優しさを一つまみ


初めまして。

僕は、地域猫の「シマ」と言います。

正しくは、「シマ」と言う名前の猫でした。

何故「シマ」かって?何故過去形かって?

えへへ!そんなこと細かい事は後で説明するから。

え~と、何だっけ?あっ!そうそう名前ね。

此処の居酒屋のおばさんが、僕の事をそう呼んだから、僕の名前は「シマ」に決まったんだ。

簡単でしょ アハハ。

僕はね、此処に住んでいる「ナツコ」っていう、お母さんから産まれたんだ。

産まれてから、ずっと焼き鳥屋さんの倉庫と居酒屋さんの間の路地に住んでいた。


兄弟は沢山居た。

三毛、クロ、キジ、白地にキジ、チャトラ…あっ、僕はね、キジ白。

キジに白い毛が有る、白い靴下を履いたみたいな毛の模様なんだ。

お母さんにそっくりねって、みんな言っていたよ。


毎日、兄弟や、1年前に生まれたお兄ちゃんや、お姉ちゃんとも遊んで、転げまわって、お腹が空くと、いつもの路地の器には、必ずカリカリが入っていて、お腹一杯食べたんだ。

時々、缶詰を持って来てくれる人間も居た。

寒い日は、みんなで固まって寝るし、暑い日は風の通る木陰を探して昼寝して…。雨の日は嫌だったな~。だって、思いっきり遊べないんだもん。雨が当たらない軒下や縁の下、焼き鳥屋さんの物置でじっと寝ていた。


ある時、人間が僕達を捕まえては、獣医さんという所へ連れて行き、不妊手術という事をして、また此処へ戻すという事を始めた。

僕は、何が何だか分からないけど、檻の箱の中に入っているご飯が美味しそうで、お母さんが止めるのも聞かないで、入っちゃった。

入り口が、ガシャン!って音を立てて閉まった時は、飛び上がって驚いた。

何とか、お母さんの所へ戻ろうと、檻に体当たりをしたけど、頑丈なようで、びくともしなかった。


でもさ、毎日美味しいご飯を運んで来てくれる人間が、毎日「可愛いね~シマ!」と言ってくれる人間が、僕達に酷いことをする訳ないよね。

僕は自分に言い聞かせた。


翌日、僕は病院へ連れて行かれて、1泊して、また此処へ戻ってきた。

僕さぁ~、寝ていたから、何も覚えていないんだけど、病院では何をしたんだろう?


まあ、とにかく戻って来られたから、結果オーライだよね。


つづく