私は、とても美しい猫でした。

誰もが私を見ると「綺麗な猫さんね」とため息を付きました。
真っ白い長い艶やかで、朝日を浴びると銀色に輝く毛が優雅で、気品さえ感じる程でした。
長い尻尾は、王族の孔雀の扇の様に優雅にゆれ、アーモンドアイの青い瞳は、エーゲ海を思わせ、吸い込まれそうな深みと高貴さをかもし出していました。

誰もが、私を手元に置きたがりました。
私は、ペットショップで売られていました。
ある人が、私を買いました。その人は私の美しさに磨きをかけるべく、トリミングやトレーニングを受け、品評会に出されるたびに、私は何らかの賞を得ていたようです。
それは、私にとっては、何の価値も有りませんが、飼い主にとっては、大切なことだったようです。

大人になるにつれ、飼い主は、私に時期が来るたびに子供を産ませました。
私は、他の生活を知らないので、それが普通の猫の生活だと思っていました。
何年も何年も、私は仔猫を産み続けました。
私の子供は、みんな愛らしく美しかった。そして、数ヶ月もすると、どこかへ連れて行かれた。
後で知った事ですが、新しい家族の元へ売られて行ったそうです。

同じような何年かが過ぎ、私の美しさも、歳と共に陰りが見えて来ました。
品評会に出ても、賞を取れない事が続きました。

そんな有る日、飼い主は私をキャリーに入れました。
私は、また獣医さんの所か、品評会に行くのだと思っていました。
しかし、着いた所は見知らぬ場所でした。

此処は何処でしょうか?
今まで絨毯の上しか知らない私には、湿った茶色の地面が気持ち悪く、風に揺られる草も恐怖の対象でしか無かった。
私は、急いでキャリーに戻ろうとしましたが、すでに飼い主の姿は無かった。
私は、恐怖の余り、その場にうずくまり、動けなかった。

何時間、そうして居たのか分かりません。
あたりは闇で、誰も居ません。お腹が空きましたが、誰も食事を与えてはくれません。

私は、何時間も何時間もそこに居ました。もう此処で死んでしまっても良いと思いました。
時折強い雨が私の長い毛を濡らし、照るつける太陽は、容赦なく高齢の私の体力を奪いました。
私は、もう動けなかった。すでに私の体は、ぼろ雑巾のようでした。

「また捨て猫か…死んでいるのか?おい、生きているか?」
人間の声がしました。
私は、重い体を何とか少しだけ動かしました。

すると、「おい、生きているのか?おまえ大丈夫か?」
私は、力を振り絞り、顔を上げて、声の主を見上げました。
そこには、歳をとって、破けたTシャツを着た老人が私を見下ろしていました。
私は、「ニャー…」と力なく鳴くと、気を失ってしまいました。

暫くして、気が付くと、そこは粗末な小屋のような家の中でした。
湿ったマットに寝かされた私は、もう動けませんでした。

ご老人は親切で、私の体を乾いたタオルで拭きながら
「お前さん、何処から来たんだ?此処はね、よ~く猫や犬が捨てられるんだ。運良く、優しい人間に拾われたり、見つけてもらえればラッキーな方で、殆どの子達は、人知れず死んでいく。お前さんは、運が良い方なのかな?おいさんはさ、金も仕事も無いけど、そういった子達を見てみぬ振りは出来ないんだ。お前さん、気の毒に、おいさんみたいな貧乏人に拾われちゃったな。ワッ八ッハ」
おじいさんは1本しかない歯を見せながら大きく笑った。

数日は、おじいさんに介抱されて、少し元気を取り戻しましたが、私はすでに高齢で、数日間の外の生活ですっかり精神的にも肉体的にも衰えて弱っていました。
この世界にお別れを言うのも、そう遠くないと感じていました。

私は、もう長くない。でも、お世話になったおじいさんに、何とかお礼がしたかった。
私に出来るお礼は、昔の美しかった時の私のように、しっかりと立ち、胸を張り、上を向いて、優雅に高貴な立ち姿を見せることしか有りません。

おじいさんは、高齢で毛玉だらけの寝たきりの私の口元に、食事を運んで食べさせてくれました。
私は、必死に食べました。残り少ない時間で、立てるだけの体力を付けなくては。

その夜、おじいさんは私をマジマジと見て、言いました。
「お前さん、昔はさぞかし綺麗だったんだろうね。すまないね、おいさんが、貧乏なばっかりに、良い食事も食べさせてやれないし、綺麗に散髪してやることも出来ない。申し訳ない…。」
私は、時が来たのを感じました。
力を振り絞り、何とか四本の足で立つ事が出来ました。
「お前さん!立てるのか?無理しなくて良いぞ。寝たままでも、お前さんは綺麗で可愛い猫なんだよ。ごめんな、おいさんが余計な事を言ってしまったな。もう良いから寝なさい」

私は、おじいさんの方を向き、しっかりと立つと、品評会の時のようにポーズを取りました。

「なんて綺麗な猫なんだ!品も有るし、優雅で綺麗だ~!お前さんは、素晴らしく美しい猫だ」
おじいさんの驚愕の瞳を確認すると、私はもう体力の限界で、一気に崩れ落ちるように倒れてしまいました。

「おい!大丈夫か?無理するからだぞ。お前さんの気持ちはありがたく頂いたから、もう無理しないで良いからな。どんな姿でもお前さんは、とても愛らしくて可愛い猫なんだからな。おいさんは、お前さんに逢えて嬉しかったぞ」
おじいさんの声が遠くなり…私は何も見えなくなり…遠くにご老人の心配そうに私を呼ぶ声が聞こえていました。

おじいさん、ありがとう…。

私は、次に生まれてくるときは、醜い猫に生まれて来ます。
体には、おかしな模様が有り、優雅な長い毛も無く、目はぎょろりとして、愛らしいというよりは奇妙に見えるほどの容姿で生まれて来ます。
決して、全員が私の元の飼い主のようでは有りません。品評会を大切にしている人や繁殖をしている人の中にも猫を大切にしている方は多く居ます。私の買われた先が良くなかっただけです。
しかし、美しさだけで愛されるのではなく、優雅さだけで大切にされるのではなく、賞の多さで価値を見出されるのではなく、ご老人のように、どんな姿でも私を愛してくれる人間の元で暮らしたい。だから、次に生まれて来る時は、私は決して美しい猫には生まれて来ません。

どうか、在りのままの私を見つけて下さい。そして、一生愛して下さい。家族として、一生そばにおいて下さい。
私は、可笑しな猫の姿で待っています。


クシュン!ズビ~ズルズルクシュン!
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「えっ、うっそ~モヒカン?」
「鼻水?鼻くそ? この染みが絶妙~」
「宇宙人みたい~ぶさかわ猫だよね~ウフフ」

クシュン!ズビ~ズルズル~クシュン!
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「ウフフ絵文字可愛いモヒカン頭のモヒカちゃん!風邪を治して、優しい家族を見つけようね」




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