私は、父を心底尊敬していた。
母が亡くなって、
母方のばあちゃんに私と姉をあずけ、
身を削って働き、
父と折り合いの悪いばあちゃんのことも、
老後の面倒を見ると言った父を、
尊敬していた。
だから、月に一度しか家に帰ってこないことも、
姉のことをバカにするのも、
ばあちゃんのことをバカにするのも、
私と一緒に出掛けるときは仕事の愚痴しか話さないのも、
私の進路の話など私に関することはなにも聞いてこないのも、
全部、理由があるからだと思った。
私が嫌だなと思うことを、わざわざ、
理由があるからしているんだと、思った。
ナリ心理学を知って、
父の行動は、
なんの理由もなかったことがわかった。
腸が煮えくり返るほど、父が憎らしくなった。
それから、私は父にお金の無心をした。
車が壊れたから10万円をせびり。
こどもの教育費としてお金をせびり。
その他、細々と父からお金をせびり。
父から電話がかかってくる度に「お金がなくなったら頼って良いか?」と何度も聞いた。
「離婚したら実家に戻ってくるから生活費をよろしく」と何度も脅した。
父は、私に言われるがままお金を払ったし、
私が「お金がない」と言う度に「俺が出すから大丈夫さ~」とあっけらかんと答えた。
何円父からお金を貰っても、
憎しみは消えなかった。
罪悪感がつのり、余計にイライラした。
ある日、つまらないことで、夫と大喧嘩し、実家に帰った。
父と、縁側で並んでタバコを吸いながら、恐る恐る聞いた。
「どうして私を産んだの?こどもが2人欲しかったの?」
父は「別に俺はこどもはいらなかったんだけどな。まぁ、うん。」と答えた。
まるでファミレスで水のお代わりを断るときみたいなテンションだった。
返事の内容と返事の仕方が、嘘をついてない真っ直ぐさだったので、清々しかった。
みっともない嘘を重ねて、お前のことは本当に愛しているんだよと言われるより、よっぽど嬉しかった。
「お父さんが、もっと夫婦の見本を見せてくれたら良かったのに」「私はずっと自分なんかが生きてていか分からなくて不安だった」と私は続けて言った。
父は「うんうん」とタバコを咥えて頷くだけだった。
慰めの言葉もなく、謝る言葉もない。
自分の子育ての結果、娘が苦しんでいることを吐露する場面だと言うのに、まるで当事者意識の欠片もない答えだった。
続く。