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20140901失くした1000冊を取り戻す

07/30 08:40 - 109シネマズ二子玉川

怪物』 (2023年/日本

 

監督/是枝裕和

脚本/坂元裕二
撮影/
近藤龍人

美術/三ツ松けいこ

音楽/坂本龍一


出演/安藤サクラ 永山瑛太

   黒川想矢 柊木陽太 

   高畑充希 角田晃広 中村獅童

   田中裕子


■映画.comより■

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。よくある子ども同士のケンカに見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。第76回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。

 

あぁ「映画」を観た。 廃列車の黒い窓を、掻いても掻いても泥が覆う。そこを雨が打つ光が打つ。星空にも見える場違いな美しさは、不吉でしかない。続く光溢れるラストに、言葉が追いつかないまま感じた痛みが、全て。余白は観る度に違って見えるかも知れない。 「誰でも手に入るものを幸せって言うの」、それ以外のものは「しょうもないしょうもない」。一番怪物に見えた校長のこの言葉の、なんと心強いことか。



サウンドトラック『怪物』(アナログ(12インチ))


画家と泥棒 2020年/ノルウェー

 

監督 撮影/ベンジャミン・リー


出演バルボラ・キシルコワ

   カール・ベルティル・ノードランド


■映画.comより■

ノルウェーで実際にあった絵画の盗難事件を題材に、被害にあった画家と絵を盗んだ犯人の事件後の意外な交流を追ったドキュメンタリー。//2015年、ノルウェーの首都オスロにあるギャラリーで2点の絵画が盗難される。盗まれた絵画を描いた画家は犯人を突き止めるが、犯人は「覚えてない」の一点張りだった。やがて画家は、犯人に「あなたをモデルに絵を描かせてほしい」と突然の提案をする。


あまりに出来過ぎていて。繋がりも自然、構成も色もきれい、登場人物達はみな饒舌で、大切なシーンの撮りこぼしもなく、展開も劇的。いっそモキュメンタリーだと言ってくれと思う。

が、「絵画」が人から、あれほど具体的で率直な反応を引き出すところを、初めて見た。人の心が大きく動く瞬間に立ち会い、何かが溶けて溢れ出す様を、つぶさに見せてくれたシーンが心に残る。


画家と泥棒(字幕版)


エスター ファースト・キル
 (2022年/アメリカ


監督/ウィリアム・ブレント・ベル

脚本/デビッド・コッゲシャル

撮影/カリム・ハッセン


出演/イザベル・ファーマン

   ジュリア・スタイルズ

   ロッシフ・サザーランド


■映画.comより■

孤児院から養子として、ある一家に迎え入れられた少女エスターが巻き起こす恐怖を描いたホラー「エスター」の…第2弾。…裕福な一家、オルブライト家の一人娘で6歳のエスターが行方不明になってから4年…。ある日…見つかったという朗報が…届けられる。父、母、兄は数年振りの再会…にこの上ない喜びを感じ、10歳に成長したエスターを迎え入れる。…が、…戻ってきたエスターは何かが変わってしまっていた。…


前作時12歳だったイザベル・ファーマンが、今回25歳でその前日譚、見た目10歳(実は30代)を演じる。前作では「少女」にしか見えなかった彼女が突如「大人」の顔を見せる気味悪さと驚きがあったが、今作では「少女」にしか見えないなんてことはなく、30代の女性が時折少女っぽく見えるというだけ。私の興味は「25歳が10歳に見えるのか」であったので、正直つまらなかった。他にも仕掛はあったけれども。期待し過ぎたか。


エスター ファースト・キル


罪の声 (2020年/日本)


監督土井裕泰

原作塩田武士

脚本野木亜紀子

撮影山本英夫

主題歌/Uru


出演/小栗旬 星野源 松重豊

   古舘寛治 宇野祥平 


■映画.comより■

平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ取材を重ねる日々を送っていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。再生してみると、幼いころの自分の声。そして30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決事件で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。


3年程前に読んだ原作が面白かったので、気になっていた。半ばまではあまりにも、モデルの事件を知っていることを前提に描かれているようで、不親切に過ぎると感じたのだが。映画の力、役者の力、画の力音の力というのは強くて。先に原作という順は、私には幸運だった。

「闘争」とは何だろうと毎度思う。「奮い立つ」という感覚は、個人の質なのか、共有された記憶なのか。

  

罪の声


映画 太陽の子

 (2021年/日本 アメリカ


監督 脚本黒崎博

撮影/相馬和典

主題歌/福山雅治


出演/柳楽優弥 有村架純 三浦春馬 

イッセー尾形 山本晋也 國村隼 田中裕子 


■映画.comより■

戦況が最終局面を迎えた1945年の夏。科学者・石村修原子核爆弾の研究開発を進めていた。建物疎開で家を失った朝倉世津は、幼なじみの修の家に、戦地から修の弟・裕之が一時帰宅し、3人は再会。戦地で深い心の傷を負った裕之、研究の裏側にある恐ろしさに葛藤を抱えていた修、そんな2人を力強く包み込む世津は、戦争が終わった後の世界を考え始めていた。そして、運命の8月6日が訪れてしまう。


「これが、僕達が作ろうとしていたものの正体なんですね」…その正体よりも、作品よりも、まだどうしても、「三浦春馬」を追ってしまう。


映画 太陽の子


犬王』 (2021年/日本)

