杏美、右左を見て。
みな、口を尖らせながら…。
杏美、
「将輝君、今、付き合っている人、いるみたいなんですど…。」
その声に涼香の声、
「えっ…???」
数秒の沈黙。
スマホから、
「あ…、あの…。どうして…、あなたが、その事…???…何がなんだか…、分かんないんですけど…???」
杏美、
「あ、あ〜〜。はい。ごめんなさい。あ、あのぅ〜〜。今、目の前に、将輝君…、いるんです。」
瞬間、涼香、
「はっ…???」
そして涼香、スマホを左手から右手に持ち替えて、椅子を180度転換。
「えっ…???…どういう事…???…将輝が…???」
女子の声が涼香に、
「はい。将輝君、目の前にいます。…で、馨君も。」
涼香、また両眉の先を吊り上げて、
「はっ…???」
左手を頭に、そして髪を掻き上げながら、そして椅子から立ち上がり、
「一体…、どうなってんの…???」
杏美、
「す、すみません。すみませんけど。」
心臓が高鳴る。
「将輝君と付き合っているその人。将輝君と付き合うの、やめてもらえませんか。」
瞬間、女子たち、小さな声で、
「言った〜〜。」
そして、胸の前で両手を静かに叩いて。
栞奈、立ち尽くして、
「凄〜〜ご。」
蒼介、
「え〜〜ぇえ…。」
妻と流美を、目を真ん丸にしながら見て。
和奏、ソファの方を見つめる。そして流美も…。
いきなりのその声に涼香、思わず絶句。
数秒後、スマホから、
「そ、それって…。」
杏美、ゴクリと口の中の物を飲み込んで、
「私たち、将輝君と馨君の友達なんです。」
その声に涼香、またスマホを右から左に、
「はっ!!!…友達…???」
そして涼香、今度は右手で頭を掻いて、
「何がどうなってる…???」
そして窓際に…。
将輝と馨、両目を小刻みに動かしながら…。
「将輝と馨の友達って…???…しかも…女子。有り得ないでしょ。」
スピーカーから聞こえてくる涼香の声。小さな声で、将輝と馨、
「涼香…さん。」
「いいえ。私たち、将輝君と馨君の友達です。」
いきなり麻理絵。
「はっ???…別の人…???」
涼香、今度は、窓際から壁に移動。そして壁に背中を付けて、
「何々…、どういう事…???…訳分かんない…。」
麻理絵、
「今、私たち、理沙の家にいるんです。」
涼香、スマホに、
「理沙さんの家…???…えっ…???増々…、訳分かんないんだけど…。」
蒼介、
「ん〜〜。」
腕を組んで。
けれども和奏と流美は真顔でソファの方を見守る。
麻理絵、
「私たち、理沙が入院してから、麗亜ちゃんと将輝君と馨君に知り合って。それから…。」
その話に涼香、
「え゛〜〜〜〜〜っ!!!」
「…で、今、理沙の家で、麗亜ちゃんの高校入試、合格祝いで、みんな、集まってるんです。」
その話に涼香、ようやく事態を飲み込んで、
「あ〜〜〜。はいはい。そっか〜〜。うんうんうん。何とか…、理解できた…かも…。」
瞬間、蒼介、
「お〜〜〜。」
「えっ…???」
涼香、
「今…、なんだか…、遠くから、男性の声…、しましたけど…???」
「スピーカーです。」
今度は芙美。
何かしら、少しずつ緊張が緩んで来ている女子たち。
芙美、
「すみません。さっき話したのが石嶺麻理絵と言います。バレー部のキャップです。そして、私、真城芙美と言います。」
「そして、矢部雅美で〜〜す。」
涼香、思い掛けない事に、目をパチクリさせながら、
「あ、あ、あ〜〜。はい。」
そして涼香、
「…で、その…。私に…、何か…???」
「申し訳…ないんですけど…。」
今度は杏美。
「将輝君、その…、今、付き合っているその子、多分、その子、好きでもなんでなくって。」
そこまで言って杏美、思わず口に左手を、
「好きでもなんでなくってって言うのは…、ダメだよね。」
その声に女子たち2回ほど頷いて。
杏美、続ける。
「…って言うか、絶対に、将輝君、その子の事、好きにはなれない。…だとすると。その子、物凄い可哀想。将輝君、バスケの事、ばっかりだから…。…で、理沙の事に、一生懸命だから。」
その声に理沙以外、2、3回頷く。
栞奈、
「アズちゃん、良く言った。」
和奏と流美もニッコリと頷いて。
「…でも…。」
杏美、
「将輝君、その子に、そういう事、言えないと思うんです。口下手だから。」
瞬間、理沙、
「ぷっ。」
将輝は下唇をビロンと。そして顔をグシャリとさせて…。
芙美と麻理絵は小さく、
「くくくく。」
雅美も、懸命に堪えるように、頭を仰け反らせて、
「かかかか。」
その声に涼香も、
「ぷっ。言えてる。」
そして、
「だよね〜〜。」

信じて…良かった。 vol.215. 「将輝君と付き合うの、やめてもらえませんか。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
