けれども亮輔、
「ちっ。くっだらねぇ~~~。」
「まっ。…でも…、許してあげるよ。」
前を歩きながら阿須賀。
そんな阿須賀に後ろから亮輔、
「な~~にが、許してあげるよ~~だ。…ったく~~。」
「まっ。せいぜい陽織ちゃん、大事にしな~~。」
「だ~~から、何言ってっかな~~。」
阿須賀、またまた亮輔に振り向いて、
「へへん。顔に書いてある。俺は陽織ちゃんの事、好きだって。」
「バッカじゃねぇか、おま。」
そんな亮輔に阿須賀、前を向いて、
「はいはい。私はバカですよ~~。トンチンカン過ぎるほどの、バカですよ~~~。…けど…。私は負けない。亮輔が陽織ちゃん、好きでも。私は負けない。絶~~っ対、私は負けない。」
「な~~に言ってんだか~~。」
そしていきなり振り向いて、今度は亮輔の左腕を占領して、
「それだけ、亮輔の事が好きだって、言ってんの。」
いきなり亮輔、
「お~~ぃ、おぃおぃ。」
阿須賀、途端に、
「ふふ~~ん。」
「…って、バカ、おま。病院だぞ、ここ~~。」
「いいも~~~ん。」
病室では…。幸乃、真輝と愛実に、
「真輝君、メグちゃん、ありがとうね~~。」
そんな幸乃に真輝、ニッコリと、
「いえいえ。とんでも…。」
愛実も、
「ううん。気にしないでおばあちゃん。」
その時、幸乃のスマホに。幸乃、画面を見て、一度、躊躇ってはみたが…。ふたりを見て、
「藪岡先生から。」
真輝も愛実も、頷いて。
幸乃、画面をスワイプして、
「もしもし。汀でございます。」
スマホから、
「藪岡です。…そちらは…。今…。」
幸乃、
「えぇ。まだ…、意識は戻ってない。静かに眠っています。」
「そうですか~~。」
そして…翌日。そして、そのまた翌日も…。
……耳元で、囁くように、
「おかあさん。陽織を…、半年の間だけ…。お願い。」
女性の声。
そして、
「頼む。かあさん。陽織、半年の間だけ…。…それだけでいい。…柚香の体を借りて…。」
その瞬間、幸乃、目を覚ます。
…すると…。壁の前に座っている薄っすらとしたふたりの姿。裕司と萌衣の…。
幸乃、今度はしっかりと、その姿を。
そして、
「おまえたち。」
ふたりの姿は薄っすらとしながらも次第に…。
幸乃、目をパチクリと。そして、両眉の先端を吊り上げて、
「まさか…。…今の…。」
頭を傾げて…、
「亡霊…???」
そして幸乃、
「…ん…???…、確か…、何やら…。陽織を…。」
また、頭を…。
「お願い…???」
時計の針は、午前2時半。いきなり、幸乃のスマホに、
「えっ???…この番号…。確か。」
そして、
「もしもし。おばあちゃん。私。流伽です。我孫子流伽です。萌衣の妹の。」
幸乃、目をパチクリとさせて、
「あ。はい。はいはいはい。流伽さん。」
スマホの向こう、
「柚香に、何かあった…???…今、いきなり目の前に死んだはずのおにいさんとねえさんが。」
その頃…、病院では…。
懸命に医師が蘇生術を。つまりは…。陽織…???柚香の…、心肺停止。
突然、幸乃のスマホに着電。
看護師、
「先生っ!!!」
懸命に胸の下を両手で押さえて、
「一体、どういう事だぁ~~???」
脳神経外科医師の野呂一馬(のろかずま)。
「2時までは、大丈夫だったんだよな~~。」
看護師、
「は、はい。それが、突然、ナースコールが…。来てみたら、既に呼吸停止で。」
野呂が心肺蘇生を始めてから既に10分が経過していた。
「なんだってんだよ~~。へっ。へっ。へっ。」
11分。12分。…15分。
看護師、
「先生っ。」
「戻って来い。戻って来い。何がどうなっちまったか。どぅいぅこったい。」
そして、16分。
「死なせて堪るか。お~~い。」
看護師たち、
「先生…。もぅ…。」
「黙ってろ。」
そして、
「来い、来い、来い来~~い。こんな若さで。…逝かせて堪るか―――――っ!!!」
既に…、17分。
看護師たちも、涙を零しながら…。
既に、野呂の腕の力も…。
そして、ぐったりとする野呂。
看護師たち、目を閉じて顔を俯き…。
野呂は、ガックリとして、目を閉じ、両腕をダラリと…。
「あ~~~。」
…3秒ほど…。
モニターのサインが…。
僅かに跳ね上がり。
看護師のひとりが、
「へっ…???」
そして、もうひとりの看護師、
「うそ…。先生。」
瞬間、野呂、
「来た。来た来た来た来た――――――っ。お~~~し。」
看護師たち、涙を浮かべて、
「信じ…、られない。17分…。」
野呂、
「何が何でも、来た―――――――っ。お~~し。やるぞ~~。」
看護師たち、涙を流しながら、
「はいっ。」
幸乃は、振り乱した姿で車を。既に顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
「柚香。陽織。」
鼓動は割れんばかり。ただ…、自分でも不思議なくらいに運転に関しては、冷静だった。
何度もハンカチで目を拭い。鼻水は出る一方。そして、口から出る言葉は、
「柚香~~。陽織~~~。」
涙は一向に止まる気配は…、なかった。

LIBRA~リブラ~ vol,175. 「亮輔が陽織ちゃん、好きでも。私は負けない。」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
