耀司、睦美に、
「芙美花、師長にさ。」
睦美の頭の少し上を見ながら、
「熱があって、寝てた時にね。」
「はい。」
「いっぱい、夢を見たって。」
睦美、微笑むように、そして頷きながら、
「えぇ。」
耀司、テーブルを見ながら、
「博楼の合格の時とか、入学式の時。」
睦美を見て、
「とにかく、祐里子との夢。」
「うんうん。」
「そしたらね。段々、祐里子の。おかあさんの姿がなくなって。…今度は、何処かから、ピアノの音が。」
睦美、思わず、
「え…???」
耀司を見て。
耀司、
「そうしたらさ。」
テーブルを見ながらも、そして睦美を見て、
「芙美花、掠れた声で、涙声になっている訳よ。」
途端に睦美、
「え…???」
そのまま耀司は話す。
「ピアノの音がして…。今度はピアノを弾いている睦美さん。そして、自分もそのピアノに合わせてクラリネットを吹いてるって。」
睦美、
「……。」
「演奏が終わった瞬間、周りの人の拍手。みんながいるって。俺や汐梨、そして汐梨の旦那さん、勝臣君。そして麻沙美。そして…、晄史さんも誓さんも。」
口を噤みながらの睦美。
耀司、
「それに、俺の親父やお袋も。みんな芙美花と睦美さんに拍手してるって。」
耀司、目を下に落としながら。
「…で、そんな中に、いきなりみんなの中にバセットが。」
後ろに体を斜めに振り返りバセットを見て。
「バセットが、私に抱き着くのって。…でね。」
そこまで言って耀司、思わず、
「はぁ。…そしたらさ。俺、そんな芙美花を見たら、芙美花。…涙、流してる訳よ。」
睦美、目をパチクリと。
「宮さん。…おかあさん、欲しい。…欲しいよ~~。…体を屈ませるようにしてる訳ね。…で。おかあさん。おかあさん。欲しい。…睦美さんと、一緒にいたい。…睦美さん。ママでいいから、欲しいよ~~。」
いきなり睦美、顔を小刻みに左右に振りながら顔を上げて、
僅かに髪が揺れる。頬に流れる涙。
「はぁ~~~。」
下を見ながら耀司。そして僅かに顔を傾げて、
「俺。…娘にさ。…芙美花に。生まれて初めて、病気になって。…体がだるい。…そんな体で…。そんな風に言われて…。」
睦美、瞬きをして。鼻を啜って。右見て、左見て。テーブルでは腕を組んでいる。
耀司、
「そのまま。体を前に屈めたままで芙美花、泣いてる訳ね。」
耀司、キッチンを見て。
「運転しながら俺、スマホをスピーカーにしてさ。…師長に。俺。睦美さんと、結婚します。」
今度は睦美を見て。
「…で、芙美花に…、おとうさん、再婚するわ。って。」
睦美、みるみる内に、目から涙が…。そして睦美、口を思いっきり噤んで。
そんな睦美を見て耀司、
「睦美さん。」
声にならない声で睦美、
「あい。」
耀司、
「俺と、結婚。」
すぐさま睦美、涙ながらに、そして大きく顔を頷かせて。
耀司、口から、
「…してください。」
睦美、また頷きながら、
「あい。」
そして顔を両手で覆って。そのまままた頷いて、
「あ~~~~~。」
そして…。今度は、体を大きく動かして、カウンターにある自分のバッグからハンカチを。
すぐさまそのハンカチで顔を覆って。
凡そ1分。
睦美。耀司の顔は見ずに。ようやく。耀司に頷くように、
「…よろしく。…お願いします。」
そう言って、また、涙が…。そして、また、ハンカチを顔に。
そんな睦美を見て耀司、優しそうに見つめながら…。
睦美、体は萎えていた。
耀司、睦美に、
「…ごめんね。…いきなりこんな話をして。」
その声に睦美、ハンカチで顔を覆いながらも左右に振って。
そのまま耀司、睦美を見守りながら…。
「芙美花、睦美さんに。…ママになって欲しいって。…おかあさんって…、感じじゃないから。…ママになってって。」
ハンカチで顔を覆いながらの睦美、頷きながら、
「うんうん。」
そして…、ようやくハンカチを顔から。…既に目は涙で真っ赤。そして頬も赤く。
そして、耀司に、また泣きそうな顔で、
「ありがとうございます。…私なんかで…。」
そんな睦美を見て、耀司、優しそうな顔で、
「何を仰います。」
また睦美、顔を崩すように、
「う~~~。」
いきなり耀司、椅子から立ち上がり、
「はは。」
睦美の傍に。
睦美、泣き崩れるように手を差し伸べる耀司に、縋るように。
耀司、そんな睦美を優しく、抱き締めて、
「うん。うんうんうん。…お願いします。」
睦美、耀司に捕まるように、
「う~~~ん。」
耀司、そんな睦美の背中を、左手で、
「パンパン。」
睦美、2階に。
…そして、
「芙美花さ~~ん。」
声を掛けて。そして左手で芙美花の額に。
すると芙美花、ゆっくりと目を…。
「…睦美…、さん。」
睦美、コクリと。
「うん。…お粥、持ってきた。食べて欲しいな。」
芙美花、頷いて。そして体を…。
睦美、そんな芙美花を支えるように。
…ようやく…芙美花にトレイのままお粥を。
芙美花、
「ありがとう。」
そんな芙美花に睦美、優しく、
「ううん。」

ママでいい…。 vol,318. 耀司、「俺と、結婚。」すぐさま睦美、涙ながらに、そして大きく顔を頷かせて。
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
