「わしらは国家のない国に生まれたかったのう」あの日の広島、それに続く日々。戸板などで次々に死体を運んでは、顔を背け、穴に放り込む作業に従事していた兵士のひとりがいったのが、前掲のことばだ。その場面より少し前に記された、主人公・重松の言葉、「いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい」とも呼応する。(落合恵子)
これは井伏鱒二の「黒い雨」の一説で1945年の8月6日に広島に原爆が投下され、その犠牲となった人々の死体を運ぶ兵士と主人公の重松静馬氏のことばで、この文節こそが「黒い雨」の作品を生かしていると言っても過言ではありません。では創作ではない部分は盗作かというう人たちもいますが、決してそうではないのです。なぜなら、この作品の元となった重松静馬氏の「重松日記」と数年前、私の郷里から送られてきた被爆体験記念誌を読めばわかることなのですが、井伏氏と重松氏とは直接の出逢いを含め書簡のやりとりも多くがあり、深い交流があったわけです。私の郷里には井伏鱒二の文学碑があります。
戦争はいやだ 勝敗はどちらでもいい 早く済みさえすればいい いわゆる正義の戦争よりも 不正義の平和の方がいい
2018/8/12
船橋市:弓場清孝
