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その瞬間・・・

言葉を失った。


とうに忘れていたと思っていた感情が
どっと胸に押し寄せる。

胸の中がいっぱいになって
しばらく動けなかった。


変わらないあの頃の面影のまま。

君の横顔を
人混みに見つけた。




俺だけが年をとって

10年前にタイムスリップしたみたいだった。




「結花。」

「ん・・なにぃ?」

俺を見上げる彼女の目は
もう
そうとう酩酊してうるんでいた。

「飲みすぎ。そろそろ帰ろうよ。」

「えーーー、
今あたしすごぉーーく
楽しい気分なのに~。」

上気した顔で
ほほえむ彼女。


「ろれつ回ってないし。
相当酔ってるだろ。」

「えへっ。」

「笑ってごまかすなよ。」


夜通し飲んで
一緒に歩いた夜明けの街。


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あの頃はなにもなくて
それでも楽しくやってた。




あんなにも好きだった

君がいた

この街に

あの頃のメロディーが流れる。

耳慣れた歌。

懐かしいメロディー。





「この歌好き。」

「俺も」

イヤホンを片方ずつ
分け合って

ラジオから流れる
その頃流行っていた
メロディー。

何度も
何度も

二人で聴いた曲。


 

 

どんなにさわいでも

仲間といても

二人でいても

どうしても消せなかったさみしさ。


どうしてだろうね。

あの頃のまま
いられればよかった。

いつのまにか

俺は君を見失い

大事なものをなくした。

自分のことすら
みえてなくて

君を傷つけた。


子どもだったよね。

ごめんね。


「ありがとう。


さよなら。」


最後に俺を見上げた

君の泣きはらした目と

せいいっぱい笑ってみせた顔。


今でも思い出の中。

 


君のこと

ずっと忘れないよ


いつだって

俺の心には

君の笑顔が焼き付いているから。


あれからどうしてた。


どんなふうに生きた?


誰と出逢って

どんな部屋に住み

どんな仕事をして


俺のこと

忘れてた?



たまには思い出してくれた?


 




みしらぬ人と肩を並べ

夕暮れの街を歩いて


どこかへ消えていく

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変わらない美しい横顔に


話しかけたい衝動を
抑えた


きみのこと忘れないよ

いつだって

忘れないよ



あの頃確かに俺らが過ごした日々は

消えることはない


ずっとずっと

輝いたままで

あのメロディーとともに



いつまでも

ずっと

色あせることはない




「パパ・・・どしたの?」

息子が不思議そうに
俺を
見上げていた。

「ごめんね
なんでもないんだ。

知ってる人に似てたから
びっくりしちゃっただけ。」

「おともだち?」

「うん・・・。
違ったみたいだ。
パパの勘違い。」

「ふうん。」

「ゆうき、
アイスクリーム食べて
帰ろうか?」

「かき氷がいい!」

「この寒いのに?」

「かき氷がいいの!」

「分かったよ・・・。
好きだなあお前も。」





・・・幸せそうでよかった。



夕陽に照らされて
長く伸びる

俺と息子の影。

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息子の笑顔をみつめながら
俺は


その小さくてあたたかな手を
ぎゅっと
にぎりしめた。



忘れないよ

あのメロディーと

きみといたあの頃



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