「時間」の力って、凄いですよね。
あの時は「絶対許せない!!無理!!」と思っていたことが、
時間が経てばすんなり受け入れられちゃう。
あの時は気まずくてうまく話せなかったけれど、
時間が経ったことで普通に話せるようになる。
昔はできなかったことが、時を経ることでできるようになる。
その当時思っていたことは「絶対揺らがない」と強く思っていたはずなのに、時間が経つとそうでもなくなる…
時間が経ちさえすれば何でもアリ!?ってぐらい、人が大きく変わる可能性を秘めているのが「時間」というやつなのです。
だからこそ、知人に久しぶりに再会したときに、昔抱いてた印象と全然違う…!という現象が起きるのですが、
それって「再会」とは言わなくて、その人と「出会いなおし」たんだ、と言い換えた方がしっくりくるな、と森絵都さんの『出会いなおし』を読んで思いました。
本書は「出会いなおし」をテーマにした6編の短編小説集。
表題作ほか、それぞれ異なる視点で「出会いなおし」を描き、人と人との出会い、別れ、そして再会の味わい深さをていねいに描いています。
以下、それぞれの簡単なあらすじです。
「出会いなおし」
イラストレーターの「私」と編集者の「ナリキヨさん」とは、原稿を送り合うだけのビジネスパートナーだけれど、少し身近な距離にいた……気がしていた。
7年の時を経て「私」はナリキヨさんと再会するが、ナリキヨさんの変わりように再会というよりも「出会いなおし」ていると感じ……。
「カブとセロリの塩昆布サラダ」
主婦として30年以上ずっと手作りのごはんを貫いてきた清美が、ある日デパ地下で総菜を買うことを決意する。
手に取ったのは「カブとセロリの塩昆布サラダ」。組み合わせの妙に楽しみを覚える清美だが、サラダに入っていたのはダイコン。
清美はデパートにクレームを入れるが従業員は取り合ってくれず、主婦としてのプライドが許さない清美は反抗し続けるのだが……。
「ママ」
あなたが「ママ」と呼ぶ人の思い出に惹かれて結婚したのに……。
「私」は夫が話す「ママ」との出来事に思わぬ「裏切り」があったことを知り、息子を抱いて家を飛び出す。
「私」は許せない気持ちでいっぱいになるのだが、家出のさなかに「ママ」をめぐるちょっとした奇跡が起こり…。
「むすびめ」
15年ぶりに小学校の同窓会に参加することにした「私」。
「私」にはクラスメイトに後ろめたい思いをずっと抱え、参加することができずにいたのだが、ある人に思いを伝えるべく意を決して同窓会へ向かう……。
「テールランプ」
どうか、どうか幸せであってほしい……。
時代も、環境も、立場も超えて思い合う男女の出会いと別れの物語。
「青空」
最愛の妻を亡くし、父と子の二人暮らしとなった「私」は、ある日心が折れ、義父母の家に息子を預けることを決意する。
当日の朝、「やはり自分が面倒を見るべきではないか」という葛藤にさいなまれながら義父母の家へ向かう道すがら、「私」は思わぬ事態に巻き込まれ……。
少しファンタジーな展開のものから身近にありそうな現実的な物語まで、多彩な「出会いなおし」が描かれていました。
出会いと別れを経た末の「出会いなおし」は、当事者たちが「揺るがない思い」に気づき、改めてその人との出会いを喜べるありがたいチャンスなのだなとしみじみ感じました。
別れる直前まで自分が抱いていた相手への思いは厚い氷に覆われていて、自分自身もそれに気づかない。
けれど時が経ると氷が解けて、その思いに気づき、「出会いなおし」たときにゆるやかな温かさをもたらすのだろうな……。
そんなイメージを浮かべてあたたかい気持ちになりました。
「出会いなおし」たい人を思い浮かべながら読み、時間を味方につけて自分のかたくなな思いをゆっくり溶かしていきたいな、と思った一冊でした。
出会いと別れの季節であり、あたたかくなってきた春にぴったりな物語かもしれません。
▼楽天はこちら




