夜の11時…。耀司、自室で仕事をしながら…。
そして、傍らには…。睦美がピアノ講師となり、事務局員以外の以前の音楽教室のリズムが蘇り、
耀司に話をしてみると、耀司が快諾して、睦美にそのやり方を教えて、
ここ最近では、ラインのビデオ通話まで発展していた。
耀司にすれば、パソコンでの仕事上のzoom会議で手慣れてはいるが、
まさか…、それが一定の、女性とのビデオ通話、と、なると、
いささか、緊張はしたものの、回を重ねる度に、その緊張は解れて…。
しかも、相手の睦美も、慣れてきたのだろう、最初は部屋着だったものが、
今ではパジャマ姿である。
スマホに向かって時々顔をチラリとしながらも耀司、キーボードを打ちながら、
「へぇ~~え~~。あのボーカルとドラムとギターの人が、大学が同じ~~。」
睦美、
「うんうん。…でね。凄いよ。あの、ドラムの神林さん。リーダーで。しかも、仕事が自動車整備士さん。」
耀司、
「わお。」
睦美、名刺を見ながら、
「1級整備士。」
「へぇ~~。凄いもんだね~~。まっ。仕事以外でバンドをやっている、事自体、凄いけどね~~。」
「あ。それとね。」
耀司、睦美の声に、
「うん。」
可笑しがりながら、
「面白いの。…あの、ボーカルの根岸さん。先輩。」
「うん。」
「趣味、何だと思う…???」
耀司、思わず眉間に皺を。
「趣味。」
スマホの睦美を見て。
睦美、ニコニコ顔で、
「うん。趣味。」
耀司、
「趣味。…いや、想像付かないけど…。…けど~~。の、ボーカルのヘアスタイル。…でぇ~~。自動車整備士の職業、から、想像しても~~。まっ。エンジニア。…考えようによっては、車を弄る事。…かぁ~~。」
目だけ上を。そして今度は顔を空に。そして腕組みしながら、
「キャスティング。釣りやアウトドア。…、その辺かな~~。」
そして、今度は腕組みを解いて、
「…それに、今ってひとりでもキャンプって流行ってるから~~。」
チラリと睦美を見て。
そんな話に睦美、
「あ、そっか~~。そういう趣味もありますね~~。釣りや、ひとりキャンプ~~。」
耀司、また顔をチラリと睦美に。
「違うの…???」
すると睦美、画面の中から、
「ブッブ~~~。」
耀司、そんな睦美の声に、
「え…???…うそ。はずれ…???」
睦美、
「正解は、落語。」
思わず耀司、顔を歪めて、
「落語…???…はっ…???」
「落語、なんだって~~。私も望月さんもび~~っくり~~。」
耀司、目を真ん丸にして思わず、
「いやいやいやいや。…全然、想像付かないんですけど~~。」
「ですよね~~。」
耀司、
「へぇ~~~。こりゃたまげたわ。あの…、B’zの稲葉浩志ばりの感じが、趣味が落語~~。天は二物を与えずって諺あるけど。こりゃ、天は二物を与える、だわ。かかかかか。」
すぐさま睦美、
「え…???…なに…???」
耀司、スマホの睦美に、
「あぁ。昔の古い諺。後で検索してみて。天は二物を与えず。つまりは、一人の人間に複数の才能や美点を与えないって意味。…なんだけど~~。でも、今や、人の才能って、ひとつ、だけじゃ~~、ないからね~~。ほら、野球で言えば、メジャーの大谷選手。ピッチャーでもありながら、バッターとしても、超一流。」
その声に睦美、
「うんうんうん。」
耀司、
「まぁ、それに。今じゃ、何かを成し遂げるためには他の何かもプロみたいみせる。俳優なんかはそうだもんね~~。」
そこまで言って耀司、急に可笑しくなって、
「まっ。そこまで突っ込んだ話ではないと思うけど。…趣味が落語家ぁ~~。中々どうして~~。道理で、説得力あるし~~。声に響き、あるよね~~。まっ。趣味が落語って言っても、多分、聴く方だけだとは思うんだけどね~~。」
睦美、そんな耀司に、
「うんうんうん。聴くのが好きなんですって。だから~~。そんな根岸さんから~~。ギターの葛城さん。」
耀司、
「うんうん。」
「変顔の顔が、林家木久扇に似ているからキクちゃんって。バンドを始めた頃からねぇ~~。」
「へぇ~~。そうなんだ~~。」
「で、ドラムの神林さん。リーダーね。彼が作詞担当~~。」
「そっか~~。あの人が作詞かぁ~~。まぁ、遠くからだったから、あまり良く、顔は見えなかったけど~~。あ。…って言うか、誓さん、どうなってるかな~~。」
その声に睦美、僅かに眉間に皺を。
「誓…???」
「あ、うん。ほら、あの時、会社の人にラインでココルキーの事を。」
瞬間、睦美、
「あ~~~。うんうんうん。確かに。そんな事が、あったような~~。」
けれども睦美、
「ん~~。特には誓からは、何も~~。」
「そっか~~。…もしかしたら、もしかして…。って、思ったんだけどね~~。…いや。ライブ中に、スマホ弄ってるからさ~~。ある意味、さすがは広報のプロって感じ~~???」
睦美、ニコニコと、
「はははは。うんうんうん。」

ママでいい…。 vol,286. 「何かを成し遂げるためには他の何かもプロみたいみせる。」
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