日本文学振興会@shinko_kai
第167回芥川龍之介賞の候補作は、以下の5作です。小砂川チト「家庭用安心坑夫」(群像6月号)鈴木涼美「ギフテッド」(文學界6月号)高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)年森瑛「N/A」(文學界5月号)山下紘加「あくてえ」(文藝夏季号)#芥川賞
2022年06月17日 05:00
今年もやってきましたこの季節!
今回も直木賞は時間的に厳しいので
芥川賞候補作だけ追いたいと思います。
今回は当てたいなぁ〜!
(当たらなくても楽しいけど)
鈴木涼美「ギフテッド」は
病で先が長くない母に
できるだけ寄り添おうとする
娘の「私」の心模様が描かれた物語です。
「私」の母は詩を書く人として
生活をしていましたが
そこまで大成せず、
病に倒れてしまいました。
東京の繁華街付近に住む「私」は
夜の仕事で生活していましたが
母の病が深刻化してからは
しばらく一緒に暮らしたり
寝る間を惜しんで日中お見舞いへ行ったりと
気を遣うようにしており、
容姿端麗だった母が
病でどんどん変わり果てていくことに
痛ましさを感じながら
付き添う日々を過ごします。
ある日、見るからに裕福そうな
身なりの老紳士が「私」の元を訪ね
お見舞いの品と共に、長らく続いた
母との後ろめたい関係性を暴露します。
夜の世界をそれなりに
知っていた「私」は
それほど驚かなかったけれど、
詩人として生きていこうとして
実際は老紳士からの援助で
生活が成り立っていた母の苦しさと
美貌が売り物になっていたもの悲しさ、
不都合な部分をひた隠しにしていた弱さが
改めて浮き彫りになり、
これまで母に対して
しまい込んでいた疑問と感情が
堰を切ったように溢れ出します・・。
「私」の心情とともに
綺麗な母の決して綺麗ではない現実、
現実に嫌気がさして
自ら命を絶った「私」の友人、
一方で現実を受け入れる友人、
「私」が母に大きな火傷の傷を
負わされた過去などが明らかになりますが
「私」の心中は
確実に死に近づいている母へ
何か言いたい気がしたけれど
もうどうでも良いような
そんな諦念を含んでいて、
昔住んでいた街並みや
火傷の痕を隠すために
刺繍を入れた過去を思い出したり
命を絶った友達が通っていた
ホストクラブへ行ってみたりして
母の「その時」が来るまで
どうにかやり過ごそうとするのです。
この物語を読みながら
なぜタイトルが「ギフテッド」なのか
ずっと疑問に感じていました。
ギフテッドという言葉は
産まれながらにして
たぐいまれな才能が備わった
子どものことを指すけれど
この物語にはそういう意味で
使われていないようで。
もっと、シンプルに
「与えられたもの」という意味で
「ギフテッド」という言葉が
使われているように感じました。
華やかな外見、
火傷の傷、
夜の世界の雰囲気、
綺麗ではない現実であっても
誇り高くあろうとする態度など。
「ギフテッド」は
母の死を目前にして
「私」が母に与えられたものを振り返り、
自分に与えられたものを
噛み締める物語だと思いました。
物語は
入院直前に母が書き残した
「ドア」という詩で
締めくくられますが
作中でドアの開け閉めのリズムに
執着していた「私」と
同じ感性で書かれた母の詩は、
母から与えられたものの強さを
象徴的に描いたのだと読みました。
この物語を読んで、わたし自身も
話し方や考え方が
自分の母に似ていると
友達から言われたことを思い出し、
母から与えられたものの
強さを痛感しながら
この物語を読みました。
話は少しそれますが
「与えられたもの」という言葉について
ずっと考えていて
思いついたことがあります。
世界中の子どもたちの誰もが
特別な才能なんてなくても
母から産まれ、与えられた存在で、
ひとり立ちするまでは
母(あるいは保護者)によって
生かされていて
きっとそのときに
生き様や考え方も
与えられていて
その後の人生も
与えられてきたものによって
生かされていて、
ということは
誰もが与えられたもので生きていて、
誰もが「ギフテッド」として
生きていると言えるのかもしれません。
与えられたもので
自分は生かされてきたのだと思うと
自分は与えられた運命に逆らえない…
と思うようなふさいだ気持ちと
与えられたギフトも自分の心持ち次第で
活かせる人生が送れるはず、
という両極端な気持ちになって
結局
与えられたものをどう使うか
という問題を一生抱えて
生きていくしかないんだろうな
という、
答えのない結論に辿り着きました。笑
でも、この物語からは
病院内での母娘の会話や
「ドア」という詩から
母娘のつながりが感じられて
温かい気持ちにもなりました。
「私」は決して豊かなものを
与えられたわけではない
なんなら「傷」を与えられた
かもしれないけれど
でも、母から与えられたものを
噛み締めることで、「私」は
母の温もりを感じたかったのだろうと
希望的に読みました。
与えられたもの、という言葉で
「ギフテッド」を解釈することが
良いのかはわかりませんが、
与えられたもの、という
言葉が強く残った作品でした。
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