それから数日間、俺様はK家の庭でも飯を出されるようになった。

別宅が沢山あれば有るほど、俺様たちノラ猫は生きていける。


ところが、ある日、Nは檻の様な籠を持ち出し、その中に俺様の飯を入れた。

暫く、様子を見ていたが、空腹だったのと、Nは俺様を酷い目にあわせることは無いと信じて、その籠に入って、飯を…と思ったら…。



ガチャン!



檻の出口は閉ざされた。



俺様は、一瞬裏切られた!とNを信じた自分を責めた。

人間の中には、このような檻で猫を捕まえて、「二度と戻れない家」に連れて行く奴がいるらしい。

そこへ連れて行かれる猫は、産まれたての仔猫だったり、年老いたり、人間の都合で不要だと言われた猫だったり、道路で怪我や病気をした猫らしい。

「そこへ運ばれる動物は、「処分」という事がなされて二度と出てこない」と、その家から奇跡的に人間に救われた奴が言っていたのを聞いた事がある。処分って何だろう?

良く分からないが、まさか…。俺様はそこへ連れて行かれるのだろうか?


しかし、Nは何も悪びれず、こう言い放った。

「熊、ごめんね。歯を治すのには、獣医さんへ行って治療してもらわないとならないから、閉じ込めてごめんね。熊、そのヨダレは普通じゃないって。今にご飯が食べられなくなって死んでしまう。それは困るから、ちょっと嫌な思いをさせるけど、熊を助ける為だからね」


俺様は、Nが何を言っているのか理解する為に、頭をフル回転させていた。

獣医とか、治療とか訳が分からなかったが、それが「処分」を行う家の事なのか…、こうなっては腹をくくるしかなかった。


暫くすると、ボランティアと称する人間が、俺様を車に乗せて、動物病院という所に連れて行った。

俺様は、車から籠ごと降ろされた時に、いつでも逃げられるように、マーキングをしておいた。


部屋に入ると、獣医と称する人間が、俺様を台に乗せて、何かを俺様の首元に刺した。

俺様は、抵抗するまもなく、気を失った。人間界ではこれを麻酔という物だと後から知った。



良く寝た。俺様は、ぼんやりとする意識を、何とかはっきりさせようと歯を食いしばった。

あれっ?歯が数本無い。でも、あれほど痛かった患部はもう痛くない。俺様は生きている。

ここは、「二度と戻れない家」ではないようだ。

俺様は、嬉しくなった。生きている!


多国籍の犬猫な毎日(おティんクな気分で)-201202211111002.jpg