強くて美しい物語を読んだ。
この物語は、生まれた環境も今の立場も全く違う3人の女性の人生模様が三つ編みのように交錯しながら進む。
一人目はインドの奥村にいるスミタ。
彼女はダリット(不可触民)という被差別者で、虐げられた暮らしをしていた。
カースト制度、という言葉はだれしも聞いたことがあると思うが、彼女はカーストの外にいる。人権などあってないような暮らしにゾッとする。
しかしスミタは気高い女性で、一人娘のラリータには自分と同じような思いはぜったいにさせまいと、お金を貯めて学校へ行かせようとする。
しかしここでスミタの「宿命」のようなものが足かせとなり、スミタの願いを阻んでしまう…。
二人目はイタリア・シチリアにいるジュリア。
ジュリアの父はかつらの製造工場を経営し、ジュリアも工場員として働いている。
職場は好きだが経営は父に頼り切りで、将来のこともあまり考えないようにしていた。
しかしある日ジュリアに転機がおとずれる。シク教徒の青年・カマルに恋をするのだ。
ジュリアは家族に内緒でカマルと通じ合うようになるが、これからのことを考えると暗雲が立ち込める。肌の色も、宗教も、立場もなにもかもが違うカマルが家族に受け入れられるのか、不安を覚えてしまう。
そんな悩ましい状況のジュリアの身に、さらなる試練がおとずれてしまう…。
三人目はカナダにいるサラ。
サラは弁護士。
同年代の女性の多くが悩まされた「ガラスの天井」を突き破り、弁護士事務所の重要なポストに就いている。
子どもは3人、夫とは離婚しているが良きシッターにめぐりあい、激務をこなしながら3人の子どもとの日々を送っている。
一見、順風満帆な暮らしのように見えるが、家のことはシッターにまかせきり、仕事も相当のプレッシャーをかかえて過ごしていたのだった。
そして、サラにも彼女の根底を揺るがす重大な出来事が起きてしまう…。
彼女たちは彼女たちの前に立ちはだかる壁に悩み、苦しみ、もがく。
その壁は「社会」という壁だ。
身分という、生まれながらにしてもうけられ、自分ではどうすることもできない壁。
異教徒への偏見という壁。
女性の社会的成功を阻む、見えない壁。
彼女たちはその壁に憤り、悲しみ、嘆き、戦い、戦いに疲れ、心折れそうになる。
物語が進み、「三つ編み」がどんどん深く編まれてゆくなかで、彼女たちはそれぞれに決意する。
それは「自分の人生を歩む」ということ。
ダリットとしてでなく、
経営者の父を持つ娘としてでなく、
組織に属するひとりの弁護士としてでなく、
スミタの、ジュリアの、サラのための人生をだ。
この物語では、彼女たちが「こうありたい!」と思う生き方を自分のなかでしっかりと認め、決意し、その生き方を貫くために壁に向かっていく様が描かれている。
彼女たちにとって壁を壊すということは、いままでの日常を打ち壊すことと同じで、それはとても勇気がいることだ。
でも、そうしないと前に進めない。
彼女たちはそう決意し、壁に向かってずんずん進んでいく。
その姿はとても強くて美しい。
物語の”三つ編み“ができあがったとき、物語構成の巧みさに加え、彼女たちの凛々しい姿に胸を打たれた。
そして最後まで読み終わり、この物語の表現の巧みさに震えた。
この物語では、女性の生きづらさが女性の長い髪で表現されている。
最初はバラバラだったものが編まれることで、物語の「核」が太く、強くなっていく。
その「核」とは、女性が生きづらい社会であることをよしとしない意志だ。
この物語を読みながら、わたしは太い三つ編みが風になびく様子を想像する。
ちょっとやそっとの風では、しっかり編んだ三つ編みはほどけない。ほどけないのだ。
この物語にある凛とした強さと美しさに強く揺さぶられた。
わたしも、わたしのための人生を歩む。
そう改めて決意した一冊だった。
