蝉

~1週間の命~


私は、約7年間地中で生活をして来た。

今日、やっと地上に出て、思いっきり羽を鳴らし鳴いている。

暑い夏が終わる前に、精一杯鳴かなくては…そして出会わなければ…


大きな木が1本立っている。

そこは、動物愛護センター

毎日、命が消えていく…


私が地上に出て1日目

小さな仔猫が運び込まれた。

「庭で野良猫が産んじゃって。他にも居たけど、管理人が業者に頼んで駆除して貰ったみたいだけど1匹だけ残っちゃって。鳴いて煩いし、糞をして汚くて迷惑だから」人間は、そういうと、小さい箱に入れた仔猫をセンター職員に渡した。


仔猫の入った箱を渡された職員は、やるせない表情になり、無言で俯く。

日々繰り返される風景だ。

違いが有るとしたら、それが時として犬だったり、猫だったりするくらいで、命が運び込まれる事に変わりは無かった。


私がしがみ付いて鳴いている木からは、センターの収容部屋の格子から中が少しだけ見えた。

仔猫は、小さいケージの中で、母猫を呼んで鳴いている。

仔猫の入ったケージには1日目の日付の書いた札が下げられた。


翌日、仔猫は鳴き止んでいた。

私は木から離れて、部屋の格子にしがみ付いた。

仔猫が私を見上げている

「ねえ、私のお母さんは何処?」

私は答えずにひたすら羽を擦り合せて鳴いた。

「ねえ、あなたもお母さんを呼んでいるの?」

仔猫は、鳴きもせず、大きな瞳で私を見つめていた。


また1日が過ぎた。

仔猫のケージには、3日目の札が下げられた。

仔猫は、また私に話しかけて来た。

「私ね、沢山御飯を食べて、早く大きくなって、お母さんを探しに行くの」

私は無言で羽根を擦り、鳴いた。

「沢山食べるの。御飯を食べて大きくなるの。あなたも御飯を沢山食べないと大きくなれないよ」

曇りの無い瞳は、キラキラと輝き、眩しかった。


そして、また1日が過ぎ、更に1日が過ぎた。

私が地上に出て、既に5日が過ぎた。

仔猫は、1日の終わりに、同じ部屋から連れ出されていく他の猫の姿を目で追いながら、過ごしていた。

「ねえ、私はいつ此処から出られるのかな?あなたは知っている?」

仔猫は、小さな頭をかしげながら、私に聞いた。

「時々、他の猫さん達が、人間に連れて行かれて、そのまま帰って来ないの。お外に出られたのかな?」

私は、答えずにひたすら羽を擦り合せて鳴いた。

仔猫のケージには、5日目の札が下がっていた。


翌日、センターの職員が仔猫のケージを覗き込みながらため息を付いていた

「仔猫…もう何匹見送って来たんだ…。もう沢山だ。どうして、罪も無い純粋な命を消さなくてはならないんだ…。この子…あと1日か…。だれか家族に迎えてくれないだろうか…明日には…」

そう呟くと、6日目の札に付け替えて部屋を出て行った。


その日の夜、仔猫は私を見上げながら言った。

「ねえ、私、お母さんを探したいの。私、外に出られないのかな?明日私は何処へ行くの?知っている?外に出られるのかな?きっとそうよね」


私は、見てしまったのだ。

最後の札には7日目の日付が書かれる。

その札が外される時、みんな小さな部屋に入れられて、その後決して生きて出ては来ない事を。

引きずられながら連れていかれる犬。小さな箱に詰められて運び込まれていく猫。泣いても叫んでもその扉は開かない。

苦しみもがく叫びを鉄の扉が隠してしまう…。


余りに残酷で、私は仔猫の目を見ることが出来なった。

どうか、あの仔猫の希望を叶えて欲しい。

仔猫の命を奪わないで欲しい。

それが叶わないのであれば…、願わくば、あの仔猫の命が消える前に、あの仔猫の希望が打ち砕かれる前に私の命が尽きて欲しい。

あの美しい瞳の仔猫の最後は見たくない。

どうか、1日でも早く私の命を消して欲しい。

そう願いながら、私は羽を擦りながら必死で鳴いた。


強い日差しを避ける日傘が近づいて来た。

「随分蝉が鳴いているわね」

「お母さん、ボクね、仔猫さんが良いな。仔猫の妹が欲しいんだ」


親子連れが、センターの門をくぐった。


格子にしがみ付いていた私の腕から、少しづつ力が失われていく。そう…もう6日が過ぎた…私の腕には力が無くなって来たのだ。


親子は、あの仔猫のケージの前で立ち止まった。


「お母さん、この仔猫さん、とても綺麗な目をしているね」

「あら、本当ね。可愛い子ね」

「ボクね、毎日ちゃんと仲良くするよ。人参もちゃんと食べる!強くなって、妹が虐められたら守ってあげるんだ」

「そうね」

母親は優しい笑顔で男の子を見ている。


蝉はボトリと地面に落ちた。

蝉の羽が1枚剥がれ、ヒラヒラと舞い、仔猫の頭に落ちた。

「あれ?何だろう?これキラキラ綺麗ね…」仔猫はその羽を暫く眺めていた。


そして、地面に落ちた蝉は「ジジッ」と小さく鳴いて、仰向けになり動かなくなった。


センターの建物から、小さいキャリーバックを持った親子が出てきた。

日傘が嬉しそうにゆれている。


見送るセンター職員の足元に、蝉が落ちている

「1週間…。蝉も1週間しか生きられないんだよな…お前は、1週間でも精一杯生きられたか?運命の相手に出会えたか?同じ期限付きの一週間でも…違うよな…」

そういうと、職員は蝉の亡骸を拾い、木の根元に埋めた。


今日も、暑い夏の日差しの中、蝉が沢山鳴いている。

1週間の命の期限を惜しむように…消されてしまう命を嘆くように…。


終わり



あなたは、殺されて行く命が、生きようと御飯を食べ、空気を吸い、出口を求めている姿を見た事が有りますか?

純粋な目で、人間を見つめる、その目を見た事が有りますか?

命を命と思わない悪質な繁殖業者、売り上げ重視で無差別に命を販売する悪質なペット販売業者、無責任な飼い主等、悪意の犠牲となる命…

殺処分という制度自体が無くなって欲しい


捨てないで!家族なんだから!


☆ねこけん里親会開催☆

2013年9月15日(日)

13時~17時

※詳しくは里親会情報 をご覧ください!


日時9
月15日(日) 午後1時~午後5時

※練馬で開催です。お間違いのないように!


場所 東京都練馬区豊玉北5-15 -12
アロマテラピーサロン「マシュマロー」
の入っているビルの2Fです。

交通
西武池袋線 練馬駅 徒歩1分
東京メトロ副都心線 練馬駅 徒歩1分
東京メトロ有楽町線 練馬駅 徒歩1分
都営地下鉄 大江戸線 練馬駅 徒歩1分

家族を待っている猫さん達が沢山参加します♪



多国籍の犬猫な毎日(おティんクな気分で)


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※仔猫も参加致しますが、離乳前・8週齢前の仔猫達は譲渡致しません。
里親会に出られるようになった仔猫のみ、譲渡対象となりますので、予約や事前面会は出来ませんので、ご理解ご協力をお願い申しあげます。

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