すると…。また、陽織…、黙ったままで…。数秒…。
けれども、ようやく…。
「分からない。分からないんです。私。…目を覚ますと、もぅ…目の前が暗くて…。何処にいるのかも分からない。もう一度、目を閉じても、今度は眠れない。急に体がソワソワと…。」
陽織、話し始める。
藪岡、真剣な目で…。
「そして、勝手に体が動いて、気付いたら家の外に…。そして…、歩いてみたり、駆け出してみたり…。」
藪岡、
「それって…、大体…何時頃…???」
すると陽織、顔を左右に。そして…、俯いたままで…。
「まさか…。パジャマのままで…外を…???」
するとまた陽織、顔を左右に…。
ルシア、
「いいえ…。ラフな格好で来たけど…。」
藪岡、僅かに頷いて、
「ふん。」
そして、陽織に、
「そして…???…陽織ちゃん。」
「…歩いて…。走って…。その繰り返しで…。…気が付いたら…、灯りが奇麗なところに…。」
ルシア、
「あん。それで〜〜。まっ、確かに。駅前でもあるけど…。」
陽織、
「何だか…。お洒落な看板みたいで…。」
瞬間、肇がニッコリと…。
ルシアも、
「わ〜〜お。ありがと。」
藪岡も笑顔で、
「はははは。なんと…。嬉しいね。」
陽織、
「何となく…、入ってみたく…。」
ルシア、
「な〜〜るほどね〜〜。…そういう…事か。うん。」
けれども藪岡、
「いやいやいや。ルシア。…そういう事かって…。まだ…、何も、分かってないけど…。」
その声にルシア、目をパチクリと、
「あっ。そっか…。…夜に目を覚まして、夜の道…、ただ…。…で、灯りに…。うんうん。そうだ、そうだ。」
藪岡、
「ねね。陽織ちゃん。…もしかして…君。記憶がないって言ったけど…。夜、目が覚めて、そしてここに来て。…今。」
そして藪岡、腕時計を見て、
「あと…。2時間弱で、3時だけど…。家に帰ったら、そのまま眠って…。その後は…???…確か、さっき、分かんないって言ったけど…。」
陽織、コクリと…。
「ふ〜〜〜ん。」
藪岡、
「つまりは…。陽織ちゃん。一日で、たったの3時間程度しか、記憶がない、事になる。」
亮輔、いきなり、
「うそ。…そういう事って、あんの…???」
その声に藪岡、
「いやいやいや。分かんないさ。…但し、陽織ちゃん自身が、記憶がない。分かんないって言うんなら、俺たちは、全く見ず知らずの人。別に店に迷惑掛けている訳でもない。それより、客にも喜ばれてる。」
そして、ルシアと肇を見て、
「ねぇ…。…だよね〜〜。」
肇、ニッコリと頷いて。
ルシアも、
「その通り。」
「ならば…。」
藪岡、
「ゆっくりと…。陽織ちゃんの体調に合わせて…。」
亮輔、
「体調…???」
「そうさ。まっ。見た限り…。こんな夜遅い時間でも起きていられてお店に来てる。そして、お手伝いをしている。体には、何も異変は…、ないとは思うけど…。ただ…。」
ルシアも亮輔も、
「ただ…???」
藪岡、
「精神面。」
亮輔、目をキョロキョロと…、
「精神面…。」
すると、
「あっ。なるほど…。藪さん、得意分野。」
陽織、僅かに顔を起して、左右を…。そして、
「あのぉ〜〜〜。」
藪岡、
「あっ。はははは。ごめん、ごめん。つい、俺の話ばかりになっちゃって…。」
亮輔、陽織に、
「この人、精神科医のお医者さん。新宿の大学附属病院で働いてる。心理療法士でもあるし、カウンセラーでもあるんだ。俺のおふくろの弟。いわゆる。俺の叔父さん。」
その話にいきなり亮輔の隣の女性、目をパチクリと、
「うそ。凄〜〜い。精神科医で心理療法士。しかも…、カウンセラー。」
亮輔、
「…って、それ…、さっき言ったじゃん。」
「あん。でも、驚きが、なに…???亮輔のおかあさんの弟。亮輔の叔父さんって…???」
藪岡、そんな女性の声に、
「はははは。今後共に、お見知りおきを…。はは。…亮輔、中々可愛い子じゃない…???」
その声に、
「えっ…???」
亮輔、
「へへへへ…。まぁ…。」
「同じ…、大学なんだ…。」
女性、藪岡に、手を上げて、
「はい。亮輔と同じ大学です。広戸阿須賀(ひろとあすか)と申します。以後、お見知りおきの程を…。大学近くの居酒屋で亮輔と知り合いました〜〜。」
元気に。
藪岡、ニコニコしながら、
「そっ。そっか。うんうんうん。元気で何より。」
「…って、言うか、元ヤンキーだぜ、こいつ。」
いきなり藪岡、飲んでいたものを、
「ぶっ。」
阿須賀、亮輔の頭をペンと。
「何言うかな〜〜。そんな昔の話〜〜。」
亮輔、顔を凹ませて、
「…って…。自分でばらしてるし…。」
瞬間、阿須賀、口を開けてへの字にして。そして口を尖らせて…。
「うんうん。いいんじゃない。可愛いよ。はは。」
藪岡。
その声に阿須賀、ニコニコ顔で、
「ありがとうございま〜〜す。」
後ろの席で、
「彼女〜〜。同じの、作ってくれる〜〜。」
その声に陽織、いきなり後ろを向いて、
「あっ。はい。」
藪岡、
「おっ。はは。うん。頑張って。」

LIBRA~リブラ~ vol,030 陽織…、黙ったままで…。数秒…。けれども…。
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