齢層が重症化するのは一般的な風邪とはやはり少々異なります。
指定感染症の類型を2類から5類に下げても、やはりこれらのコロナ用病床確保は必要ですし、その分一般病床も減ってしまいます。
・「軽症者無症状者まで入院させているから医療崩壊するんだ」という意見もありますが、少なくとも当院においては(たぶんパンクしている県はどこもそうだと思いますが)、入院が必要な人を受け入れて、自宅療養できる方はそうしていただいています。自分たちがかかった場合も同様なので、私の周りでもかかった職員は何人かいますが、誰も入院していません。
第2波までは軽症者も受け入れる余力はありましたが、第3波においてはなくなりました。ニュースにもなっている通り、急激に進行することもあるので、「入院の必要はなさそう」の見極めは難しく……残念ながら、振り分け当時は優先順位的に入院できなかった患者さんからご自宅で亡くなる残念な事例が出てしまっているのでしょう。
◆民間病院(もしくは小規模病院)について
現在、「民間病院は殆んどコロナ受入をしていない」「受け入れ拒否した病院は罰金を」などと叩かれがちですが、民間病院(に関わらず小規模病院)で受入が進まないことにも理由があります。
ちなみに、民間病院でも受け入れられるキャパがある病院さんはもう受け入れているので、そうでない病院さんについてのお話です。
・民間病院は小規模な病院が多く、建物構造的にも一般患者とコロナ患者の動線を分けることが難しいと思われます。(出入口やエレベーターもコロナ用とそうでない物に分けます)
動線を分けられない状態で、コロナ患者を受け入れると院内感染が起き、他の病気で入院している弱い患者の命が危険です。
クラスターが起き、死者が大量に出てしまった場合はマスコミに晒されその後の経営に大打撃です。
・看護師等の人員も少ない傾向にあり、コロナにかかりながらも認知症等で徘徊してしまうご老人を管理すること等も難しいです。
・元々の規模があまり大きくなければ、所有している医療機器の台数も少ないです。レントゲンやCTも、大規模病院なら複数所有しており使い分けが可能ですが、それが難しいです。
・結局、コロナのような流行り病を診るためには、治療できる人員確保のみならず「感染対策が適切にできる」ことが重要になります。これは設備備品もそうですし、感染対策に強い専門家が院内にいるかどうかも関わってきます。小規模病院には必ずしも専門家がいるわけではありません。
・上記の理由により、大規模病院以上に「通常診療をとるか、コロナ診療に絞るか」の選択を迫られる傾向があるかもしれません。
補助金を使い、受け入れ体制を整えるという手もありますが、先述したとおり、補助金を得るには「行政が認めたコロナ受入病院」になる必要があります。その条件を満たす事自体が、そもそも小規模病院には厳しかったりします。
申請自体、環境整備自体が激務(病院や整備する量にもよりますが、通常の業務量×数年分にはなるのでは)となるので、事務方の人員が少ない中では諦める病院もあることかと思います。
さらにクラスターが発生した場合は、マスコミ対応などもせねばならないので、仕事も増えます。
・テレビではしきりに「コロナ病床を増やそう」と言われますが、目立たなくても日々の通常診療もとても大切です。コロナ関係なく悪化するリスクがある病気(高血圧や糖尿病、喘息、がん、何でもですね)を、適切な治療をし、悪くならないよう予防してくださっているお陰で、基幹病院はコロナ治療もできてるわけです。
・上記により、病床はあるのにコロナを受け入れしない病院を、一方的に責めることはできませんし、ましてや罰を与えれば済む、という簡単な話でもありません。やりようはあるかもしれませんが、個々の病院だけでは限界があります。
現在、「民間病院は殆んどコロナ受入をしていない」「受け入れ拒否した病院は罰金を」などと叩かれがちですが、民間病院(に関わらず小規模病院)で受入が進まないことにも理由があります。
ちなみに、民間病院でも受け入れられるキャパがある病院さんはもう受け入れているので、そうでない病院さんについてのお話です。
・民間病院は小規模な病院が多く、建物構造的にも一般患者とコロナ患者の動線を分けることが難しいと思われます。(出入口やエレベーターもコロナ用とそうでない物に分けます)
動線を分けられない状態で、コロナ患者を受け入れると院内感染が起き、他の病気で入院している弱い患者の命が危険です。
クラスターが起き、死者が大量に出てしまった場合はマスコミに晒されその後の経営に大打撃です。
・看護師等の人員も少ない傾向にあり、コロナにかかりながらも認知症等で徘徊してしまうご老人を管理すること等も難しいです。
・元々の規模があまり大きくなければ、所有している医療機器の台数も少ないです。レントゲンやCTも、大規模病院なら複数所有しており使い分けが可能ですが、それが難しいです。
・結局、コロナのような流行り病を診るためには、治療できる人員確保のみならず「感染対策が適切にできる」ことが重要になります。これは設備備品もそうですし、感染対策に強い専門家が院内にいるかどうかも関わってきます。小規模病院には必ずしも専門家がいるわけではありません。
・上記の理由により、大規模病院以上に「通常診療をとるか、コロナ診療に絞るか」の選択を迫られる傾向があるかもしれません。
補助金を使い、受け入れ体制を整えるという手もありますが、先述したとおり、補助金を得るには「行政が認めたコロナ受入病院」になる必要があります。その条件を満たす事自体が、そもそも小規模病院には厳しかったりします。
申請自体、環境整備自体が激務(病院や整備する量にもよりますが、通常の業務量×数年分にはなるのでは)となるので、事務方の人員が少ない中では諦める病院もあることかと思います。
さらにクラスターが発生した場合は、マスコミ対応などもせねばならないので、仕事も増えます。
・テレビではしきりに「コロナ病床を増やそう」と言われますが、目立たなくても日々の通常診療もとても大切です。コロナ関係なく悪化するリスクがある病気(高血圧や糖尿病、喘息、がん、何でもですね)を、適切な治療をし、悪くならないよう予防してくださっているお陰で、基幹病院はコロナ治療もできてるわけです。
・上記により、病床はあるのにコロナを受け入れしない病院を、一方的に責めることはできませんし、ましてや罰を与えれば済む、という簡単な話でもありません。やりようはあるかもしれませんが、個々の病院だけでは限界があります。
工夫のしようがあっても、それらをまとめる仕組みと、強力なリーダーシップが必要です。