制作/サイエンスSARU


監督
湯浅政明

原作古川日出男 『平家物語 犬王の巻』

脚本/野木亜紀子

キャラクター原案/松本大洋

美術監督/中村豪希

音楽大友良英


出演/アヴちゃん 森山未來

   柄本佑 津田健次郎 松重豊


■映画.comより■
南北朝~室町期に活躍した実在の能楽師・犬王をモデルにした長編ミュージカルアニメ。京の都・近江猿楽の比叡座に、1人の子どもが誕生した。後に民衆を熱狂させる犬王だったが、その姿はあまりに奇怪で、大人たちは全身を衣服で包み、顔には面を被せた。盲目の琵琶法師の少年互いの才能を開花させてヒット曲を連発。舞台で観客を魅了するたびに身体の一部を解き、唯一無二の美を獲得していく。


上映の随分前から、映画館で観ることを楽しみにしていたのに、ふと気付いたら終わってしまっていた作品。なんてこと。 犬王が異形であるうちが面白かったな。シルク・ドゥ・ソレイユをアニメーションで観たいとは思わない。いや単に私が、「ミュージカル」が苦手なだけかしら。或いはパソコンの小さな画面でなくて大きなスクリーンで観ていたら、また別の体験になっただろうか。きっとそうなんだろう。

 
劇場アニメーション『犬王』


宮部みゆき 『おたすけぶち

イラスト/杉田比呂美

デザイン/大久保明子

解説/北上次郎

出版社/文春文庫

 
■本文より■

「きれいでしょう?」声をかけられて、わたしは顔をあげた。

曼珠沙華の花だ──そう思った。手厚い保護を受けていなければ美しく咲くことのできない、ひ弱なバラではない。たとえ墓地にでも、鮮やかな紅の花を咲かせる曼珠沙華。

また、甘い匂いが鼻をくすぐった。たぶん、曼珠沙華の香だ。意識を失う前に、ふとそう思った。


タイトルが想起させるのか。

「まんが日本昔ばなし」のひとつを、現代に置き換えてリライトしたものを、読んでいるような。そんなまわりくどい感想を持った。物語の、朴訥として見えて、内包する毒の強さ嫌らしさが、似ているのかも知れない…。

語り口の小気味好さもまた、似ているかしら。


とり残されて (文春文庫)


箪笥/たんす』 (2003年/韓国

 

監督 脚本/キム・ジウン

撮影/イ・モゲ

美術/チョ・グンヒョン


出演/イム・スジョン ムン・グニョン

   ヨム・ジョンア キム・ガプス 


■公式サイトより■

韓国の古典怪談『薔花紅蓮伝』をベースに、人里離れた家に住む一家の継母と美しい姉妹の確執、そして“家”自体が放つ禍々しい怪奇現象を描いた恐怖映画。「クワイエット・ファミリー」のキム・ジウン監督が、原作のモチーフのみを踏襲し、結末の予測できないホラー映画として現代的に再構築した。


花模様の壁紙から始まる。可憐な小花にも、ヒトの頭蓋内部にも見える。絶妙。 

ある時一気に、あぁ、と見える。「ありがち」とがっかりしないのは、呪いのような、否、呪いそのものの一言が効いているから。そして「ごめんね、聞こえなかったの」、繰り返されたこの言葉の重さに、気付く。 

最初から最後まで、抑えた色調ながら色数の多い、悪趣味と紙一重にも見える、美しい作品だった。


箪笥<たんす>(字幕版)


IT イット “それ”が見えたら、終わり。

 (2017年/アメリカ


監督アンディ・ムスキエティ

原作/スティーブン・キング

脚本/チェイス・パーマー

   キャリー・ジョージ・フクナガ

   ゲイリー・ドーベルマン

撮影/チョン・ジョンフン

美術/クロード・パレ

音楽/ベンジャミン・ウォルフィッシュ


出演/ジェイデン・マーテル

   ビル・スカルスガルド
   フィン・ウルフハード
   ジャック・ディラン・グレイザー
   ソフィア・リリス
   ジェレミー・レイ・テイラー

   ワイアット・オレフ


映画.comより■

静かな田舎町で児童失踪事件が相次いで起きていた。内気な少年ビルの弟が、ある大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して姿を消した。自分を責め、悲しみにくれるビルの前に現れた「それ」。不良少年たちからイジメの標的にされている子どもたちも、自分の部屋、学校、町の中など何かに恐怖を感じるたびに「それ」に遭遇していた。「それ」の秘密を共有することとなったビルと仲間たちは


ホラーは嫌いだし、スティーブン・キングに興味もない。上映当時、私には縁のない作品だと、ポスターに引いたことを覚えている。が、『MAMA』の監督の別作品をどうしても観たくなって。 意外、良かった。リアルだけど嫌な生々しさはなく、どこか可笑しくて哀しくて。そっと期待したギレルモ感もあり、美しさを伴う禍々しさにはシャイニングを、少年達の瑞々しさにはスタンド・バイ・ミーを、思い出したりして。


IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(字幕版)


宮部みゆき 『とり残されて

イラスト/杉田比呂美

デザイン/大久保明子

解説/北上次郎

出版社/文春文庫

 
■本文より■

最初は足音しか聞こえなかった。姿が見えるようになるまで、かなり長い時間がかかった。

広島に原爆が落とされたとき、爆心地の近くの石段に座っていた人の影が、爆発の閃光で、その場に焼きついて残ってしまった──その写真を見たことがある。ちょうどそれと同じように、わたしたちが抱いた強い感情は、くっきりとそこに残されるのだ。

手のなかに滑りこんでくる、小さな冷たい手を感じることができるだろう。決してあきらめはしない。そのときまで。


閃光にも似た、強い強い負の感情に、その時その場に留め置かれてしまった魂は、幾つあるのだろうか。

あぁ時間が癒すとはつまり、そういうことなのかも知れない。耐えられない分の痛みを負わせた分身を、多重的に存在することすら許さず、たった1人過去にとり残してきた…、そうなのかも知れない。分身は、痛みを与えた相手と同じくらい、それを負わせ置いていった自身に、恨みを向けることはないのだろうか。


とり残されて (文春文庫)