『きょうの猫村さん』でおなじみのほしよりこさんが描いた「感情」の物語。
主人公・逢沢りくはおしゃれなママとかっこいいパパの間に産まれた一人娘。人見知りで寡黙だけれど、人並外れた美貌の持ち主で、周りが羨むほどの理想的な家庭環境で育ってきたお嬢様だ。
しかしそれは「見た目」だけのことで、母親は完璧主義で潔癖症、父親はスマートだけれど会社のアルバイトの女性と浮気をしている。夫婦は仲良く暮らしているように見えるが、時に黒い感情が垣間見える。
そんな時にりくは両親の黒い感情をつぶさに読み取り、両親の言うとおりの振る舞いを意識する。泣いて欲しいと思っているだろう時には人前で簡単に泣いてみせることができるのだ。それが両親、特に完璧主義のママと一緒に過ごすための処世術とでも言うかのように。
あまりに簡単に涙を流すことができるようになってしまったりくは、「感情」というものがどういうものか分からなくなっていた。
ある種の諦念を抱えて生きていたりくだが、ある日パパの浮気がきっかけで転機が訪れる。りくが数ヶ月間関西の親戚の家に預けられることになったのだ。
両親以外の人間を受け付けられないと拒むりくだが、親戚の家で暮らすうちにりくの感情も少しずつ変化していく…。
両親に愛されたい、という思いが捻れてしまったりくが心を動かされるできごとに触れ、徐々に変化していく様子が丁寧に描かれている。
最後にりくの感情が爆発するシーンで涙せずにはいられない、とても繊細な物語だった。