そういえば、
最近「許せない!」と思うことが
ほとんどなくなったなぁと
この物語を読みながら思いました。


30代になったからなんでしょうか・・
20代前半も後半もいろんなことに「許せない!」とカッカしていた記憶がありますが、
ここ最近、そういう「カッカ」がほとんどない。
情緒が落ち着いたってことなんですかねぇ。


自分で言うのもなんですが
「慣れた」わけでも「鈍くなった」わけでもないんですよ。
なんというか、すっと一歩引くことができるようになり、その問題に真正面からぶつからなくなった、という感じなのです。


芥川賞候補作の
遠野遥「破局」(文藝2020年夏号)は
昔の自分が抱えていたたくさんの「許せない」という感情を思い出させる作品でした。


この物語の主人公は
日吉と三田にキャンパスを構える
某有名私大の学生・陽介。


彼は理性的で賢く、
ラグビー部は引退したものの
自分を追い込むトレーニングを欠かさず行い
コーチとして部員のトレーニングも任されている
忍耐力と責任感も持ち合わせた青年でした。


就職活動は公務員試験一本に絞って着実に試験勉強をこなし、
息抜きに同い年で政治家志望の彼女・麻衣子とデートをするという、
あらゆる方面に隙のない、有意義で充実した学生生活を送っていたのでした。


この物語は彼の一人称視点で進みますが、
彼の思考や言動のはしばしに、少し「違和感」を覚えます。


公務員を目指しひたむきに努力を続けてきたせいか
彼は「マナー」や「社会のルール」に厳しく、
公務員の不祥事やマナーの悪いおじさんの振る舞いに嫌悪感をあらわにし、
女性へのエスコートも細部まで気を配ります。


一見、正義感の強いジェントルマンのように見えますが、
その振る舞いに少しの打算、あざとさのようなものが見え隠れするのです。


彼の思考は、つねに冷静で、
自分を客観視した考え方をしています。


ですが、それは裏を返すと
マナーやルールへの「逸脱」を過剰に恐れているようにも感じられ、
自分の弱さや失敗を「許さない」という頑なな姿勢を感じるのです。


失敗を受け入れない頑なさは
他人の弱さの断罪と自分の弱さの見て見ぬふりにつながります。


たぶん、彼は自分のことしか見ていないのです。
自分のなかにある「正義」だけを見ていようとする態度が
彼の言動やふるまいにあらわれ、「違和感」を覚えたのだと思います。


そのため彼が自分の「弱さ」に直面したとき、
彼の思考は鈍くなってしまいます。


政治活動に忙しい麻衣子と会う回数が減り
自分の欲求をもてあました彼は
同級生のお笑いライブで知り合った女子に手を出します。


女子の名は灯(あかり)と言い、
彼の巧みな「打算」で彼らは付き合うことになりますが、
灯が彼を信頼し自己開示していくのに対し、
彼は自分のなかにある「正義」を守るのに精一杯になるのです。


灯との関係が続きながらも
元彼女の麻衣子からも連絡があり、
麻衣子からも関係を迫られるようになります。


失敗を「許せない」彼は、自分の弱さと向き合いきれず、やがて関係はいびつになり、タイトル通りの「破局」を迎えてしまうのです・・。


ラストの展開は、主人公の「許せない」という感情が洪水のようにあふれ出したような、爆発的な力を感じました。


物語を読み終わり、
彼は最後まで「失敗」におびえていたのかもしれない、と改めて感じました。


この物語で印象に残ったのは
暴力的な描写が物語の各所に差し挟まれること。


この描写は、彼の「許せない」という感情とシンクロしているように感じます。


麻衣子が彼に幼少期に受けた暴力的なエピソードを話す場面があるのですが、
その内容がゾッとするもので、本当におそろしくて手が震えました…。


しかし、その話を聞いた彼は、麻衣子から投げられた「重い話題」をどうすることもできません。


その話題はうやむやのままになってしまうのですが、浜辺に打ち捨てられたようになった物語を回収しないところも、彼の「弱さ」のひとつだと感じました。


もしかすると、「許せない」という感情は
人間の「弱さ」のひとつなのかもしれません。


冒頭で「許せない」と思わなくなった自分が強くなったみたいな言い方になってしまうのですが…。


とにかく、最近感情を爆発させる機会がめっきり減ってしまったので、
ひさびさに感情の爆発に触れて、リフレッシュしたような気分になった作品でした。


この物語は、もっといろんな読み方がありそう。
いろんな方の感想が気になります。


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