※人物団体名などは
 仮名とさせて頂きます

登場人物

杜宮宣洋 後に藤井博子(私)の夫になる人物
関根奈緒子 友人
小林真由子 友人
小池未知子 友人
塚本亮  アルバイト仲間
高橋   ホワイトガーデンのオーナー
三山敏夫 ホワイトガーデンの料理人
本田宗一 アルバイト仲間
藤井博子 この物語の語り手(私)





私達は驚きのあまり弾かれた様に顔を見合わせました

奈緒子が信じられないという様な表情で

「え?もしかして杜宮先輩?」

「なんで声が漏れてるの?」

と壁に向かって話しかけました
杜宮はさも当たり前といった口調で

「壁が薄いからな」

と答えたのです

確かによく見るといかにも薄そうな壁に
白いパネルが貼っているだけという感じでした

奈緒子は途端に満面の笑みになり

「塚本先輩もいるの?!」

と叫ぶと

「おお、湯加減はどうだぁ」

塚本の間伸びした声が聞こえました

それに対して

「最高でーす」

と未知子が笑顔で答えました

奈緒子は悪戯な笑みを浮かべながら

「杜宮先輩、私達の裸想像してるでしょう!」

「やだぁ、えっちぃ!」

と煽り始めました

「何でお前達の裸なんか想像するんだよ」

と鼻で笑う様な声で杜宮が答えると

「嘘ばっかりー、むっつりスケベですかぁ」

と真由子まで言い出しました

杜宮は笑いを含みながら

「お前らいい加減にしろよな!」

「うらぁぁぁぁ!」

と叫ぶと浴槽部分の壁をどかどかと叩きだしました

あまりに強く叩くので薄い壁が
壊れてしまうのではないかと思った程でした

私達は皆きゃあきゃあと笑いながら
突然の出来事を楽しんでいました

私は笑いながら

「もうやめて、壊れる壊れる!」

と叫びました

「こんな壁壊れちまえばいいんだよ!」

と杜宮は更に激しく壁を叩き続けました
このとち狂った杜宮の行為のせいで
私達は本格的に笑いのスイッチが入り
息を切らせながら笑い続けました

暫くすると

「今日はこれ位で勘弁してやる」

息を荒げた杜宮が言いました

「しっかりあったまって寝ろよ」

「俺達はもうあがる」

と湯船から出る気配がして

「じゃあ、おやすみー」

そう塚本が言うと浴室の扉が閉まる音がしました

私達は異口同音で

「おやすみなさーい」

と叫びました

杜宮達がいなくなると
先程の乱痴気騒ぎが嘘の様に静まり返りました

奈緒子は勢いよく私達の方に体を向けると

「ね、杜宮先輩最高でしょ」

としたり顔で言いました

未知子は浴槽の縁に両手を添えながら

「そうだね、あんな面白い人だとは思わなかった」

と顔だけ奈緒子に向けました

「最初何かすかした感じだったけど違ってた」

真由子はのぼせてきたのか
顔を手で扇ぎながら答えました

「卒が無いタイプだと思ってたけど
         かなりやんちゃだね」

と私は杜宮が叩きつけた壁を見つめました

恐らく未知子や真由子や私の反応が
通常だと思われます

しかし奈緒子のずば抜けたコミュニティ力が
杜宮の本質を速やかに引き出したのでしょう

奈緒子は色々な意味で自分に正直で
物怖じする事も無く太陽の様な笑顔で
すんなりと人の懐に入れてしまう人でした

実際杜宮も最初は私達を

「君達」

と呼んでいましたが先程に至っては

「お前ら」

と劇的に距離感が近くなっていました

私も奈緒子のそんな所を真似したかったのですが
どうやらこの世の中には
「天性」というものが存在するらしく
私は私らしく生きるしかなかったのでした



続く