いきなりとんでもなく私事ですが、先日7月14日に結婚式を行いました。
2日経ったいまでも余韻に浸りっぱなしなのですが(ずっと写真見ちゃう…)、今日からいつも通りの日常を送っています。はぁ。。。

結婚式を行って感じたことは本当にいろいろあるのですが、
なかでも強く感じたのは、親族という不思議な絆。

「絆」という言葉は「支え合い」「助け合い」とかいう良いイメージで思われがちですが、もともとの意味は「しがらみ」「束縛」「呪縛」といったものだそうです。

これまで親戚付き合いはただただ面倒なものだと思って10年以上疎遠にしていたのですが、晴れの日にひさびさに親戚と話すと温かい気持ちがもくもくと湧きました。

絶対に変わることのない血のつながりは、強くて面倒だけれど、自分にかけがえのないものを与えてくれているんだよなぁ、という当たり前でよくわからないことを考えてしまいました。笑

これから徐々に親戚付き合いを再開していこう、とひっそりと心に決めた一日でもありました。

結婚式後に読み終わった一冊も、しがらみという意味での「絆」の深さを噛み締めさせる物語でした。

澤田瞳子『落花』は、平安時代中期、京から坂東(関東地方)の地へやってきた高僧の寛朝(かんちょう)の視点を中心に、複雑な人間模様が描かれた物語です。

寛朝が坂東へやってきた理由は、都から失踪してしまった楽人・豊原是緒(とよはらのこれお)から「至誠の声」を学び、自身が得意とする梵唄(ぼんうた)のさらなる向上を図るためでした。

そもそも梵唄を究める理由は、自分を見捨てるように寺に入れさせた父を見返したいという思いがきっかけでした。父への執着心は楽の向上のエネルギーとなり、都から一歩も出たことがない寛朝を坂東へ向かせたのでした。

ですがその坂東の地は秩序の整った都とは全く違い、強盗や野戦の頻発する荒地。
寛朝は治安の悪さに慄きながらも豊原是緒がいるという常陸の国(茨城県)へ向かいますが、その道中で荒地で勇ましく生きる武士・平将門に出会い、寛朝の人生は大きく変わります…。

この物語では、さまざまな「絆」に翻弄され、葛藤する人々が描かれます。
平将門は自分を頼って落ち延びた人々を守ろうとするために戦い、
香取の海に漂う傀儡女(くぐつめ)たちは屈託を抱えつつもお互いを家族のように思い、
都の楽人だった豊原是緒は「絆」のために出家し、教えを乞う寛朝を拒絶します。

志が閉ざされてしまった寛朝は失意に暮れ、豊原是緒の思いに困惑し、それでも楽を究めたいと思う自分自身の渇望に翻弄されます。
そんな寛朝の目には、清濁あらゆる感情を呑み込み、どんな状況であっても自分の信念を貫く平将門の姿がまばゆく見えるのでした…。

混沌とした坂東の地では、人々の絆や思惑が複雑に絡み合い、やがて大きな戦へと発展してしまいます。
平将門は戦の中心に立ち戦い続けますが、戦が戦を呼び、やがて将門は朝廷に楯突いた謀反人として藤原秀郷と平貞盛に討伐されてしまいます。

戦がこじれてゆく様を見ていた寛朝は平将門の不器用さに歯がゆさを感じますが、それと同時に平将門の自分の信念を曲げない生き様から「至誠の声」を感じ取り、彼のために歌わずにはいられないのでした…。

この物語が強く伝えているのは、人間は醜くて美しいということです。
どれだけ世間に嫌われていようとも、愚かさばかりが見えても、その人の中にある美しさを感じる、信じることの尊さが描かれています。

人間はなかなか愚かな考えを捨てきれません。
この物語では自分の立身出世のために手段を選ばない残虐な人間も登場します。
坂東に到着したばかりの寛朝は人間の醜さを嘆き、悲しみに暮れますが、自分を利用する人や嫌う人もいると受け入れ、かつ自分の信念のために戦う平将門の姿を見ているうちに、考えが少しずつ変わっていくのでした。

混沌とした世の中で、平将門の生き方はまばゆく激しく映ります。
人間の醜さを受け入れる彼の器の大きさにただただ感服した一冊でした。