「そんなに辛かったら、会社、辞めたら……?」
わたしがやってしまった、忘れられないクソバイスがある。
これはブラック企業に勤めていた友人に向けて、良かれと思って放った一言。
わたしはその友人としばらく会っていなかったから、友人が置かれている状況も、事情も、な〜んにもしらない。
このとき、わたしはまだ社会人2〜3年目の超ぺーぺーである。
社会のなんたるやもよく知らないくせに、友人があまりにもつらそうだったのが見ていられず、いてもたってもいられずクソバイスしてしまったのだ。
しかも、ツイッターで。
わたしに向けた相談とかじゃないのに。
きっと、友人はツイッターをガス抜きの場にしていたんだと思う。今すぐに状況は変えられないから、せめてつぶやいて毒抜きしてからまたがんばろ…的な感じで。
そういうときって解決策の提案とかいらず、ていうか自分である程度の解決策はわかっていて、その上で一時避難所的に毒を吐くだけなので基本的にそっとしておいてほしい状態だったりする。
(賛否両論かもしれないが、そういう使い方もアリだとおもう。冷静になってヤバって思ったら消せばいいし。)
そう断定的に言えるのは、わたしも同じように鍵付きアカウントで毒を吐いていた時期があったからなのですが(クソバイスをした数年後のことであった…)。
ある日の深夜に友人の「しんどい」的ツイートが流れてきたのを見て、わたしは何も考えずにクソバイスをリプライ(クソリプ)したのだった。
心配だよ〜!とか、今度会おう〜!とか、せめてワンクッション挟めばよかったのだけど。
事情も知らない若者が無責任に「会社辞めたら?」って人の人生左右するようなアドバイスすんのん、まじでなぁ。ねぇ。
そのときの状態の友人の反応が、いまなら手に取るようにわかる。
うわっ。
超・余・計・な・お・世・話!!!!!!
いろいろわかっとるわい!!!あんたにわたしの何がわかるんじゃ~!!!!!!
みたいな?
こんなに気性が荒いタイプの人ではないけれど、超モヤらせたことは間違いない。
そのとき、友人からクソリプへの返信はなかった(賢明な判断である)。
そこで気が付けばよかったものの、わたしは返信がないのが気になり「返信見てくれた……?」とわざわざ再リプ。
そこで、友人から大人の対応&冷ややかな一言を浴びせられ、一気に恥ずかしくなったのでした……。
いま思い出しても超はずかしい。軽率なことを言って本当にごめんなさい。猛省しています。
もしこれがツイッター上じゃなくて対面だったら、チベットスナギツネみたいな表情をされたんじゃないかと震えながら想像する。
人にはいろんな事情がある。
ほんとに島倉千代子だ。人生いろいろだ。
わかっているはずなのに、つい自分の価値観に当てはめて、余計なお世話を働いてしまう。
言い訳みたいなことを言うが、おそらくそのとき、わたしはだれかに求められたかったんだと思う。
社会人になり、知り合いの誰もいない大阪に転勤になり、とってもさみしかったから。
犬山紙子『アドバイスかと思ったら呪いだった。』は、わたしがやらかしたようなクソみたいなアドバイス→「クソバイス」をまとめたもので、クソバイスされた相談者からの悩みに犬山さんが答え、相談者の気持ちに寄り添い、クソバイザーの発言に一緒に怒りながら本当のアドバイス(クソバイス返し)を提示してくれるありがたい一冊だ。
本書を読めば、クソバイスされたときに心のバリアを張ることができ、かつ、こちらもうっかりクソバイスをしないように気を付けることができる、現代の必読書のうちの一つだ(とわたしは思う!)。
悩みとしてはスタンダードなものばかりで、やはり多いのが「はよ恋しろ」「はよ結婚しろ」「はよ子どもつくれ」「◯◯だからモテない」ほか、仕事をめぐるクソバイス 。
男女問わず寄せられる悩みに犬山さんが冷静に的確なツッコミを入れるのが痛快でおもしろい。そこに自分の悩みがハマればさらに良し!という感じである。
本書の素晴らしいところは、人間関係というデリケートな話題だからこその細やかな配慮が行き届いていることだ。
単行本が発売された時は『言ってはいけないクソバイス』というタイトルだったのだが、文庫化にあたりマイルドな物言いに変更されていたり(強い言葉は覚えやすいけれど、敏感になってしまう人もいるからそこに配慮されたのかなと思った)、犬山さん自身のクソバイス経験を惜しみなく出したりして「クソバイスの連鎖を止めて生きやすい世の中を作ろう!」という意思をすごく感じて、ものすごく好感が持てた。
特に素晴らしかったのは文庫版のあとがきだ。
いかなる人も誰かに生き方を頭ごなしに否定されたり、ぞんさいに扱われて良いものではありません。「クソバイスなんて名前がついたら何も言えないよ」なんていうのは強者の発想で、相手を傷つけないよう気をつけるということは大切なことだと変わらず私は思っています。
(中略)
自分がそうならないためにも、たくさんの立場の人の意見を聞くことが大切なんだと思います。当たり前だけどみんな価値観が違うんですよね。そして、その価値観を全部理解しなくても良いし、心に偏見を持ってしまうのも仕方ない。でも「いろんな人がいて、いろんな考え方があって、それは自由だ」という基本原則は守り続けなきゃいけない。
(文庫版あとがきより)
本当におっしゃる通りだと思う。
人間だもの、調子のいい時・悪い時・間違っちゃう時もあるからたまに失敗してしまうこともある。
けれど、最低限の礼儀を忘れなければ、たいていのことは大丈夫なんじゃないかと思うのだ。
たとえそれが正論だとしても、失礼な物言いだったら絶対聞きたくなくなるもん。
相手への礼儀なくして円滑なコミュニケーションは成立しない!!!
胸に彫り込みたい(刻む、じゃ足りない!笑)と思う。
頭にはささいなことで喧嘩しまくっちゃう相手の顔が浮かぶ。
忘れたころにもう一度読み返し、クソバイスの連鎖を止める日々を送っていきたいと思う。
人間関係に悩んでいる方は、一読の価値あり!!!


