耀司と睦美の、初めての…。家から駅までの道。
睦美はホワイトのロングコートにくすみピンクのストールを首に。
耀司は綿のパンツにブルーと黒のダウンジャケット。
夜の東京、空には、僅かに…、星が…、見えるか、微妙なところ。
但し、月は出ている。
耀司、空を見上げながら、
「まだまだ、寒いよね~~。」
睦美も空を見ながら、
「まだ、2月ですもんね~~。…って言うか。」
睦美、耀司を見て、
「耀司さんって、スキーとかは。」
そんな声に耀司、睦美を見て、
「俺…???」
自分を指差して。そして顔を傾げて、
「いや。」
首を振り。
「ないですね~~。…って言うより、和歌山。うんうんうん。まずない。…って言うか、子供の頃は、まず、柔道。かかかかか。そればっかり。」
いきなり睦美、体をまっすぐにして、
「あ。」
そして、頷きながら、
「うんうんうん。ははは。」
そして、笑いながら、
「確かに。」
クルリと耀司を見て、
「そうでしたよね~~。子供の時から、柔道。」
耀司、
「えぇ。」
ふたりとも。睦美はコートのポケットに手を。
耀司はダウンジャケットのポケットに手を。
ゆっくりと歩いて…。コンビニの前。
照明が明るい。
後ろから何やら。いきなり、
「どけ―――――っ!!!」
睦美、背中から誰かにぶつかられて、
「キャ――――ッ!!!」
男性の声、
「捕まえてくれ~~。ひったくりだ――――っ!!!」
睦美は男からぶつかられて路上に。
耀司、いきなり、
「睦美さんっ!!!」
睦美にぶつかった男は、ぶつかった弾みで路上をふらふらと。捨て台詞のように、
「…ったくよ~~。」
そして、体勢を何とか立て直した。…かと、思いきや。
「え…???」
いきなり男性から胸倉をがっしりと掴まれて、
「うそうそ。」
耀司、眉間に皺を。口を尖らせて歯を食いしばって、
「んなろぅ~~。」
男性の体が宙に浮く。背負い投げである。
そのまま男の体が路上に、「バン。」
その瞬間、
「痛って―――――――っ!!!」
耀司、表情は変えずに、
「ふん。」
そして、すぐさま睦美に。
「睦美さんっ!!!」
既に上体を起こしている睦美。
耀司、そんな睦美に、
「大丈夫ですかっ!!!」
男性と女性がその場に駆け付けて。
女性、
「ありがとうございます。」
男性が、
「凄ぇ~~。」
女性に、
「今の見た…???…背負い投げ。はは。かっけぇ~~。」
男はまだ路上で…。アスファルトに叩きつけられたショックで起き上がれない。
男性、持っていたスマホで、
「とにかく警察に。」
女性、その男性にコクリと。
「ありがとうございます。」
睦美、耀司に支えられて、ようやく…。
耀司、睦美に、
「大丈夫…???」
睦美、僅かにコクリと。
「ぶつかられて転んだって言うか、倒れて、アチコチ。」
耀司、
「うんうん。」
既に女性のバッグは男から抜き取られ。もはや、コンビニの店員も外に。
他の人たちも駆けつけて、倒れている男は囲まれて…。
その5分後、警官が…。そして…。そのまま、数人が駐在所に。
…それから…。
耀司のスマホに。芙美花からである。
「あ、おとうさん。中々帰って来ないから。」
耀司、芙美花に、困ったような顔で、
「芙美花、ごめん。今、警察。」
芙美花、驚いて、
「うそ。え…???…警察って。え―――――――っ!!!」
耀司、スマホで、
「…そんな訳だから、後で…。おとうさんの方から電話する。」
芙美花、父の声を聞いて、
「あ、うん。うん。じゃあ、お願い。」
通話は切れる。
芙美花、ソファに座って、クッションを抱き締めながら、バセットに、
「おとうさん、今、警察だって。」
そして、
「んもぅ~~。…どういう事~~???」
…凡そ45分。…ようやく。
耀司、睦美に、
「家まで、送るよ。」
アスファルトに倒された時に、僅かに左膝を。パンツが僅かに擦り切れている。
肌には別に異常は見られない…ようだが…。
耀司、
「おまわりさんからも言われたけど…、病院…。」
けれども睦美、首振り、
「ううん。…でも。ある意味、コートを着てて良かった。…ちょっと、ヒリヒリは…、するけど…。…でも。この通り、歩けるし。」
その声に耀司、頷きながら、
「あぁ。うん。」
そして、
「とにかく…。」
ふたり、駅に向かって。
耀司、スマホ…。
「あ、おとうさん。」
芙美花の声。
「あ、うん。」
「ごめんね。心配掛けて。」
また、
「あ、うん。」
「コンビニの前、通ったところでさ。後ろからドン。」
芙美花、瞬きしながら、
「え…???」
耀司、
「ひったくりだよ。」
「ひったくり…???」
「あぁ。」
「何か、盗まれた。」
間髪入れずに耀司、
「あ~~、いや。そうじゃなくって、ぶつかってこられたんだよ、後ろから。」
「ぶつかってこられた…???」
「あ~~、うん。」
睦美を見て、
「あ、いや…。…でも、おとうさんじゃなくって睦美さん。」
芙美花、眉間に皺を。
「睦美さん…???」
「あぁ、いきなりだったから。後ろから、どけ―――――って、ドンと。睦美さん、そのぶつかられた拍子で道に倒されちゃったんだよ。」
芙美花、瞬きしながら、
「え…???…え…???…で、どうな…。」

ママでいい…。 vol,297. 「捕まえてくれ~~。ひったくりだ――――っ!!!」
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