こんにちは〜!
芥川賞・直木賞予想を思いっきり外して悔しかったので😂笑、今年は文芸誌チェックをまめにすることにしました!!!
純文学に触れる機会を増やして、読書力(?)を養いたいと思います。
 
 
今回手にとったのは河出書房新社の「文藝2021年春号」。
今回・前回の芥川賞受賞作家を生み出した素晴らしい文芸雑誌です。
文藝出身の作家さんは個人的にも好きな作家さんが多くて(山田詠美さん、綿矢りささん、若竹千佐子さんなど)今後も要注目の文芸誌だと思っています(前にも書いた気がします・・!)。
 
 
「文藝」は年4回発行なので一冊がボリューミーです。
春号をチェックしていて惹かれたのは巻頭掲載の児玉雨子「誰にも奪われたくない」でした。
 
 
児玉雨子さんは、ハロプロが好きな方なら誰もが知っている作詞家さんです。
モーニング娘。’20「LOVEペディア/人間関係No way way」
アンジュルム「46億年LOVE」
つばきファクトリー「今夜だけ浮かれたかった」
などの名曲を生み出した凄い方なのです!!!
(ハロプロ知らない方・興味のない方はスルーしてくださいませ〜笑)
 

 

 

 
そんな児玉さんが今回「文藝」にて初の小説を執筆されました。
「誰にも奪われたくない」は、副業で作曲活動をしている主人公の「わたし」が、楽曲提供をしたアイドル・真子と親密になる姿が描かれながら他者との距離感に煩悶する物語です。
 
 
真子は「わたし」が提供した曲がいちばん好きだと言い、なめらかにわたしとの連絡先を交換します。
彼女のふるまいの自然さに、常に集団に馴染めず冷めた目で見てしまう「わたし」はどうしても自分をかえりみないではいられません。
 
 
「わたし」の本業は銀行員で、事務職から営業職へ異動したばかりで周りから干渉されることの多い生活をしていました。
同僚から資格をとるべきだとアドバイスをされたり、先輩社員から営業トークを教わったり。
正しい話であるはずなのに、「わたし」はうっとうしさや罪悪感が先立ち、干渉されると無機的な反応でそれをやりすごすことが身についていたのでした。
 
 
そんな日常で「わたし」が唯一「わたし」らしくあれるのが、真子と接しているときでした。
真子といるときだけは「奪われている」という感覚を味わうことがなく、自然体でいられる。
そう気づいてから少しずつ距離が縮まっていくのですが、一方で真子の心の内には深く暗いものが潜み、それが彼女自身を蝕んでいたのでした……。
 
 
「どうしてもたったひとりだけで存在を完結できないという事実が幻痛のように噴き出す。両親から細胞や金銭や欲望や若さを盗み続けながら生まれ、育ち、世界から電流と、文字と、食事のための生命を、他者からは時間を奪わなくては自分の生命を維持できない。(中略)誰かが発見したスケール中の音を繋いで決まった和音を当てているように、わたしは他者から分けてもらったり奪ったりしたものの組み合わせであり、それらの総体でしかない。」(43頁)
 
 
引用は作中で特に印象的だった箇所です。
 
 
人間は社会的な生き物で、ひとりでは生きていけない、という考えが染み付いている自分にとって、生命が「奪い合う」ものだという考えがとても新鮮で、そう考えればそうかもしれないけれど、考えたこともなかった……という驚きと感慨深さが入り混じったような不思議な感覚に浸りました。
 
 
作中の「わたし」は「奪われている」感覚を鋭敏に感じ取り、必死に「わたし」を保とうとします。
だけど他者は容赦なく「わたし」に干渉してきて、さらにこの干渉は圧倒的な“正しさ”で包まれていて、それを簡単に振り払うことはできません。
 
 
やり場のない煩悶を抱え切れなくなった「わたし」の本音を素直に受け止めてくれたのは真子だったのですが、真子も彼女なりの煩悶を抱えて生きていることを知り、物語は幕を閉じます。
本作は「ひとりで生きられない」ということは「痛み苦しみ」を伴うことでもあるのだ、ということを改めて突きつけ、わたしの心にも鈍い痛みを残しました。
 
 
昨日から夫が出張でしばらく不在なのですが、これまでの不安に寂しさが加わってさらに情緒不安定になってしまって、半年ぶりに思いっきり泣きました……


ありがたいことに身体の不調はほとんどなくて、そんな恵まれた妊婦のくせに数日の孤独でこんなにメンタルが落ちちゃって自分でもどうしたんだろう〜という感じだったので、ひとりを保ちたい「わたし」の心情描写や「どうしてわたしにつきまとうの?」という台詞がグサっときました。。
 
 
そんなメンタルだったので、わたしは作中の「わたし」につい干渉してしまう同僚に共感しきりでしたが、「わたし」の気持ちもわからないではないのです。
誰かとつながりたい、誰かに必要とされたい、と思う人もいれば、「わたし」を奪われたくない、と思う人がいるのもまったく不自然なことではないですもんね……。
 
 
ほどよい距離感、というものがどれだけ貴重なものであるのかを噛み締めた作品でした。
 
 
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